ミネラルウォーターをおいしく飲める最適の容器は?ビン?ペットボトル?缶?

こんにちは。アクアソムリエの鶴田雅人です。

最近、ペットボトル以外の容器でお水が売られているのを、よく目にするなーと思っています。

他の飲料(例えば、コーヒーとかお酒とか…)では、多種多様な容器があるのは、半ば当たり前になっているので、お水にもその波が来た?と言えるのは、良いことだと思います。

ただ、じゃあそれぞれの容器の味はどうなの?とか、あるいはその背景(なぜなのか)とか、そういう部分をまとめた記事はなさそうなので、今回はミネラルウォーターの多様な容器と、その味について、少しだけ掘り下げてみます。

鶴田雅人

日本アクアソムリエ協会認定 アクアソムリエマイスター・公認講師。 水の味の違いに興味を持ち、国内外のミネラルウォーターを飲み比べている。 日本テレビ系列「月曜から夜ふかし」、 フジテレビ系列「99人の壁」など、メディアにも多数出演。

Twitter:https://twitter.com/aquasomme

先に、今回のまとめは、こんな感じです

【比較表】水をおいしく飲める容器はどれ?

容器味わい
ビン
ペットボトル
紙パック
その他△〜

ビン

ミネラルウォーターの歴史はビンから始まります。ヨーロッパには、紀元前から語り継がれる「泉」(あるいはスパやテルメ、採水地)は数多くありますが、一説によると、17世紀にマルバーンという地域で、瓶詰めのお水を販売したのが、その始まりだそうです。

日本では、19世紀後半、明治の始まり頃に、いくつかの炭酸水が瓶詰めで売られ始めました。
これが一応、日本におけるミネラルウォーターの始まりとされています。

その後、昭和4年に富士ミネラルウォーターが誕生したりして、歴史は進んでいきますが、長くなるので(笑)、本題に戻ります。

源泉から直接飲むような場合を除けば、ミネラルウォーターの味わいでいちばん優れているのは、ビンです。

コップをイメージしてもらうと分かりやすいかと思うのですが、
紙コップ、プラスチックコップ、ガラスのコップと並べて、いちばん臭いが移らないのは?と考えると、ガラスですよね。

レストランなんかで、紙コップやプラスチックコップが出てくることは、あまりないと思います。

同様に、レストランでミネラルウォーターを頼むとビンで出てくるのは、もちろん見た目の華やかさもありますが、それ以上にお料理の味を邪魔しない、という面があります。

また、炭酸の保ちが一番良いのもビンです全く同じ銘柄の炭酸ミネラルウォーターでも、ペットボトルとビンを同時に開けて味わうと、ビンの方が炭酸がずっと強いのが、体験できると思います(例えば、サンペレグリノとか、ペリエなど)。機会があれば、ぜひ体験してみてください。

ペットボトル

歴史の話に戻りますが、ペットボトルの誕生は1960年代後半、使用開始は1970年代、と言われています。日本では1977年にしょうゆの容器として使われたのが始まりで、その後、大容量容器(1.5Lや2Lなど)が、飲料用として普及し始めます。

1980年代には、ミネラルウォーターはもちろん存在していましたが、レストランやバーユースが多く、家庭用に普及しはじめたのは、90年代と言われています。背景には、「六甲のおいしい水」のカレーと一緒の販促(当時、ハウス食品がスーパーのカレー売り場やお米売り場に、一緒に並べていたと聞いています)や、輸入ミネラルウォーターのブーム(エビアンなど)などがありました。

その後、1996年4月に小型ペットボトル(500mlなど)が解禁され、時間をかけて、今のような商形態、ラインナップになっていったわけです、長くなるのでこの辺でやめます(笑)。

さて、ペットボトル。現在の商形態を考えると、なくてはならないものかな、とは思います。

味の面では、ビンには劣りますが、缶や紙カップ(後述)ほど、臭いが付くとは思いません。

また、一口にペットボトルと言ってもメーカーは複数あり、さらに充填温度や殺菌方法などによっても異なる(加熱して熱いまま充填するか、そうでないか、オゾンを使うか、など)ので、ビンなどとは違い、「ペットボトルはこう」とは一概に言えないと感じています。

ただ、基本的には、ペットボトルは「あまり臭いはない。商品や、敏感な人によっては、PET臭を感じることがある」くらいの認識でいいのかなと。

ミネラルウォーター全体の割合から考えても、ペットボトルが大部分を占めるので、ここが基準、この感じを物差しにして良いのかなと思います。

時代は戻りますが、缶の歴史はペットボトルより古いです。それは缶詰というものの歴史を考えても明らかですが、日本の飲料における缶の歴史は、1960年代後半、炭酸飲料や缶コーヒーから始まったようです。

ミネラルウォーターでは、炭酸の銘柄を中心に缶のものが見られます。
また、缶は密閉性と殺菌性に優れているため、長期保存水(5年とか7年とか、それ以上とか…)の容器としてもよく用いられています。

味わいの面では、やはり多少の金属臭(アルミ缶であれば、アルミ臭)は気になります。
ですが、炭酸であればお酒の割り材とか、あるいは保存水として災害時の備えにする、ということでしたら、よろしいかと思います。

昨今では、マイクロプラスチック問題を受けて、缶の飲料を見直す向きもあるようです。実際に、ペットボトルから缶に自動販売機の商品を切り替える…といったことなども、一部では行われているようです。

紙パック

実は、先にお話しした六甲のおいしい水も、1983年の発売当初は紙パックでした。
紙パックは、今も昔もメインストリームではないのですが、やはりマイクロプラスチック問題やSDGsの関係で、見直す向きがあるようです。

技術的には、Tetra Pak(テトラパック)社の技術が高く、FSC認証(適切な森林管理が行われているか、あるいはその製品であるか)を受けたものもあるようです。

紙の内側をコートするなど、技術も重ねられていますが、ただ、やはりビンやペットボトルと比べると、臭いの付着があります。ミネラルウォーターは、お茶などに比べ、特に臭いが付きやすい飲料であるので、難しい部分もあるのかもしれません。

その他

ウォーターサーバー(ガロンボトル、BIB(=バッグインボックス))

最近はウォーターサーバーをお使いの方も多いと思います。お湯にお水に粉ミルクに、大変に便利なものですよね。

主にガロンボトル(大きなプラスチックのボトル)またはBIB(バッグインボックス。段ボール箱の中に、パウチされたお水が入っているもの)です。

ガロンボトル

BIB(バッグインボックス)

どちらも大枠ではプラスチックです。味わいの面では、ペットボトルに準じるものとしてよいと思います。

ただし、サーバーの場合は、むしろメンテナンスが重要で、万が一カビなどが生えてしまうと、大きく味わいを損なうことになります。健康面からもぜひ、定期的に決まったお手入れをお願いします。

パウチ

あまり数は多くありませんが、こうしたパウチ(大きなビニールパックのようなもの)に入ったミネラルウォーターもあります。注ぎ口の付いたチューブパウチ、注ぎ口がなくカットして使うもの、さまざまです。

当然、持ち歩きには不向きですが、家庭で1日で使い切るようなら、案外ごみがかさばらない、という意見もあるようです(これはうちの妻です)。
味や臭いの面では、これもプラスチックですので、ペットボトルに準じるものです。

なんとなくの印象ですが、非加熱※の商品が多い気がします。
(※“非加熱処理”という特殊な処理方法を用いた天然水)
ちなみに水素水などだと、密閉性の高いアルミパウチの商品もあるようです。これは味・臭いの面ではアルミ缶などに準じます。

リサイクルペットボトル/生分解性ペットボトル

まだ、研究中だったり、発展途上のものが多いですが…。
「ペットボトル」というものに対する、ひとつの持続可能な回答として、「リサイクルペットボトル」や「生分解性」というものがあります。

リサイクルペットボトル

「リサイクルペットボトル」は、単純明快、回収したペットボトルをもう一度飲料のペットボトルにする(ボトルtoボトルと言います)ものです。

日本のペットボトルの回収率は欧米諸国と比較しても高く、2018年の数字で91.5%だそうです。(ただし、リサイクルされたものの使いみちはさまざまで、すべてがボトルtoボトルというわけではありません。むしろ、ボトルtoボトルはかなり状態の良いプラスチックに限定されるそうです)

最近だと、コカ・コーラが、い・ろ・は・すで、100%リサイクルペットボトルを導入しましたね。これは材料集めや販路の大きさを考えると、大変にすごいことだと思います(土屋太鳳さんがCMしているやつです)。

生分解性のペットボトル

「生分解性」は、読んで字のとおり、生物が分解してくれるものです。身も蓋もなく言えば、「土に還る」ということです。ただ、これも基本的には条件が揃わないと難しく、現状では、コンポスト下で長時間、という環境ならば、というものが想定されているようです。

味わいはどちらも通常のペットボトルに劣らない

さて、味わいの話に戻りますと、どちらも市場に出ているものを飲んでみましたが、現状売られている他のペットボトルと、そう変わらないものでした。

まとめ

さてさて、冒頭でも触れましたが、
お水の容器別、味の違いについてまとめてみます。

容器味わい
ビン
ペットボトル
紙パック
その他△〜

何よりも、いちばん大切なのは、元のお水の質です。
それに勝るものはないのですが、じゃあ、「容器がどのくらいお水の味を損なわないか?」と聞かれたら、大枠ではこの表の感じになります。(同じ容器でも、個別のものにより、差はもちろんあります)

ビンはほぼ、元のお水のままの味わいを伝えてくれます。
また、長期の保存にも耐え、臭いの付着なども少ないです。
ペットボトルは、ペット臭が付くこともありますが、そこまで大きく味わいを損なわないものもありますので、これを標準としてよろしいかと思います。

缶や紙パックは、ビンやペットボトルと比べると、致し方ないですが、臭いの付着など、味わいが損なわれることが多いです。
その他プラスチック製のものは、ペットボトルと同じような感想です。

———

と、色々と書きましたが、「ご自身がお好きなものを飲むのが一番」です。
冬にずっと室内にいると、水分が不足することもあるので、1日2L、できればお水で摂ることを心がけてみてください。

今回の話は、日々のお水選びのご参考にしてもらえればと思います。

鶴田雅人

日本アクアソムリエ協会認定 アクアソムリエマイスター・公認講師。 水の味の違いに興味を持ち、国内外のミネラルウォーターを飲み比べている。 日本テレビ系列「月曜から夜ふかし」、 フジテレビ系列「99人の壁」など、メディアにも多数出演。

【監修者】中倉大吾

株式会社スタークラフトの代表取締役社長を務めながら、水のスペシャリスト「アクアソムリエ」としても活動する。2013年5月からウォーターサーバーの比較メディアを運営開始。10年以上にわたってウォーターサーバー業界を見てきた豊富な知見を生かし、2019年にはより総合的でユーザーに寄り添ったウォーターサーバー比較サイトとして「水ナビ(当サイト)」を立ち上げる。また宅配水業界における正しい情報発信を推進するため、一般社団法人「日本宅配水&サーバー協会(JDSA)」の協賛会員に加盟。
※アクアソムリエは、日本アクアソムリエ協会の認定資格です。著者の所有資格について、詳細はこちらをご覧ください。またこちらからアクアソムリエ協会のプロフィールもご覧になれます。