長女の春子はアメリカで生まれた。
そして幼稚園の年長までアメリカで暮らした。
しかし年長の終わり頃に旦那が急に…
と言い出し私たちは日本に本帰国したのだった。
しかし…
日本にはぜんぜん馴染めなかった…
旦那が…
そして2年後に私たちはまた アメリカへ戻ったのだった。
それも前と同じ場所に。
【著者】春子ママ
アメリカ在住30年の主婦/イラストレーター/ブロガー 現在は老いた両親の世話のため1年の半分ほど日本で過ごしている。 詳しい家族構成等はブログをご覧ください。
ブログ:http://uscomic.blog.jp/
たった2年間の日本での生活
しかし子供にとっては長い2年間。
春子はほとんど英語を忘れてしまっていた。
その時春子は小学校2年生だった。
アメリカでは子供の発育に応じて1学年
または2学年遅らせることはよくあることだ。
だから英語の遅れを考慮して私達も春子を1学年
遅らせたほうがいいかもしれないと思った。
しかし春子の英語はゼロからの出発ではない。
幼稚園まで英語を話していたのだ。
それに …
幼稚園で大親友だった春子の友達
ヘレンが同じ学校の2年生にいた。
友達がいれば学校にもきっとすぐに馴染めるだろう。
そう考えて春子をそのまま2年生に転入させることにした。
そしてそれは正しい選択だった。
昔のように二人は大親友に戻った。
それによって春子の英語はぐんぐん上達した。
2人は放課後もお互いの家に遊びに行ったり来たり 交流を深めていった。
よかった。
母親である私はホッとした。
しかしそんなある日のお昼
そのヘレンのお母さんから私に直接電話があった。
ヘレンの両親とも昔から交流がありホームパーティーなどにも呼んだり呼ばれたり私たちは家族ぐるみで付き合っていた。
だからヘレンが困っているのなら素直に助けてあげたい、力になってあげたいと思った。
そしてヘレンのママはこう続けた。
「それがね…
でもヘレンは春子を突き放せなくて、私にどうしようと言って泣くの。
だから春子ママの方から春子に これから学校ではヘレンにべったりくっついて、ヘレンを他の友達から引き離すようなことはしないでほしいと伝えてくれる。
直ぐに言葉が出てこなかった。
うまい英語が出てこなかった。
「わかった春子には私から言っておくね」
やっとの思いでそう言った。
「ありがとうこれでヘレンの学校生活が また楽しいものに変わるわ。」
そしてその後ヘレンのママと少し会話を交わしたが何を話したのかは全く覚えていない。
そして電話を切った。
ショックだった。
いろいろな考えが頭をよぎる。
普通友達が困っていたら助けてあげるよね。
春子には他に仲のいい友達がいないのだ。
その上この学校にもまだ慣れていない。
第一言葉に不自由がある春子は、ある意味ハンディーキャップなのだ。
親ならヘレンに春子が困っているからしばらくは助けてあげなさいと言うのが、教育じゃないだろうか。
私はヘレンのママを批判した。
しかし少し時間が経つと冷静さを取り戻し、もしこれが逆の立場だったらどうだろう とも考えた。
自分の子供が他の友達と遊ぶ自由を奪われていたら、きっと私も相手の子供が全部悪いと思ってしまうのではないだろうか。
ヘレンはまだ小学2年生。
何もわかっていないのだ。
ただ楽しく遊びたいだけで、春子をいじめようなど意地悪なことを思っているわけではないと思う。
しかしこのまま春子がヘレンにくっついていれば春子とヘレンの関係はますます悪化するだけだ。
そして春子だって他に友達を作ろうとしなくなる。
それどころかまず作ろうと努力すらしないかもしれない。
ある意味この電話をもらったことは、春子にとってもよかったかもしれない。
そう前向きに考えることにして…
そして次の日も私は普通に春子を学校へ送り出し… そしていつものように春子は学校から戻ってきた。
寂しく孤独な1日だったに違いないと思いながら…
春子は少し考えてから…
と元気良く答えた。
昨日ちゃんと話したでしょ ヘレンにくっつくなって。
そしたら春子が得意そうにこう言った。
ま〜そんなものかもしれない。
結局子供なんてそんなものかもしれない。
子供は子供の社会があってうまくやっているのだ。
大人がお節介に介入しても始まらないのだ。
多分あの日はたまたまヘレンの虫の居所が悪く、春子の何かが気に入らなかっただけで それを大げさに母親に話しただけだったのかもしれない。
それからも二人は今まで通り仲良く遊んだ。
そして徐々に春子は学校にも慣れ、他の友達もできて普通に学生生活を送るようになった。
その後もヘレンの家族とは今まで通り付き合った。
呼んだり呼ばれたり。子供達も行ったり来たり。
しかし一つだけ修復できないものがあった。
それはヘレンの母親に対する私の信頼だった。
水ナビ編集部
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