旭川市といえば「旭山動物園」「旭川ラーメン」などで有名な観光地、という印象を抱く方も多いのではないでしょうか。
街の中を4つの川が流れている「川のまち」、家具製造業が発達した「デザインのまち」でもあり、他にもユニークな側面をたくさん持つ魅力あふれる地方都市です。
今回、一般社団法人 旭川観光コンベンション協会(以下、旭川観光コンベンション協会)様にお話を伺いました。
冬、旭川市の街中で楽しむ方法とは?
──旭川といえば観光地として有名ですが、とても寒いところというイメージも強いですよね。
旭川観光コンベンション協会様(以下、協会スタッフ)そうですね。旭川で明治35年(1902年)1月25日に記録した-41℃は、今でも日本の最低気温です。今年も先日1月21日には江丹別地区で−29.2℃を記録しました。
冬は積雪で交通機関が混乱することもありますが、アイスバーン(凍結している道路)に気をつけながら、皆車で移動しながら元気に暮らしています。
──冬に観光で旭川にいった場合の交通手段はどうしたらいいのでしょうか?
協会スタッフ レンタカーなどでの冬道運転が苦手な人には公共交通機関でも移動できますし、観光タクシーもおすすめです。
決められたルートでも、お客様の希望に合わせたルートでも回ってくれますよ。スキー場へはシャトルバスの運行もしています。
本州などから来られた方にとってはなかなか体験できない寒さかと思いますが、ぜひそれも楽しんでほしいです。冬の路面はペンギンのような歩き方で歩くと意外と滑りにくいですよ。
また、街中ではロードヒーティング(道路の融雪・凍結防止のため路面の温度を上げる設備)になっているところもあります。ただ、もちろんそうではない場所や坂道もあるので、雪道を歩き慣れていない方は靴に装着する滑り止めを事前に用意しておくと良いと思います。
──靴に着ける滑り止めがあるとは知りませんでした!ちなみに駅周辺でも、冬のアクティビティを楽しめる場所があるそうですね。
協会スタッフ 旭川駅南側に直結している「あさひかわ北彩都ガーデン」は、スノーチューブや歩くスキー、スノーシューを無料で楽しむことができます。
自分で道具を持っている人はもちろん、レンタル(アクティビティセンター旭川駅:東改札口向い)も可能です。市民の方も観光で来られる方も、お子さんから大人の方まで楽しむことができますよ。
また、駅前では1月中旬~2月中旬限定で「ゆっきリンクASAHIKAWA」という無料で遊べるスケートリンクもオープンしています。今はイルミネーションも点灯しているので、それを見ながらスケートを楽しむのもおすすめですよ。
協会スタッフ 駅からは少し離れますが、市内では花咲スポーツ公園や常磐公園などでも、スノーチューブや雪上パークゴルフなどを楽しむことができます。
──旭川の冬はたくさん楽しめる場所があっていいですね!「旭川冬まつり」についても教えていただけますか。
協会スタッフ 冬の大きなイベントの一つです。中でも雪像は国内で最も大きなものとして有名で、今までの大雪像のいくつかは、ギネス記録にも登録されているんですよ。
大雪像や氷のロング滑り台などは自衛隊の方が製作してくれています。また、冬まつり期間中は「氷彫刻世界大会」も同時開催しており、こちらは製作段階から見ることができます。2024年は2月7日(水)から2月12日(月・祝)に開催されます(例年2月に開催)。
いろんな顔を持つ街、旭川
──「川のまち」「デザインのまち」と呼ばれる理由について教えていただけますか。
協会スタッフ 旭川は市内で大雪山系に源を発する石狩川・忠別川・美瑛川・牛朱別川という4つの1級河川が合流する「川のまち」です。伏流水を含め良質な水に恵まれているため、明治以降の開拓から酒造りや米作りが盛んで、一時は20もの酒蔵があったこともありました。
この地域で生産されている農作物を含む食全体が、この豊かな水資源の恩恵を大きく受けていると言えます。
協会スタッフ この「川」の恵みを活かそうと、旭川市は現在「かわまちづくり」(正式名称:旭川駅周辺かわまちづくり)という取り組みも進めています。水辺を周遊するサイクリング・フットパス※コースの設定や、水辺空間での新たなイベント・アウトドア利用など、川を利用した地域活性化の仕組みを整えようとしているところです。
「フットパス」とは、イギリスを発祥とする『森林や田園地帯、古い街並みなど地域に昔からあるありのままの風景を楽しみながら歩くこと【Foot】ができる小径(こみち)【Path】』のことです。
引用元:日本フットパス協会「フットパス」より
協会スタッフ 旭川地域は豊かな森林資源にも恵まれていたことから、家具製造業が発展し、東京以北では最大の家具産地となりました。家具の付加価値を高めるための業界を挙げたデザイン力向上の取り組みが、他産業(業種)にも好影響を及ぼしながら、旭川は今、「デザインのまち」づくりを目指しています。
旭川市は2019年にユネスコ創造都市ネットワークのデザイン都市に認定されています。市内には旭川家具・クラフトの制作を体験・購入できる旭川デザインセンターという施設があり、6月には「ASAHIKAWA DESIGN WEEK」という大きなイベントも開催されています。
2023年はそのイベントに合わせて、北彩都ガーデンの鏡池周辺でカヌー、サイクリング、乗馬体験ができるイベントも同時に開催しました。他のイベントの時にも同様に、アクティビティ体験型のイベントを組み合わせて開催することがあります。
──本当にたくさんのイベントがあるのですね!他にはどのようなものがあるのでしょうか?
協会スタッフ 毎年6月には2つの音楽イベント「北海道音楽大行進」と「旭川ミュージックウィーク」が開催されています。
「北海道音楽大行進」は、北海道内の幼稚園・保育園の子どもから小中高大までの学生たち、そして一般の楽団の方が皆、楽器を演奏しながら市内を歩くという大きなイベントです。90年以上の歴史があり、旭川で生まれ育った人にとって「北海道音楽大行進」は誰もが記憶しているイベントです。
「旭川ミュージックウィーク」は2022年から始めた比較的新しいイベントですが、期間中はプロからアマチュアまでたくさんのミュージシャンの方々が旭川駅北広場や平和通買物公園などで演奏を繰り広げます。
この他にも、旭川では昔から優秀なピアニストや声楽家などを輩出しており、実は旭川市は「音楽のまち」とも言われているんですよ。
ここでしか味わえないグルメとバリアフリー文化
──本当に、とても楽しそうな街ですね。旭川ならではのおすすめグルメはありますか?
お酒や旭川ラーメン、塩ホルモンにご当地アイスなど、本当にたくさんありますよ。地元ならではというと、「新子焼き」という若鳥の半身揚げがおすすめです。
また、「釜蒸し蔵」というしっとりした黒糖饅頭があるのですが、保存料を使用しないため消費期限がわずか3日しかありません。オンラインでも購入出来ないので、ぜひお店に足を運んで召し上がってみてほしいですね。
老舗醤油メーカーの日本醤油工業の直売店で販売している「しょうゆアイス」も美味しいのでおすすめです。味は醤油ミルクと醤油あずき、桜花しょうゆの3種類。どれもしょうゆを使ったアイスです。甘い中にほんのり醤油の風味があり、ちょっと癖になりますよ。
協会スタッフ また、「谷口農場」の甘酒もおすすめです。特別栽培米「ゆめぴりか」とそのお米から作った米糀、大雪山の伏流水、砂糖・アルコールは加えず糀菌の発酵で作られており、甘さ控えめで飲みやすいですよ。トマト・いちご・ぶどうなどを使った甘酒もあります。
──ぜひ現地で味わってみたいです!また、旭川市はバリアフリーに関して積極的な街でもある印象を受けました。
協会スタッフ 旭川市内を走るバスの62%が、車いすに対応できるノンステップバスです。また、北海道全体では約800台近くのユニバーサルタクシーが走っている(※)そうですが、そのうちの106台が旭川市内のタクシーというデータもあるので、旭川は比較的障がい者の方々に優しいまちと言えるのではないでしょうか。
※参考URL:ユニバーサルデザインタクシーの導入状況
協会スタッフ 今、航空会社と提携したUniversalMaaS事業(障がい者、高齢者や訪日外国人など、何らかの理由で移動にためらいのある方が快適にストレスなく移動を楽しめる移動サービス事業)も進めており、各交通機関の一括サポート手配ができます。
また、車いすで走行できる道や傾斜を掲載したユニバーサルマップ事業も進めています。旭山動物園など、観光地によってはバリアフリーマップを発行しているところもありますよ。
また、カムイ大雪バリアフリーツアーセンターが、障がい者への理解と自立に向けて様々なイベントを開催する取り組みを積極的に行っており、市民と交流する機会も増えています。車いすで参加できる神輿は旭川夏まつりの風物詩にもなっています。
これから旭川を訪れる方に伝えたいこと
──現在、課題に感じていることについて教えてください。
協会スタッフ 長期滞在できる宿泊施設や、大型バスを受け入れ可能な飲食店の不足ですね。それをもっと充実させ、より多くの方に長く来ていただけるようにする必要があります。
旭川ー成田間でのLCCの就航や、旭川ー上海(浦東)線の新規就航も始まりました。これは一つのチャンスでもあると考えており、航空機の新規就航に伴う観光客の増加に対応できる受け入れ態勢の整備は急務です。
また、旭川といえば「旭山動物園」というイメージが強いかと思いますが、動物園を訪れた後の食事や観光、特に近年は体験型観光開発の必要性が高まっていることから、東川町や東神楽町といった旭川市周辺の市町と連携を図りながら、これまで以上に地域一体となって観光産業を推進させていきたいです。
──最後に、改めて旭川の魅力についてメッセージをお願いします。
協会スタッフ 都市と自然が調和していることです。特に、旭川市の駅周辺の環境の素晴らしさはぜひ体験してもらいたいです。
駅の北口は商業施設や飲食店など都市機能が充実する一方で、南口は出てすぐのところに一級河川の忠別川が流れ、緑豊かなガーデンがあり、遠くには大雪山を望むことができます。
川沿いを散策したりサイクリングをしたりすることもでき、ゆったり過ごすこともアクティビティを楽しむこともできる。そんなふうに、旭川駅の北口と南口では全く違う楽しみ方ができるということもおすすめしたい大きな理由です。
協会スタッフ 医療機関も充実している旭川は、とにかく住みやすく居心地が良い街だと思います。程よい都会の顔を持ちながら、自然が豊かで食べ物が美味しいことが最大の魅力です。
また、道都札幌にはJRで約1時間半(高速バスで約2時間半)で行くことができ、旭川空港は2018年に就航率99.7%を記録するなど、国内の他の空港と比べると気象等の影響をあまり受けない空港として有名です。
旭川の冬は寒いですが、パウダースノーよりもさらにシルクのようなきめ細かさの「世界最高水準のシルキースノー」が楽しめますよ。ぜひお越しください!
一般社団法人 旭川観光コンベンション協会
〒070-0035 北海道旭川市5条通7丁目 旭川 フードテラス2F
TEL:0166-23-0090
FAX:0166-23-1166
アクティビティセンター旭川駅
〒070-0030 北海道旭川市宮下通8丁目3−1 JR旭川駅東コンコース
TEL:0166-26-6665