豪雨など、災害の続いている時期です。
被害にあわれた方々には、心からお見舞いを申し上げます。
私も、東日本大震災や断水など、何度か災害を経験しました。幸いにも、本当に生命の危機のような状況には直面せずにすみましたが、食料や水について、不便な思いをしました。
今回は、災害対策ということで、アクアソムリエという立場から、
この2点を中心に、お話ししたいと思います。
鶴田雅人
日本アクアソムリエ協会認定 アクアソムリエマイスター・公認講師。 水の味の違いに興味を持ち、国内外のミネラルウォーターを飲み比べている。 日本テレビ系列「月曜から夜ふかし」、 フジテレビ系列「99人の壁」など、メディアにも多数出演。
X(旧Twitter):https://twitter.com/aquasomme
お水の備蓄
さてさて、ご家庭でお水の備蓄、されていますか。
東日本以降、備蓄水の需要が伸びていますので、まったく備蓄をされていない、という方は、少ないんじゃないかな、と思っております。
では、その備蓄、必要な量を満たしているでしょうか?
というか、あなたのご家庭で、必要な量は何リットルか、ご存知でしょうか?
先に、答えというか、望ましいとされる量を書いてしまうと、
【1人当たり9リットル】です。
なので、【3人家族なら27リットル】、【4人家族なら36リットル】という感じですね。
これ、どういう計算かと申しますと、
まず飲み水として、1日2リットル前後必要です。
で、災害時、水道が止まると、衛生面などでも(手を洗ったり、食器をすすいだり…)、お水が必要です。 なので、「ひとり1日3リットル」。
それで、水道の復旧、あるいは給水車が出回るのは、一般に「災害発生から4日目」と言われています。
もちろん、ケースにもよるでしょうが、
災害で道路や水道管が寸断された場合、まずはそれを直さなければ、給水が出来ません。
あるいは、72時間が経過するまでは、人命救助に最大のリソースが割かれます。
そうしたことを踏まえて、発災から3日間は、自分の備蓄したお水で生活することが求められます。
ですので、1日3リットル×3日=【1人当たり9リットル】となります。
そして、【9リットル×家族の人数=必要な備蓄量】となるわけですね。
こうして考えると、必要とされる備蓄量に足りていないご家庭の方が、多いのでは…?と思います。
500mlでも、2Lでも、1箱あたり12リットルが主流ですから、ざっくりした計算だと、人数×箱数が必要です。
ウォーターサーバーをご利用の場合は、
人数×ボトル数の備蓄があれば、おそらくそれで事足りると思います。
災害時、停電してしまうと、電気式のサーバーは使えなくなるものもありますが、中のお水は取り出せると思いますので。
余談ですが、マンションなどにお住まいの場合。
電気式のポンプなどでお水を上にあげる仕組みだと、水道管の破損がなくとも、停電すると水道も止まります。
やはり、お水は備えておきたいものです。
もし、ウォーターサーバーでなく災害用にお水を買って備蓄するならば、
の2つがあります。
ローリングストック
ローリングストックとは、日常使うような食料品を少し多めに買っておき、その分を備蓄にする、という考え方です。
お水の場合は、いわゆる2Lペットボトルだと、賞味期限が1〜2年くらいのものが多いです。
例えば、その2Lペットボトルの箱を、人数分だけ買っておいて、賞味期限が近くなったら新しいものを同じ量だけ買ってきて、入れ替える…という感じです。
入れ替えのサイクルは早く短いものとなりますが、特別な備蓄食品ではないため、普段使いしやすいのが利点です。
賞味期限の長い備蓄水
備蓄水とか、保存水とか、色々な呼ばれ方をします。容器も、缶や厚めのペットボトルである場合が多いです。
メーカーによりますが、賞味期限はだいたい5〜7年。長いものでは10年という商品もあります。
賞味期限がたいへんに長いため、一度買えばそうそう入れ替えなくて良いのが利点ですが、保管場所をある程度考慮する(直射日光、高温多湿、車庫などは避ける)必要があります。
また、入れ替えを忘れて賞味期限が切れてしまった…というケースもあります。
この辺りのことについては、次で詳しく書きます。
賞味期限の話
食品は、その種類や性質によって、消費期限と賞味期限のどちらかが設定されます。
生鮮食品(例えば牛乳)などには消費期限が振られ、これは「過ぎてはいけないもの」です。
対して、賞味期限は、比較的傷みにくい食品に振られる、あくまでも「おいしく食べられる期限」です。
お水の場合は「賞味期限」なので、以下、「賞味期限」の話を書きます。
お水の賞味期限には、2つの側面があります。
(ⅰ)はそのままです。「このお水、いつまで飲めるの?」という問いに対して、「目安としてはいつまでだよ」というものです。
(ⅱ)は、例えば「500ml」という表示に対して、480mlなど、あまりに量が不足していたら、不適切ですよね?
特にペットボトルの場合、どうしても微細な隙間から中のお水が少しずつ蒸発することはあり得るので、その内容量が担保できるのはこの期間だよ、というものです。
難しい話はさておき。
「賞味期限が過ぎたお水、飲めるの?」
と聞かれたら、
「私はよく飲むことがあります」
とまずお答えします。
これは、はぐらかしているわけではなく、
【賞味期限が過ぎても、基本は飲めるが、保存状態による】からです。
賞味期限を過ぎても、例えば温度変化の少ない、湿度も高くない、外気にさらされることもないような場所でずっと保管していた場合。
これは、おそらく飲めます。
ですが、車庫で保管していたとか、屋外で保管していた場合。これはおそらく、「賞味期限前でも、場合によっては厳しい」です。
順を追ってお話しします。
まず、保管場所が、
を確認してください。
お水はとても臭いが移りやすいため、(a)の場合、賞味期限前でも、だめになる場合があります。次に、見た目です。
を確認してください。
該当する場合、外気に触れている可能性が高いため、破棄した方が無難です。
ただし、災害時でほかに飲めるお水がない場合は、沸騰させることができないかを検討してください。
ここまでがokなら、次は臭いです。
コップに移して、あるいは飲み口から、臭いをかいでみてください。
ここで異臭やあまりに埃っぽさを感じるようなら、これも破棄した方が無難です。
臭いがokなら、最後に味です。
ごく少量を口に含んで、あまりに変な味がしないかを確認してください。
長期保管の場合、缶/ペットの容器の味を感じることがありますが、それ以外の異味がないかを感じ取ってみてください。
【保管場所、見た目、臭い、味、すべてをクリアしていれば、そのお水は賞味期限を過ぎていても、おそらく大丈夫】です。
特に災害時には、これを捨てるのはもったいないです。
ただ、味覚や嗅覚には個人差がありますので、状況が許すならば、誰か一人が試しに飲んでみて、しばらく待って、体調に変化がないかを確認された方が、より良いかと思います。
本当は、ワインセラーのような場所がベストなのでしょうが、お水にその場所を与えている人は、おそらくいないかと思います。私でもしません(笑)。
個人的には、直射日光の射しにくい部屋を選んで、お水を長く保管しています。当然、夏には高温になります。が、ボトルの見た目に変化がない限り、今まで、賞味期限の切れたものを何度も飲んできましたが、大丈夫でした。
また、別のお仕事で、「10年保存水の9年目」というものも、一度飲ませていただきましたが、多少の埃っぽさは感じたものの、それ以上の違和感はありませんでした。
と、いうことで、【賞味期限切れ=破棄という思考はもったいない、特に災害時には】、です。
すべてのものが大丈夫とは言えませんが、上のやり方に沿って、判断をされてみてください。
まとめ
長くなってしまったので、大事なところだけ、最後にまとめます。
読み飛ばされた方も、ここだけは見ていただければ。
- 災害時に必要なお水の量は1人当たり9リットル
- 9リットル×家族の人数=必要な備蓄量
- 賞味期限が過ぎたお水も、基本は飲めるが、保存状態による
- 保管場所、見た目、臭い、味が安全かを確かめてから、飲んでみてください
ご自宅のお水の備蓄、どうなっているか、ぜひ確認をされてみてください。
あわせて、災害時にお水が配られる場所はどこかも見ておくと、なお良いです。
鶴田雅人
日本アクアソムリエ協会認定 アクアソムリエマイスター・公認講師。 水の味の違いに興味を持ち、国内外のミネラルウォーターを飲み比べている。 日本テレビ系列「月曜から夜ふかし」、 フジテレビ系列「99人の壁」など、メディアにも多数出演。
X(旧Twitter):https://twitter.com/aquasomme