見て食べて遊んで癒される!|蔵王温泉観光協会が語る「蔵王温泉の楽しみ方」

蔵王温泉は、日本有数の酸性泉として「美肌効果」や「殺菌効果」が高いことで有名です。また、女子ジャンプ大会が行われる地として、スキーのイメージも強いかもしれません。

しかし、蔵王温泉の魅力は温泉やスキーだけにとどまりません。花や緑、紅葉、樹氷といった自然は季節を問わず楽しめます。ロープウェイで行く山頂からの眺めや蔵王でしか食べられない名物料理も必見です。

そこで今回は「蔵王温泉」について、温泉についてはもちろん、蔵王の歴史や訪れてほしい絶景スポット、名産やイベントなどを蔵王温泉観光協会の黒崎さんにお伺いしました。

蔵王温泉観光協会

黒崎 広宣さん

「蔵王温泉」のプロモーション活動を支える

──最初に蔵王温泉観光協会様の活動内容を教えてください。

黒崎 広宣さん(以下、黒崎さん) 蔵王温泉観光協会は、135ほどの地元の事業者から会費をいただいて運営をしている協会です。

主な活動内容は、観光客の誘致のためのPRやプロモーション活動、街並み整備やイベント企画などになります。具体的には、新聞やWebへ広告をうったり、冬場のスキーのツアーを作ってもらうために首都圏の旅行会社へ売り込みをしたり、商談会へ参加をしたりしていますね。

 ──昨今インバウンド需要も回復しつつありますが、蔵王温泉観光協会様としてされていることはありますか?

黒崎さん 海外からは現在、特に台湾や、タイなどの東南アジアの方がよく来てくださっています。

それらの国で開催される「旅行博」へパンフレットを展示するなど、海外へ「蔵王温泉」の宣伝もしていますね。 

日本有数の酸性泉は「殺菌効果」と「美肌効果」抜群

──蔵王温泉の歴史について教えてください。

黒崎さん 蔵王温泉の歴史は、西暦110年にまでさかのぼります。

日本武尊が蝦夷征伐に来たときです。武将の吉備多賀由は、毒矢にあたってしまい苦しんでいました。そんなとき、温泉を発見したため入浴してみると、すっかり全快したのだとか。

そこで、感謝の気持ちを残して、「高湯(多賀由)温泉)」と名付けたのが始まりだと言われています。

現在は、昭和25年に蔵王山が観光地百選山岳の部で一位に選ばれたのを記念して、「蔵王温泉」と名を改めています。しかし、それまでは千年以上にわたって「高湯温泉」として親しまれてきたんです。福島の高湯温泉、山形の白布温泉と並んで、「奥州三高湯」とも呼ばれていますね。

──毒矢があたった身体が全快した、という言い伝えには驚きました。やはり「蔵王温泉」には、傷を癒すような効能があるのでしょうか?

黒崎さん そうですね。解毒作用や殺菌作用が強いという特徴があります。

あせもや虫刺されには効果てきめんですし、水虫にも効くそうです。このように殺菌効果が高いのは、酸性が非常に強いから。pH/1.25〜1.6という、全国でもトップクラスの酸性泉で、レジオネラ菌も生息すらできません。

ただ、酸性が強いからこその注意点もあります。

例えば、脂分が落ちやすいため、あまりごしごしこすってはいけません。実は、温泉のお湯で石鹸を泡立てようとしても、石鹸はアルカリ性なので溶けてしまいます。それほどまでに酸性が強いんですね。皮膚が弱い方は、少しずつお湯をかけて様子をみるなど、慎重に入った方が良いと思います。

また、温泉が目に入ると非常に痛いですし飲泉はできませんので、小さい子どもは注意が必要です。貴金属をつけたまま温泉につかると黒く腐食してしまうため、アクセサリー類は必ず外すようにもお願いしていますね。

──傷を癒すほか、強酸性だからこその効果はありますか?

黒崎さん なんといっても「美肌」になる効果ですね。強酸性なので、表皮を殺菌して皮膚を強くしてくれます。同時に血液促進効果もあるので、肌も血液も若返るんです。

さらに、蔵王温泉には「アルミニウム」という成分も含まれているのですが、殺菌効果だけでなく、ダイエット効果もあるといわれていますね。

「五感」で楽しめる蔵王温泉

──美肌効果もあるのですね!そのような効果を求めて「蔵王温泉」につかりたいとき、どちらの施設がおすすめですか?

黒崎さん まず入っていただきたいのは、一度に100人くらい入ることもできる「蔵王温泉大露天風呂」です。「五感を刺激する渓流大露天風呂」と謳っているとおり、目でも耳でも鼻でも楽しめます。

どういうことかといいますと、この露天風呂のすぐ横には川が流れているんです。ですから、渓流のせせらぎや、野鳥のさえずりが聞こえてきます。5月の末ぐらいから聞こえてくる「蝦夷春ゼミ」の「しゃばしゃばしゃば」という鳴き声には、とても癒されますよ。

木に囲まれていますから、春には新緑、秋には紅葉が楽しめます。蔵王温泉独特の硫黄の臭いや、高原ならではのひんやりとした空気も、ぜひ体感していただきたいなと思います。

ただ、ゲレンデの中にあるため冬は営業していませんのでご注意ください。

──露天風呂なら、夜は星空も見えそうですね。

黒崎さん そうなんです。通常は平日17時まで土日祝日は18時までの営業なのですが、星空を体験してもらうために6~10月の土曜日には、夜21時まで入浴できるようにしています。

さらに、カンテラという明かりを設置していますので、幻想的な雰囲気を体験できるんです。

※お盆期間や、3連休に含まれる日曜日など、土曜日以外にも営業している日があります。詳細は営業カレンダーをご確認ください。

──蔵王温泉大露天風呂以外には、どんな温泉施設がありますか?

黒崎さん 日帰り入浴施設では、先ほどお伝えした蔵王温泉大露天風呂の次に大きい露天風呂、「源七露天の湯」がありますね。

また、施設が充実した「新左衛門の湯」や、源泉が真下にあって湯船の底からお湯が沸いている「すのこの湯かわらや」があります。かわらやはどこも経由していない一番ピュアな温泉だといえます。

その他にも共同浴場が3か所あるのですが、その共同浴場と大露天風呂には、洗い場がありません。温泉の酸性が強く皮膚の表面の脂を流してくれるので、かけ湯をして入浴するだけでさっぱりできるんです。

──蔵王温泉の周辺で、眺めの良い場所などはありますか?

 蔵王中央ロープウェイトリカブト山頂駅展望台や、蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅舎の眺めは絶景ですね。蔵王ロープウェイの頂からは、天気が良い日であれば「鳥海山」という秋田県との境の山まで見えるかもしれません。

また、樹氷高原駅の「百万人テラス」には、ソファーやデッキチェアがありますので、くつろぎながら遠景を楽しむことができます。

鴫の谷地沼は、1周1時間程度で歩けるくらいの小さい沼なのですが、春は水芭蕉と桜、横倉瀧、秋は紅葉が楽しめますね。

昼も夜も輝く樹氷を見てほしい

──樹氷高原駅の百万人テラスのお話もお伺いしましたが、樹氷まつりも有名ですよね。

黒崎さん 蔵王の樹氷は、例年12月末ごろからできはじめ、1月後半に見ごろを迎えて、3月の初旬からなくなっていきます。ですから、12月後半から3月の頭が樹氷を見られる期間ですね。

それらの期間中にさまざまなイベントを実施するのですが、それを「蔵王樹氷まつり」と呼んでいます。

具体的には、昼間に樹氷を見に行くツアーだけでなく、夜の樹氷を見に行けるツアーもあります。夜は樹氷にカラフルなカクテルライトを当てるので、昼間の白銀の輝きとはまた違った雰囲気が楽しめるんです。

さらに、基本的に樹氷は地蔵山頂駅から見るのですが、実は山頂の樹氷よりも中腹の樹氷の方が大きくなりやすいんです。大きいものには、5mをこえるものも。それらの大きな樹氷は、暖房付きの「ナイトクルーザー号」に乗車すると見ることができます。

──樹氷まつり以外にも、イベントはありますか?

さまざまなイベントをしています。例えば、「1,000人松明滑走」というイベントでは、参加者の方にLEDライトを2つずつ配り、両手に持って滑ってもらいます。それによってライトアップされたゲレンデと、あわせて打ち上げられる花火のコンビネーションは、ぜひ見ていただきたいですね。

また、花火は女子ジャンプ大会でも打ち上げます。

ソリなどができるスノーパークも用意していますので、スキーやスノーボードがまだ難しい小さなお子さまでも楽しめますよ。

ジンギスカンの発祥の地は蔵王?

──イベントも盛りだくさんなんですね。蔵王温泉周辺でしか食べられない名物も教えてください。

黒崎さん 稲花餅(いがもち)という、添加物を加えない米粉で作ったお餅にあんこを入れ、色つけをした米粒をあしらったシンプルなお餅があります。その日のうちに食べないと硬くなってしまうため、ここでしか食べられない名物だといえるのではないでしょうか。

また、蔵王の名物にはジンギスカンもあります。

昭和初頭まで山形は羊毛が盛んな地だったのですが、戦後ナイロンなどの化学繊維の普及により需要が減ってしまいます。生活が苦しくなった羊毛農家を救うため、当時の日本綿羊協会会長は「羊料理を推奨しよう」と考えました。

そこで、モンゴルで目にした「鉄かぶとで羊肉を焼いて食べる」様子をもとに「鉄かぶと型鍋」の開発がなされ、現在の「鉄鍋ジンギスカン」スタイルが生まれたんです。

その後、昭和34年に蔵王で実施された冬季国体で「鉄鍋ジンギスカン」がふるまわれたことで、全国に広がったとされています。ですから一説には、蔵王温泉がジンギスカンの発祥だと言われているんです。

冷凍の薄いお肉ではなく生肉を焼いて食べること、驚くほど臭みがないこと、各お店独自のたれを楽しめることが、蔵王のジンギスカンの特徴ですね。

もう1つの名物として「からから汁」もお伝えしたいと思います。豚汁ベースに酒粕と豆板醤を加えたもので、寒い冬に暖まってもらうために蔵王の女将さんたちが考えた食べ物なんです。それを気に入って「からから汁」と命名したのは、岡本太郎先生です。

四季折々の魅力を発信していきたい

──今後、蔵王温泉観光協会様では、どのようなことに力を入れていきたいですか?

黒崎さん どうしても「蔵王」というと、冬のイメージが強いですよね。

やはり、4月から大体11月までのグリーン期と言われる期間は、冬に比べるとお客さまが少ないんです。しかし、蔵王温泉はどの季節にも魅力があります。

例えば春ですが、蔵王は標高が900mぐらいの場所にあるので、桜はゴールデンウィークごろに見ごろを迎えます。「今年はお花見をしそびれてしまった・・・」という方にはぜひ来ていただきたいですね。

夏も涼しいので、アクティビティや夜の露天風呂が楽しめます。もちろん秋の紅葉も見逃せません。

このような魅力をもっとお伝えしていき、いつでもお客さまに来ていただける温泉地を目指したいと思っています。

蔵王温泉観光協会

〒990-2301 山形市蔵王温泉708-1
TEL:023-694-9328
FAX:023-694-9327

この記事の執筆者

朝野 めぐみ

会社員をしながら、取材ライターとしても活動中。環境問題やSDGsの取り組み、IT関連から不動産まで、幅広い分野にて取材・執筆をおこなっている。

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