プログラミングで海を知る。子ども向けの社会活動を率いるイエローピンプロジェクト

一般社団法人イエローピンプロジェクトは「子どものための社会活動を全国の企業と共に広めていく」ことを掲げ、2007年に立ち上げられました。

現在は日本財団「海と日本PROJECT」の一環として、「プログラミングで海のSDGs!」(以下、海のSDGs)を実施。SDGs(持続可能な開発目標)とプログラミングを掛け合わせ、子どもたちが楽しく学べるきっかけづくりに力を入れています。

今回は、イエローピンプロジェクトを立ち上げた町田保(まちだたもつ)さんと、事務局長の三輪愛美(みわあいみ)さん、アシスタントの秋田真生子(あきたまきこ)さんにインタビュー。具体的な取り組みや、プロジェクトの意義、海や水への思いや考えについて話をうかがいました。

一般社団法人イエロー ピン プロジェクト

町田 保さん

東京大学大学院卒業後、CG制作会社にてCGエンジニアとしてキャリアをスタート。リトルスタジオインクに入社し、テクニカルディレクターとして日本科学未来館のシンボル展示「GEO-COSMOS(世界初の大型球体ディスプレイ)」や、愛・地球博の三井・東芝館などでシステム開発を担当。その後、プログラマーとしてeラーニング事業の企画や構成、ディレクションを担当。2007年にイエローピンプロジェクトを立ち上げる。

一般社団法人イエロー ピン プロジェクト

三輪 愛美さん

フジテレビ「ひらけ!ポンキッキ」4代目お姉さん役を経て、子ども向けのコンテンツ制作にかかわってきた。現在、一般社団法人イエローピンプロジェクトの事務局長として従事。

一般社団法人イエロー ピン プロジェクト

秋田 真生子さん

大学時代に環境・開発学を専攻。イギリス留学で環境リテラシーの高さに驚き、環境教育(ESD)に関心を持つ。2021年に新卒でリトルスタジオインクに入社。入社後から「プログラミングで海のSDGs!」に携わり、小学校での出前授業や、子ども向けのコンテンツ制作に携わる。

子どもたちのことを社会全体で“本当に”考える「イエローピンプロジェクト」

──最初にイエローピンプロジェクトを立ち上げたきっかけを教えてください。

町田 保さん(以下、町田さん) 私はリトルスタジオインクという会社の代表取締役を務めていて、子ども向けのコンテンツ制作をしています。

2003年頃に、世の中でCSR(企業の社会的責任)が話題になり、当社としても積極的に取り組んでいきたいと思いました。全国の企業にも協力してもらいながら、子ども向けの社会活動を広めていければと思い、2007年に一般社団法人イエローピンプロジェクトを立ち上げました。

──プロジェクトに対する想いやビジョンについて教えてください。

町田さん 子どもたちのことを“本当に考えた”プロジェクトにすることをポリシーにしています。これは大人として当たり前のことかもしれませんが、簡単なことではないと思うんです。

特に今までの社会では「男性は仕事に専念して、あまり育児に関わらない」という風潮が強かったと思います。そのため、子どものことがよく分からないという会社人も多かったんですよね。だからこそ、男性にも社会活動を通して子どもに貢献してほしい。プロジェクトを立ち上げた当初は、そのような想いが強かったです。

子どもたちのことを社会で大切に考えていくシンボル。真ん中はハートで型取られ、社会の愛に包まれて育つキッズをイメージしている

町田さん 子どもたちに「社会の繋がりを伝えること」にも意義を感じています。たとえば、パン屋さんに行ったときのことを考えてみてください。パン一つをつくるのにも、パン職人さん、小麦粉やバターなどの材料をつくる人、製パン機械をつくる人…など、いろいろな企業との繋がりがあります。そのような社会の繋がりを知るきっかけをつくりたいのです。

その取り組みの一つが、プロジェクトの名前にも入っている「イエローピン・マーク」。これをキッズサイトを持っている企業に配布し、サイトへの掲載を勧めています。子どものことを本当に考えている企業である、という象徴になります。

そのような企業同士を繋げて、子ども向けの社会貢献の輪を広げる。そして、私たちから社会の繋がりを生み出していきたいとも思っています。

各企業のキッズサイト、そして想いを繋げる「イエローピン・マーク」

小学生向けに「プログラミング×社会課題」で楽しい学びを届ける

ワークショップの様子。(2020年 江東区開催)

──現在注力されている「プログラミングで海のSDGs!」(以下、海のSDGs)とは何ですか?

町田さん 日本財団の方と知り合う機会があり、「海と日本PROJECT」という助成事業を教えていただきました。海のSDGsは、海と日本PROJECTの一環として、2019年にスタート。「海と日本PROJECT」の活動は、海岸でのごみ拾いや海に関する仕事体験など、リアルイベントがメインでした。そんな中で、プログラミングと掛け合わせた楽しみ方があると、子どもたちや保護者の方も喜ぶのでは?と思い、提案させていただいたんです。

三輪 愛美さん(以下、三輪さん) 海のSDGsは、目標14「海の豊かさを守ろう」というテーマで、プログラミングをSDGs学習をゲーム感覚で楽しみながら、海の課題解決を体験するという内容です。最初はよく話題になる海洋プラスチックごみのプログラミングワークショップから始めました。現在はさまざま海の課題に広がり、漁業問題やブルーカーボンなどの内容も取り上げています。

──「プログラミングで海のSDGs!」に対する感想や反響を教えてください。

秋田 真生子さん(以下、秋田さん) オンラインだけではなく、小学校での出前授業や講演会、ワークショップなどを行っています。2022年度は全国各地の19校に出向きました。子どもたちからは「こんなに海に問題があるって知らなかった」「自分から変わらなくちゃいけないんだ」といった感想があり、私たちが取り組んでいることに意味があると感じています。

子どもたちに難しいことを楽しく学んでもらえるというのは、とても画期的だと思うんです。子どもたちからはもちろん、保護者の方や先生からもとても好評で、たくさんのお礼の言葉をいただいています。

三輪さん 保護者の方の関心もすごく高いですね。イベントでメモを取られていたり、授業のあとに真剣に質問をしてくださったり。親子揃って社会課題に意識を向けられるというのは、とても有意義な時間だと思います。

あらゆる企業や人々と協力して、プロジェクトを持続可能なものへ

──今後のビジョンと、皆さんへのメッセージをお願いします。

三輪さん この活動を通して、子どもたちの「楽しかった!」という笑顔を何度も見てきました。これからも子どもたちに楽しんでもらえるコンテンツを提供していきたいです。そして、今までご縁のあった方や企業様と一緒に、各地で進めていけたらと思っています。

環境問題は本当に切実ですが、やはり自分事として、身近なことから行動するしかないと思うんです。時代によって注目される問題は変わると思いますが、根本はすべて同じで、人間が起こしていること。小さな積み重ねをしていける人が増えると嬉しいです。

秋田さん これからの時代は水害が増えるとも言われているので、今のうちからもっと水について身近に感じ、行動する人を増やしていけたらと思います。小学生だけではなく、中学・高校生や大学生、大人向けにも楽しく勉強する機会を提供していきたいです。

町田さん この活動は本当に意味のあることだと感じているので、これからは「どのように持続していけるのか」が課題だと思っています。これからもずっと、全国に出向いて海や環境、社会について子どもたちに伝えていきたいです。この記事を読んで少しでも興味を持ってくれた方や企業様、団体様がいらっしゃいましたら、お気軽にお声がけいただけると有難いですね。

一般社団法人イエロー ピン プロジェクト

〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町29-10 ヒルサイドテラスC-21
TEL:03-5784-4651 

この記事の執筆者

志摩 若奈(しま わかな)

個人事業主として、取材や執筆、カウンセリングをおこなう。「自分と繋がる瞑想法®︎」を活用した、自己信頼や自己受容を育むセッションを提供中。お問い合わせはInstagramのメッセージまで。

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