コンビニやドラッグストアに売られているとりどりのミネラルウォーター。
「水なんてどれを飲んでも一緒じゃない?」
「よくわかんないし、一番安いやつにする」
せっかくお水を飲むのに、もったいない!
じつは水の世界ってすっごーく奥深いんです。
たとえば、
たった4本のミネラルウォーターの飲み比べ企画で、こんな話が聞けてしまいました。
海洋深層水のように深く豊かな話を聞かせてくださったのは、アクアソムリエの鶴田雅人さん。
鶴田雅人
日本アクアソムリエ協会認定 アクアソムリエマイスター・公認講師。 水の味の違いに興味を持ち、国内外のミネラルウォーターを飲み比べている。 日本テレビ系列「月曜から夜ふかし」、 フジテレビ系列「99人の壁」など、メディアにも多数出演。
Twitter:https://twitter.com/aquasomme
そして、イラストを書いていただくために召喚したはずなのに、水好きが爆発してライターよりも喋っていたイラストレーターの阿豆(あず)らいちさん。
鶴田雅人
フリーランス歴20年。イラストや漫画を描いたりWeb制作全般してる人。Macや科学が好きなインドア派。二児の父。
ブログ:らいちのヒミツ基地
Twitter:@AzuLitchi
さらに阿豆らいちさんには、今回飲み比べた4種類の水を擬人化しイラスト化してもらいました。らいちさんの擬人化イラストはこちらの記事で見ることができるので、ぜひあわせてご覧ください。
それでは、水の深い世界に飛び込んでみましょう。
ミネラルウォーターを飲み比べするとどうなる?
ことの発端は、とある日のメールのやりとり。
アクアソムリエの鶴田さんから、こんなメールが届いたのです。
「水の味を人に伝えることって結構難しいんですよね。いつも言葉を尽くしてがんばるのですが、なかなか難しいところがあって・・・そこで、イラストとかで面白おかしく可視化してもらえれば伝わりやすいと思うんですが」
さすがアクアソムリエ・・・その着眼点は無かった・・・。ということで、即企画化が決定。イラストレーターの阿豆らいちさんを交え、さまざまなミネラルウォーターの飲み比べ企画が実現しました。
飲んだお水はこちら。
い・ろ・は・す 白州(日本コカ・コーラ) 硬度27㎎/L(産地により水の硬度は変わる)
天然水 宮崎県 霧島(ファミリーマートコレクション)硬度150mg/L
エビアン(伊藤園)硬度304mg/L
コントレックス(ネスレ)硬度1468mg/L
どれも一度は見かけたことのある有名なミネラルウォーターですが、味に違いはあるのでしょうか?
「い・ろ・は・す」「霧島」「エビアン」「コントレックス」はどう違う?
ーーー今回はミネラルウォーターの飲み比べですね。
よろしくおねがいします。
よろしくおねがいします。
ーーーらいちさんはイラストレーターですが、水が好きなんですか?
家が白州町にわりと近いんです。
白州町って、サントリーがウイスキーの工場つくってるところなのですが、水がおいしくて有名なんですよね。サントリーの工場見学をしたこともあります。
ちなみに、家は多摩川水系です。
ーーーなるほど。今回の飲み比べは、い・ろ・は・す、霧島、エビアン、コントレックスですね。選んだのは鶴田さんですが、ラインナップの理由は?
この4つは、なるべく味の差が出るように選びました。
この4つの水は硬度がそれぞれ違います。
硬度というのは、水の中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量のことです。
カルシウムやマグネシウムが多いほど、硬い=硬水と言われます。
い・ろ・は・すの白州は硬度30ぐらいで、代表的な日本の軟水ですね。
霧島は、日本の水にしては硬度150とかなり高い方です。これは「日本の中硬水」というイメージで選びました。
エビアンは、世界中で飲まれているとてもメジャーな水ですね。硬度は300。中硬水ですね。
そして、コントレックスは硬度約1500、超硬水です。
アクアソムリエの実技試験でも、軟水・中硬水・硬水のブラインド・テイスティングはやっていますね。
ーーー今回は目隠しはしませんが、それほど味の違いが顕著なのですね。水のテイスティングの方法ってあるんでしょうか?
水は冷やしちゃうとなんでも美味しくなってしまうので、基本的には常温でいきます。
飲む前に、まずは目と鼻でチェックしていきましょう。
・ミネラルの結晶が浮いてないか
・湧き水ならば砂が混じってないか
・炭酸水ならば気泡の大きさはどうか
・基本的には無臭だが、ボトリングされて時間が経っているとペットボトル臭がうつっていることも
・ワインと違い水は空気と混ざっても味は変わらないので、特にスワリングは必要なし
・なるべく舌全体を使って味わう
・なんのミネラルが入っているかを掴まえる
軟水から飲んだほうがいいので、最初はい・ろ・は・すから行きましょう。
最初は水の味としかわからないかもしれません。まずはさっくり1周して、2周目でじっくりみるというのもおすすめですよ
い・ろ・は・すの味は?「丸くて雪解け水みたい」
まず最初にい・ろ・は・すを飲んでみましょう。どうですか?
なんていうか、丸い感じがします。そうとしか言えない。
いつも近い硬度のサントリーの南アルプスの天然水を飲んでますが、表情が違いますね。
い・ろ・は・すって「やわらかい」「雪解け水みたい」「丸い」といった評価をされる人が多いんです。
日本の水はほとんど軟水で硬度が20~50ぐらいなので、このお水は飲みやすいと感じる方が多いでしょうね。
霧島の味は?「とろっとした感じ」
ーーーどんどん行きましょう。次は天然水「霧島」です。これはファミリーマートのプライベートブランドですね。中硬水とのことですが?
霧島は宮崎県の水です。
カルデラとかカルスト地形って言われますが、九州には火山によってできた特殊な地形が多いです。火山由来の石灰岩にはミネラルが多く含まれているので、例えばその土壌をくぐりぬけたお水には、ミネラルが多く含まれるようです。
霧島はさわやかですけど、先程よりもコクがありますね。あと、味がある。
何味なんだろう。これ。
カルシウムやマグネシウム、カリウムといったいろんなミネラルが、さっきの水よりは遥かに量が入っているんですよね。
そこからくる、金属っぽさ、重み、鉱物感は、い・ろ・は・すと比べるとはっきり感じられるでしょうね。「とろっとしたかんじ」と言われることもあります。
ーーーたしかに、舌の根っこのほうで後味が残るかんじがありますね。同じ日本の水なのに。
霧島は、ミネラルのバランスもいいんですよ。
水にもミネラルバランスっていうのがあるんです。一つのミネラルだけが突出してると味のバランスが悪くなる。
でも、霧島のラベルを見ると、そんなに数字のどれかが抜けていることがない。カルシウムとマグネシウムは俗に2:1がゴールデンバランスと言われているけど、それに近いバランスでもある。
ーーー硬度150といっても、それほどクセはないですね。人を選ばなさそうです。
ものすごく敏感な方だと嫌がる方がいますけど、基本的にはそんなに嫌われないですね。
わたしはおいしいと思いますね。バランスが良くて。
飲んで1分ぐらい経つと、口の中がイガイガしてくるかんじがします。
それはですね、おそらくカリウムの仕業です。
カリウムって、苦味とかエグみにつながる性質があるんですよ。
ゼロカロリー飲料とかに入っている人工甘味料で、アセスルファムカリウムってご存知ですか? あれも、カリウムの仲間なんですけど。一度飲むとしばらく口の中に変な味残るかんじがしますよね。あれも同じで、後味が長いのはカリウムの特徴なんですよね。
エビアンの味は?「まずはカルシウム味」
次はエビアンに行ってみましょう。
エビアンは、世界のどこの国でも飲まれているメジャーな水ですね。
これも、味がありますね! なんていうか、舌の横サイドに来る味。
ーーーたしかに、ちょっと苦味も感じるような気がします。
霧島と飲みにくさが近いものがある。喉のひっかかりがある気がします。
ただ、逆に霧島より飲みやすさも感じるような……。
後味でいうと、こっちのほうが断然スッキリしていると思うんですよ。
変な持続みたいなものがなくて、シュッと後味が消えていく。
ただ、最初飲んだときの重み、丸み、金属みみたいなものがありますよね?
おそらくこれはカルシウムなんですよ。
ラベルを見ると分かるんですけど、エビアンはカルシウムが突出して多いんです。
霧島とエビアンって硬度が倍ぐらい違いますが、実は成分はラベルを見るとそこまで変わらなくて。違うのは、カルシウムなんです。エビアンの味はカルシウムでかなり特徴づけられているんですね。
ーーー水に対して「カルシウムの特徴だ」なんて思ったことがありませんでした。カルシウムが多いとどんな味になるんですか?
うーん、難しいんですけど、ちょっと牛乳っぽかったり、小松菜っぽかったり、ちょっとチーズっぽかったり。
??
カルシウムはカルシウム自体の味っていうのがあるんですよ。
「なんて例えたらいいんでしょう」ってワインソムリエの先生と話したりするんですけど、いつも「カルシウム味」としか言いようがないよねって。笑
エビアンを飲んで他の水と違うなって感じた感覚が、「カルシウム味」なんでしょうね。
ーーーこれがカルシウム味なんですね。
もちろんそれだけじゃなくて、中硬水らしい重みとか丸みもありますよ。
ーーーエビアンにはカリウムが入ってないんですね。ラベルにも書いてないですし。
いえ、入ってるんですけど、法律上ミネラル構成ってすべて書かなくていいことになっているので書きたくないメーカーは書いていないんですよね。
ちなみに、
エビアンは毎年デザイナーを付けて記念ボトルを作るんですよ。ラベルやボトル部分でも面白いことに挑戦しているブランドなんです。限定ボトルも出してたりして。
喉がヒリヒリしてきました。
ふだん中硬水とか硬水とか飲まれないからかもしれないですね。
硬度300のエビアンでもこうなのに、次のコントレックスは硬度約1500…。
恐怖しかないです。
俳優が硬水を飲んで大変なゾンビになってしまう映画もありましたよね。
あれは、硬水に含まれるマグネシウムが原因と言われています。
合わない人はああなるっていうだけの話で、マグネシウムが合う人は大丈夫ですよ。
コントレックスの味は?「温泉水みたいなもの」
ーーーコントレックスの500mlがどこにも売ってなかったです。ドラッグストアをしらみつぶしに回ってようやく見つけた1.5Lを買ってきました。
僕もです
私もです。コントレックス、なかなか売ってないですよね。
昔はサントリー、ポッカサッポロといった大手が輸入していたんですけど、売上があまり出ないので輸入者がころころ変わっているようです。
健康志向のイメージなのか、ドラッグストアにあるんですよね。
ーーーちなみに、鶴田さんはいつもどこで買っているんですか?
いろいろですね。コンビニでも買いますし。
でも珍しいのはバラ売りしてないのでネットで箱で買うしかないですね。
あとは、成城石井とか紀伊国屋といった高級スーパーみたいなところいくと、面白いのが揃ってますね。
ーーーなるほど、では早速飲んでみましょう。
笑っちゃうぐらい、すっごい舌に残りますね。重たい。飲んだ瞬間から残る感じがします。
ーーーかなりクセがありますね。
これだけ特徴ある水ってそうそう無いですよ。硬度が高くて、カルシウムもマグネシウムも入っている。個性が尖ってますよね。大衆受けはしませんが、根強いファンがいます。
これはたしかに飲んじゃうとお腹にクる人もいそうです。
先入観とプラシーボ効果かもしれないけど。
ーーー便秘気味な人が飲むといいのでしょうか?
マグネシウムって「にがり」なので、たくさん飲めば便秘の解消の効果は期待できますね。
ただ、マグネシウムの多さゆえに、のみにくさ・えぐさみたいなものを感じるっていうのはあります。
ーーーコントレックスってこの味が美味しいって思って、メインで飲んでる方もいらっしゃるんですか?
正直なところ…、この味が美味しいと思って飲む方はあんまりいらっしゃらないと思います。
コントレックスの人気の理由はやっぱり効能と言われる部分ですよね。
ヨーロッパだとミネラルウォーターに対して健康に対する作用を求める方がすごくいらっしゃるんです。
コントレックスは0カロリーでいろんなミネラルがとれますし、マグネシウムも適量ならば腸を整えてくれる作用があります。
「健康のことを考えて、コップ1杯だけは毎日飲んでみようか」と飲む方が多いですね。
日本でも温泉行くと温泉水を飲みますよね。美味しさっていうより健康のために飲むっていう発想です。
ーーー健康水なんですね。これを美味しく飲む方法ってありますか?
ありますよ。
一番簡単なのは、もしもソーダストリームとかお持ちだったら炭酸ガスを入れちゃうことです。コントレックスは「このままだと飲みづらくて重たい」っていう方が日本の場合ほとんどだと思うんですけど、炭酸ガス入れちゃうと不思議なぐらい飲みやすくなるんです。
へええ。
余談ですけど、炭酸水でも気が抜けたときに美味しくないのがありますよね!
それはおそらく、炭酸ガスを入れる前に水のミネラルを残している場合と、全部抜いて純水にしちゃっている場合の違いではないでしょうか。
炭酸ガスを強く出すためには、純水にしたほうがいいんです。ただ、純水にすると炭酸が抜けたときにペラペラの水になってしまう。一方、ミネラルを残してある水なら、炭酸が抜けても美味しさが残っている。
炭酸水の裏のラベルを見たときに、ナトリウムとかカルシウムとかマグネシウムとかが全部0だったらたぶん純水なんです。でも、ちょっとでも数値が残ってたらおそらく元の水を残しているパターンですよ。
ーーーソーダストリームがない場合は、どうしたら美味しく飲めますか?
お料理はどうでしょう?
野菜スープでも水を変えると味が変わるって言われてます。
野菜しか入れないようなあっさりしたスープなら軟水、トマト缶やベーコンが入るようなパンチのあるスープを作るときは硬水の方が相性がいいですよ。
へえ。カレーでもいいんですか?
いいですよ! コクが出る感じになると思います。
ただ、硬度が高いんで、もしかしたらルーとか溶けにくいかもしれないです。火をかけてしまえば大丈夫だと思いますが。
いつもと違うカレーの味を楽しんでください。
なるほど、やってみます。
後日、ツイッターにて・・・
硬水カレー作成中!
— 阿豆らいち (@AzuLitchi) August 22, 2020
いつもと違う味になったりするかなぁ pic.twitter.com/suWGgRVxfh
まとめ
有名なミネラルウォーター4本を飲み比べました
やはり硬度が上がれば上がるほど、独特のクセや風味が強く出てきます。・・・そうかと思いきや、硬度が上がってもミネラルバランス次第では意外とスッキリ飲める場合もありました(エビアンがそうでしたね)。
ミネラルウォーターの世界・・・なかなかに奥の深い世界でした。
そもそも天然水ミネラルとは、地層の中をゆっくりと水が通り抜けていく過程で水の中に自然と溶け込んだもの。そんなふうに自然の中で味付けがされた水を飲むことができるというのは、なんとも贅沢な体験に思えてきます。
水を飲むときに成分表示を見たことがありませんでしたが、これからはカルシウムやマグネシウムの値を見て味わってみようと思います。
この飲み比べのあと、それぞれの水の感想を元に擬人化してみる企画も行っています。
いつもは何気なく飲んでいるお水がこんな素敵なイラストになるなんて・・・感無量です
イラストの全貌は下の記事で見ることができるので、ぜひこの記事とあわせてお読みください!
ますだえいじ
水のスペシャリスト「アクアソムリエ」として、WEBメディアでウォーターサーバーを紹介する記事を中心に執筆。「水ナビ」ではディレクターを担当。
※アクアソムリエは、日本アクアソムリエ協会の認定資格です。著者の所有資格について、詳細はこちらをご覧ください。