歴史は1000年以上!豊かな自然に恵まれた酸性泉、岳温泉

福島県二本松市に位置する、豊かな水と緑に恵まれた国民温泉保養地でもある岳温泉

土砂崩れや火災などによってこれまで幾度もの移転を経験したこの温泉は、全国でも珍しい酸性温泉として知られています。

今回は、二本松市地域おこし協力隊の坂東拓哉さんに、岳温泉の魅力や特徴について伺いました。

岳温泉観光協会

担当者 坂東拓哉さん

地域おこし協力隊

数々の災害により、名称や場所を変更

──まずはじめに岳温泉の成り立ちを教えて下さい。

坂東さん 岳温泉が一番初めに記録として残されているのは、『日本三代実録』の貞観5年(863年)10月20日の条です。その後、『日本紀略』の寛平9年(897年)9月7日の条にも、「小結温泉に正五位下を授ける」と記載されています。この小結温泉こそが岳温泉であり、京都に都があった時代からその存在が知られていたんです。

そんな岳温泉ですが、長い歴史の中で土砂崩れや火災などに見舞われ何度も移転を繰り返し、今の場所に位置しているという経緯があります。その証拠に、温泉の名称が「湯日」「十文字」「深堀」と変わってきているんです。

──長い歴史によって名称や位置が変わったのですね。

坂東さん 最後の移転は明治36年、旅館から出た火によって温泉街が全滅してしまいます。温泉街の住人有志が温泉の再再々建を目指し、岳温泉株式合資会社を設立。中央に道路を敷設し両側に旅館や商店を並べて2つの共同浴場を配置したのが、今の岳温泉の原型となっています。

源泉は、日本百名山の「安達太良山」

──そんな岳温泉の源泉である安達太良山(あだたらやま)も、有名な観光スポットなんですね。

坂東さん そうなんです、安達太良山は標高1700m。日本百名山の一つとして知られており、一昨年にはある地図アプリの調査で東北地方で一番登られた山とも紹介されました。標高はそこまで高くないので老若男女登りやすいことも影響しているのではないでしょうか。

岳温泉の近くに登山口行きのロープウェーの乗り場があり、それを使えば山頂までは1時間半ほど。花の百名山としても知られ、夏は高山植物、秋は紅葉を楽しめます。

また、実は安達太良山は活火山でもあるんです。噴火口は山頂から15分ほどで行けるので、一緒に見に行かれる方が多いですね。

SNSでも話題になった、ミルキーデイ

──岳温泉の泉質・効能について教えてください。

坂東さん 岳温泉は全国でも珍しい「酸性泉」です。酸性泉は殺菌力が高く、慢性皮膚炎やアトピーに効果が高いと言われています。

また、酸性成分がお肌の角質を溶かすことから、美容効果が高いことでも知られ、過去には「楽天トラベル 美肌の湯ランキング」にて全国3位にも選ばれました。

岳温泉は源泉から距離があり、8キロほどのパイプを運んでいます。源泉では酸性が非常に強いのですが、長い距離を伝う間にどんどん酸性が弱くなるため酸性でありながら肌に優しいお湯を楽しめます。

──引湯ならではの楽しみ方「ミルキーデイ」についても教えてください。

坂東さん 引湯は、パイプにどんどん湯花が付着していきます。そのため、定期的に湯本まで行き付着した湯花をとる作業をしているんです。

湯本から一気に湯花が流れてくると、温泉は一気に乳白色に。SNSで発信すると「牛乳みたい」と話題になり「ミルキーデイ」と名づけることになりました。

視覚的なユニークさはもちろん、湯花がたくさん含まれることでドロッとしており、贅沢感を味わっていただけます。

夏期間は週に1回、冬期間は2週間に1回の頻度で実施しています。ただし、自然条件に左右されるため、正確な日程は岳温泉観光協会の公式SNSをご確認ください。

──おすすめの温泉の入り方を教えてください。

坂東さん 岳温泉は源泉の温度が非常に高く、長時間浸かり続けるのは難しいと思います。そのため、こまめに出たり入ったりするのがおすすめです。

水風呂のある旅館もあり、交代浴を楽しむ方も多いですね。また、標高が高いため外の景色は抜群。
ぜひ、露天風呂で山の景色を堪能してください。

独立国時代の熱意を胸に、岳温泉を盛り上げたい

──周辺で一緒に回るのにおすすめなコースやルートを教えてください。

坂東さん やはり王道は山登りからの温泉を楽しむルートです。先述の通り、安達太良山は初心者の方でも登りやすく、登山後に温泉でリフレッシュする観光客も多くいらっしゃいます。

お子さま連れの場合であれば、「東北サファリパーク」がおすすめです。車でライオンやシマウマなどの野生動物を間近で見られるほか、ふれあい体験なども豊富。小動物に餌をあげたり、抱っこをしたりもできます。

──最後に、今後の展望などございましたら教えてください。

坂東さん 私は「地域起こし協力隊」として現在岳温泉の魅力や暮らし、イベントなどの情報発信を行っています。

出身は大阪ですが、福島に来て自然の豊かさや水やごはんのおいしさに感銘を受け、移住してきました。もっと多くの方に岳温泉やこの地域の良さを知っていただくため、これからもイベントや情報発信に力を入れていきたいですね。

また、それらの活動を通して関係人口を増やし、地域の方にとっても生活しやすい、働きやすい場所を作っていきたいと考えています。

私たちが行う「町起こし」のルーツは、実は岳温泉から始まっているとも言えるんです。というのも、岳温泉はかつて独立国「ニコニコ共和国」と呼ばれた国でした。

1980年代に独立国ブームが起こり、岳温泉はその先駆けと言われています。今はもう独立国ではありませんが、先人たちの思いを継いでいきたいですし、その歴史をしっかり守っていきたいと思っています。

ミニ独立国ブーム・・・小説「吉里吉里人」をきっかけに始まった、日本国内において地域振興の一環で日本国から独立を宣言した架空の「国家」が多数現れた現象。

岳温泉観光協会

〒964-0074 福島県二本松市岳温泉1-16
TEL:0243-24-2310 
FAX:0243-24-2911

この記事の執筆者

佐原 有紀

大手人材会社退職後、2018年よりフリーライターとして活動。取材経験を活かし、ウェブメディアでの執筆や求人広告の作成などを行っている。

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