第3世界ショップは海外生産者と共に歩み作り出す!「人」と向き合うコミュニティトレードとは

「第3世界ショップ」はフェアトレードを事業として、海外の生産者から製品や、原材料を輸入し、水出しコーヒーやチョコレートなどの飲食物や雑貨類に加工して国内で販売しています。

今回は、第3世界ショップの山崎 恵さんに、フェアトレードの内容やコーヒー農園と水源の関係などについてお話を伺いました。

第3世界ショップ

山崎 恵さん

日本で初めてフェアトレードを事業とする「第3世界ショップ」

第3世界ショップができたのは、創業者の片岡勝さんが1985年に北欧でフェアトレードに出会ったことがきっかけでした。

翌年、日本で初めてフェアトレードを事業とする第3世界ショップが、株式会社プレス・オールタナティブの輸入・販売部門として立ち上がりました。

フェアトレードとは、途上国で作られた作物や製品を適正な価格で継続的に輸入・販売する貿易の仕組みのことです。これにより、途上国の経済的に弱い立場にある生産者の生活向上を支援し、貧困問題の解決を目指しています。

引用元:第3世界ショップ 公式サイト

第3世界ショップでは、単にフェアトレードとして商品を輸入・販売するだけでなく、生産者と直接対話する「顔の見える関係」を築くことを最も大切にしています。

これには、生産過程を詳細に確認するという目的もあります。生産者の取り組み姿勢やポリシーに共感することで、互いの信頼関係を長く続けたいという思いが込められています。

第3世界ショップで取り扱われている商品は、オーガニックのコーヒーや紅茶などの飲料品、チョコレートやナッツなどの菓子類、スリランカのカレーペースト「カレーの壺」など、原料や製法にこだわった食品。

そして、インドの山羊革工芸品やミラー刺繍製品、フィリピンの手漉きの紙製品などのハンドクラフト品、ペルーのアルパカのニットなど多岐に渡ります。

個性的なアーティストが手がける限定パッケージ

引用元:第3世界ショップ 公式サイト

第3世界ショップの中でも、一押しの商品は限定アートパッケージの水出しコーヒーです。アートパッケージは「嬉々!!CREATIVE」の個性的なアーティストたちが手がけています。

コーヒーバックを一晩水に入れておくだけで、本格的なコーヒーを味わうことができるのが特徴です。常温程度の水でゆっくりと抽出することで、苦みが苦手な方でも飲みやすいマイルドな味わいのコーヒーです。

──まず、水出しコーヒーの限定パッケージを作成された「嬉々CREATIVE」さんについてお伺いします。どのような経緯でコラボレーションすることになったのでしょうか。

山崎 恵さん(以下、山崎さん)嬉々‼︎CREATIVE(キキ・クリエイティブ)」さんは、障害のある人が活躍するあらゆるクリエイティブ活動を行うアトリエ/福祉施設です。

「嬉々‼︎」のアーティストさんのイラストを使ったペンケースや可愛い袋などの商品を仕入れたことがあり、以前から知っていました。

引用元:嬉々‼︎CREATIVE 公式サイト

私たちの看板商品に、フェアトレード・オーガニックのチョコレートがありまして、20年以上ご愛顧いただいてるのですが、まだまだポテンシャルを感じていました。

このチョコレートをもっと多くの方へ、フェアトレードに関心がない方にも、届けたいという想いを持っていました。

そんな時に、嬉々さんとアート作品をパッケージにしてチョコレートを作ったらきっと可愛いですよねと、話が盛り上がり「では、ぜひ一緒にやりましょう」とお声がけいただいたのがきっかけです。

──「嬉々CREATIVE」さんの公式サイトにあるオンラインショップの商品は、どれもとても可愛くて素敵ですね。

山崎さん 可愛いですよね!パッケージに採用するアイテムが増えると、それだけ沢山のアーティストさんにもお金がいきます。

自分のパッケージが採用されることは、アーティストさんのモチベーションにも繋がります。採用されるように頑張ろうとしてくれて、良い循環になっていると思います。

私たちのチョコレートも、毎年パッケージの柄を変更しています。チョコレートとおそろいの柄で、ドリップコーヒーもありますよ。

──チョコレートから始まり、そこから色々な商品に発展していったのですね。

山崎さん そうですね。チョコレートは秋冬限定なので、1年を通してご利用いただける、紅茶や、コーヒーゼリーもあります。

水出しアイスコーヒーの生産地、イヴァンさんとの出会い

──水出しコーヒーを生産している「パロ・ブランコ農園」は、どのような特徴がある農園なのでしょうか。

山崎さん グアテマラにあるパロ・ブランコ農園は、高地の厳しい自然環境の中で有機栽培に取り組む農園です。

引用元:Google map

パロ・ブランコ農園では、有機認証のほかに、持続可能な農業の基準を満たした農園のみに与えられる「レインフォレスト・アライアンス認証」を取得しています。自然環境に配慮しながらコーヒー栽培に取り組んでいます。

──パロ・ブランコの生産者の方とはどのようにコミュニケーションを取られていたのでしょうか。印象的なエピソードがあれば教えてください。

山崎さん パロ・ブランコ農園の農園主は、現在3代目のイヴァンさんという男性の方です。イヴァンさんと私たちとお付き合いが始まったのはここ数年くらいなんです。

イヴァンさん
提供元:第3世界ショップ

そんな中、うちのスタッフが初めてパロ・ブランコ農園を訪れた時に、イヴァンさんがわざわざ空港まで2時間かけてスタッフを出迎えに来てくれたことがありました。

その日は飛行機の発着時間の都合もあり、我々のスケジュールはとてもタイトでした。それだとゆっくりランチする時間もないからと、なんとサンドウィッチとジュースまで用意してくれていたんです。

まだ関係の浅い私たちに対しても、親切にしてくださったのが、とても嬉しくて印象に残っています。

イヴァンさんは凄く気さくな方で、私たちがカメラを向けると、直ぐにカメラ目線でポーズをとってくれるんですよ。

自然な作業風景を撮ろうとしても、それに気づくと、すかさずカメラ目線をくれて。サービス精神旺盛でとってもお茶目な方なんです。

カメラ目線のイヴァンさん
提供元:第3世界ショップ

あとは、農園の現場監督のフアンさんという方にも、現地でお会いしました。

イヴァンさんの気さくなキャラクターもあってか、フアンさんともとても良い関係性を構築されていました。

コーヒー農園と水の関係性

パロ・ブランコの美しい農園
提供元:第3世界ショップ

──コーヒー農園の運営方法を教えていただけますか。

山崎さん パロ・ブランコ農園のコーヒーの木は、色んな種類の木が自然に生えている中に一緒に植えられています。

目が慣れてきたら、やっとどれがコーヒーの木なのかが区別できるようになってくるような感じなんです。

なので、コーヒー農園のメンテナンスというのはコーヒーの木だけに限らず、その土地の自然を丸ごと守っていかなければならないのです。

特に、パロ・ブランコ農園では有機栽培をしており、化学物質を極力使わないように努めています。

化学物質を使わずに、あくまでも今ある生態系の中でコーヒーを栽培することは、結果的に山の水源の質を守ることにも繋がっていると思います。

──自然を壊すことなくコーヒーを栽培する取り組みは素晴らしいことですね。

山崎さん そうですね。あと、コーヒーの実は赤い色をしていて「コーヒーチェリー」と呼ばれているのはご存じですか。コーヒーチェリーを剥くと、中にコーヒー豆が入っているんです。

コーヒーチェリー
引用元:第3世界ショップ 公式サイト

コーヒーチェリーから豆を取り出す1つのやり方として、コーヒーチェリーを剥いてから、コーヒー豆を取り出して、それを水で洗った後に乾燥させる方法があります。

実は、コーヒー豆を洗う工程ではとても多くの水を使います。設備や状況にもよりますが、例えば、1キロのコーヒー豆を洗うのには、40リットルもの水が必要になるそうです。

しかも、コーヒー豆は酸性なので、洗った後の水は酸性になってしまいます。それを、そのまま排水として捨ててしまうのは、環境によくないという問題があるんです。

パロ・ブランコ農園では汚れてしまった水を、色々な装置を使ってろ過して綺麗にし、なるべく中性に戻してから排水として流すという取り組みをしています。

汚れた排水
提供元:第3世界ショップ

──SDGsの目標15「陸の豊かさを守ろう」を体現されているのですね。

山崎さん そうですね。あとは目標6の3(※)にも繋がってきますね。特に、有機栽培を行うことで化学物質を使わないよう勤めているので、その面で大きく寄与できていると思います。

※SDGs目標6:「安全な水とトイレを世界中に」
※SDGs 目標6の3:2030年までに、汚染を減らす・ゴミが捨てられないようにする・有害な化学物質が流れ込むことを最低限にする・処理しないまま流す排水を半分に減らす・世界中で水の安全な再利用を大きく増やすなどの取り組みによって、水質を改善する。

生産地から届く、商品本来のおいしい味を届けたい

取材時に頂いた商品

──御社では水出しコーヒーに限らず数々の魅力的な商品を販売されています。商品を企画する際に心がけていることはありますか。

山崎さん 私たちに届く食品が、基本的に全て美味しいというのが商品の魅力に一番繋がっていると思います。どの生産者の方も、とても真摯に物作りをされていて、素晴らしい物を送ってくださいます。

食品自体がそもそも美味しいので、私たちは加工の段階で、添加物などの余計な物を入れず、シンプルに素材の良さそのままを届けられるように心がけています。

例えば、「黒糖ココア」はココアと黒糖しか入っていません。「ほうじ茶ラテ」もほうじ茶と脱脂粉乳と加工黒糖しか入っていないんです。生産者さんから届いた美味しい食品を、なるべくそのまま手にとっていただきたいのです。

パッケージに関しては、昔はシンプルな物がほとんどでした。ただ、それだとせっかくの良い商品も、購入者の方の目に止まらないことも多く、もったいないと思いました。

今のようなアートパッケージのように可愛いデザインにすることで、まずは手にとっていただける物を増やしていくようにしています。

編集部
村上

黒糖ココアはほどよい甘さ。お湯を入れるだけで、こんなに美味しいココアが飲めるなんて・・・。
普段もココアを飲んでいますが、インスタントとは思えないほど美味しいです!

編集部
渡部

ほうじ茶ラテは、香りが漂ってとてもリラックスできます。
余計な添加物を入れていないと聞き、安心して飲めますね。すごく美味しかったです。

顔の見える生産者と問題に取り組む「コミュニティトレード」

引用元:第3世界ショップ 公式サイト

──御社は「フェアトレード」事業をされていますが、「コミュニティトレード」とはどのようなものでしょうか。

山崎さん まず改めてフェアトレードとは、途上国の経済的に弱い立場の生産者の生活向上を目指して、途上国で作られた作物や製品を適正な価格で継続的に輸入・販売する貿易の仕組みのことです。

例えば、30年以上お付き合いのあるフィリピンの生産者は、手漉き紙製品が現地の技術力ではなかなか滑らかな紙ができずに困っていました。

そこで、私たちは福井県の紙すき職人さんと共に、専用の機材を持ってフィリピンを訪れ、現地で一緒に商品開発を行いました。

このように、生産者と顔を付き合わせて一緒に問題に取り組む姿勢を、私たちはずっと大切にしてきました。

しかし、だんだんと自分たちの事業の範囲が、フェアトレードの言葉では括れない領域にきたと感じてきました。

農薬や化学肥料には頼らずに、命を大切にする持続可能な農業に取組む、台湾の林文経(リン・ウェンチン)さん、林和春(リン・ホウチュン)さん親子がいらっしゃいます。その2人の気持ちと取組に共感し、25年以上、烏龍茶を取り扱い続けています。

自分たちの事業を「フェアトレード」に留まらせようと思えば、できることの幅が狭くなってしまいます。

私たちのしていることは、最終的に「地域のどこかの問題を解決すること」に繋がってるのだということに気づきました。そこから、コミュニティ(地域)という言葉を添えて、「コミュニティトレード」と呼ぶようになりました。 

──生産者と販売者という関係性は単純な関係性を超えて、そこにはコミュニティがつくられていたのですね。コロナ渦では、生産者の方とどのようにコミュニケーションを取っていたのでしょうか。

山崎さん 普段はメールでのやりとりでしたが、LINEのようなチャットアプリも利用していました。

コロナ渦で、なかなか現地に行けない分、オンラインミーティングをすることもありました。時間差もあるので、オンラインミーティングができる生産者も限られてきます。

手段は様々あれど、生産者と密にコミュニケーションをはかり、一緒に作り上げていこうという思いは常に持ち続けていました。

海外の文化や多様性を伝えていくことが、私たちのできる一歩

引用元:第3世界ショップ 公式サイト

──海外の生産者の方とやりとりをする中で気をつけていることはありますか。

山崎さん 私たちは、生産者の方と長くお付き合いを続けていくことを大切にしています。

ただ色々な国の方がいて、それぞれの文化や状況が異なるので、一律のやり方やマニュアルはないんですね。

私たちは、これまでも生産者に対して、個々に向き合ってきたという歴史があります。

効率的ではないかもしれませんが、このスタンスは敢えて変えずに、生産者ごとに個別にアプローチして、個別のサポートをこれからも続けて行きたいと思っています。

それは結局、生産者一人一人との繋がりを大切にするということだと思うからです。

──最後に、御社の今後の展望について教えていただけますか。

山崎さん 私たちが扱っている商品は輸入品が多いので、海外の文化や面白みを伝えることができるような商品を扱って行きたいと思っています。

多様性を受け入れることは、お互いの関係を深めていくために、とても重要なポイントです。生産者の気持ちに寄り添うことが、私たちができる世界平和に繋がる第一歩かなと思っています。

第3世界ショップ

〒153-0062 東京都目黒区三田2-7-10-102
TEL:03-3791-2147
FAX:03-3711-8550

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