業界を代表する酒造メーカーに成長。そんな黄桜に聞いてみた、酒造りで大切なこと

酒造メーカーとして全国的に有名な黄桜株式会社。その設立は1951年と、数百年の歴史を持つ老舗企業が多い酒造業界では若い企業です。

しかしそれまでの日本酒業界では珍しかったテレビCMの採用や、紙パックでの清酒販売などを展開。業界の先入観にとらわれない方策でヒットを飛ばしてきました。

本日は営業統括部の西田友希さんに、黄桜株式会社のお酒造りへかける思いや、日本酒造りに使われている名水「伏水」についてお話を伺いました。

黄桜株式会社

西田 友希さん

営業統括部

型破りな広告戦略と商品展開で酒造メーカーの先駆け的存在に

──御社の事業内容とこれまでの歩み(沿革)について、お聞かせください。

西田 友希さん(以下、西田さん) 1951年の設立以来、約70年にわたり日本酒の製造を手がけています。

数百年の歴史を持つ老舗メーカーが多い業界内では後発企業です。しかし、業界に先駆け、テレビCMを展開。「山廃仕込(※)」の量産化を行い、既成概念にとらわれない商品開発でお客様の支持を得てまいりました。

※山廃仕込とは・・・「山廃(やまはい)」とは「山卸(やまおろし)廃止」のこと。山卸とは酒母を仕込んだ後に蒸米をすりつぶす作業のことで、この作業を行わずにお酒を作ることを山廃仕込と呼ぶ。山廃仕込みで作られたお酒は旨味や味わい、風味が強いという特徴がある。

CMキャラクターのかっぱをパッケージに使用した「かっぱ シリーズ」

──黄桜さまといえば、カッパの出てくるCMが有名ですよね。既成概念にとらわれない商品開発も消費者としては印象的です。ほかに、どのような施策や商品づくりがありますか?

西田さん 当社は業界でいち早く紙パック製品を導入しました。

また、日本酒以外にもスパークリング日本酒の開発やクラフトビール・ウイスキーの製造にも取り組んでおり、現在は幅広い酒類を多くのお客様へお届けしています。

──CMを流したり紙パックで販売したりという販売方法は、今では色んな酒造メーカーさんでやっていますね。実は黄桜さんが先駆けと聞いて、驚きました。

紙パックの清酒「黄桜 呑」

手ごろな価格で良質のお酒造りを。お客様のニーズを掴んだ『黄桜』

黄桜を代表する日本酒「黄桜」

──御社の発展において、銘酒『黄桜』のヒットは外せない要素かと思います。『黄桜』のどのような点がお客様に愛されたポイントだと感じますか?

西田さん 『黄桜』が高品質で味わい深く、手ごろな価格の商品であったことだと考えます。

──黄桜が発売された当時の日本酒は、今ほど手ごろな商品ではなかったということでしょうか?

西田さん 発売当時の日本酒は、アルコール度数で特級〜2級と等級が分けられていました。今とは違い、価格も級によって決められていました。

その中で、黄桜は手ごろな値段で飲める良質な酒造りを目指したのです。そして、二級酒の中で高品質かつ、一級酒のアルコール度数を満たした日本酒『金印黄桜』を発売しました。

──手ごろな価格で買える二級酒でありながら、アルコール度数は一級酒と同じだったのですね。良質でありながら、安く買える『黄桜』はお客様にかなり喜ばれたのではないでしょうか。

西田さん そうですね。時代の移ろいとともにお客様のニーズは多様化しております。今後もお客様に寄り添うことは忘れず、身近で存在感のあるブランドであり続けたいと考えています。

──そういう点で言うと、ソフトタイプ清酒「黄桜マイルド」の発売では味わいにおいて、若年層・女性層の顧客のニーズに寄り添っていると感じます。

西田さん 当時は「濃いからうまい酒」という定説があった時代でした。そのためか、「黄桜マイルド」は度数の低さを取り上げられ、「黄桜は金魚酒(※)をつくった」と言う方もいらっしゃったようです。

しかし、お客様の反響は大きかったと聞いています。後に発売したマイルドパック180mlは、パック酒にストローが付いていることで話題にもなりました。

※金魚酒・・・金魚が泳げるほど薄いお酒を指して言ったもの

「黄桜 マイルドパック」

黄桜の酒造りを支える「伏水」はミネラルバランス抜群の名水

──御社のお酒造りに使用している名水「伏水」はどんなお水ですか?

西田さん 硬度89〜124.6mg/Lの中硬水で、鉄分は少なめです。カリウム、カルシウムを適度に含んでいるのが特徴です。

──中硬水の「伏水」を御社のお酒造りに使い始めたのはどういった経緯からでしょうか?

西田さん 伏見は地下水の貯まりやすい独特な地形「京都水盆」により、昔から水資源が豊富でした。

またここに湧く地下水「伏水」は、低温でも充分発酵する力をもつ適度なミネラルを含む中硬水。これが酒造りに最適であったことも、決め手だと伝えられています。

──御社では、伏水をビールやレストランの料理に使っていると伺いました。伏水が食事の味に与える効果について教えてください。

西田さん 水道水のようなカルキ臭がなく、素材の味を邪魔しないため、お料理に使っております。

水に含まれているミネラルは、舌ざわりやのど越しを決める成分です。バランスよくミネラルを含む天然水が、飲用水としておいしい水といわれます。

伏水の中硬水もミネラルバランスがよく、料理においても素材の持ち味をうまく引き出してくれるのでしょう。

特にだしのきいた煮物や京料理には、大変に適していると考えられます。

一人でも清酒ファンを増やし、日本酒文化を発展させていきたい

──御社が取り組まれている「日本酒をもっと身近に感じられる場の提供」についてお聞かせください。具体的にはどのような活動や施策をされていますか?

西田さん 京都初の地ビールレストラン「キザクラカッパカントリー」や、日本酒造りと地ビール造りが同時に工場見学できる「伏水蔵(ふしみぐら)」を作るなどしています。

地道な活動で清酒ファンを1人でも増やしながら、お客様と共に文化を理解し、発展させていこうと努力しています。

──地ビールレストランや工場見学に参加されるお客様にはどんな人が多いですか?

西田さん 一概に言うことは難しいですが・・・。

日本酒世代の中高年の方も多く見られますし、工場見学ができますので、中学高校などの学生さんも多く来られます。

酒処ということで他の酒蔵も含め海外からのお客様もいらっしゃいます。少しだけ、コロナ前のように戻ってきたと感じます。

──見学に来たお客様の反応はいかがですか?

西田さん 黄桜がビールを造っていることに驚かれる方が多いですね。やはり、まだまだ黄桜=日本酒のイメージが強いのだと思います。

ただ先に紹介したように、当社ではスパークリング日本酒・クラフトビール・ウイスキーなど色んな酒類のお酒造りにも挑戦しています。

日本酒 吟醸蔵
地ビール 充填ライン

──今後の展望をお聞かせください。

西田さん 酒造りは伝統ある文化です。しかし技術がどんなに進歩しても、伝統や文化をメーカーだけで守ることはできません。

黄桜は、お客様に親しみやすく手頃な商品をお届けするだけでなく、日本酒をもっと身近に感じられる場をご提供します。

そして、日本酒文化への理解を皆さまに深めていただきたいと考えております。

黄桜株式会社

〒612-8242 京都府京都市伏見区横大路下三栖梶原町53
TEL:075-611-4101(代表)
お客様相談室:075-611-2172(8:30~17:00平日のみ)

この記事の執筆者

海野 みき

取材・インタビューを中心に記事を執筆しているフリーランスのWebライター。SEO記事やレビュー記事の執筆も行っています。

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