大正14年創業の「神戸紅茶」は、食料品卸売業者からはじまりました。その後、昭和30年代から国内初の本格的な紅茶メーカーへと業態を変更。
今では、オリジナル製品の開発・販売からOEM商品の開発まで、さまざまな紅茶の魅力を引き出した商品の開発・販売を行っています。
今回は、神戸紅茶株式会社の広報担当の久保田陽香さんに、「神戸紅茶」独自の取り組みに関するお話をおうかがいしました。
神戸紅茶株式会社
久保田 陽香さん
広報担当
98周年を迎える「神戸紅茶」
──まずは「神戸紅茶」の歴史を教えていただけますか?
久保田陽香さん(以下、久保田さん) 弊社は大正14年に創業しました。はじめは紅茶を含む食料品卸売業者としてスタートしました。
今のように、紅茶を専門に扱うようになったのは、昭和30年代からです。国内初の本格的な紅茶製造会社として長い歴史があり、今年で98周年を迎えています。
今では大量生産もできる生産設備と、これまで培った技術と経験をもとに、OEMとしてプライベートブランドの紅茶作りのお手伝いもさせていただいています。
日本の“水”は、紅茶の美味しさを引き出す水
──紅茶の美味しさを引き出すには“水”も重要だと思いますが、実際はどうでしょうか? 水で紅茶の美味しさも変わりますか?
久保田さん 紅茶と相性が良いのは「軟水」です。
実際に軟水と硬水で別々に紅茶を淹れてみると、紅茶の水色(すいしょく:紅茶を抽出した液体)が全然違うのに驚きますよ。
軟水は、いわゆる紅茶の綺麗な色が出るのですが、硬水は黒っぽい色になってしまうんです。
茶葉本来の味の引き立ち方も違います。硬水だと固さを感じて飲みにくいのですが、軟水だと口あたりが良いのでスッと飲めます。
日本の水は軟水なので、水質が紅茶にとって最適な環境です。今は自宅にウォーターサーバーを導入している方も多いと思いますが、そちらも軟水が多いので紅茶本来のおいしさを楽しんでもらえると思います。
品質を保つプロフェッショナル「紅茶鑑定士」
──神戸紅茶の茶葉は世界中から輸入しているとおうかがいしました。具体的にどのような国から輸入しているのでしょうか?
久保田さん ダージリンやアッサムはインド、セイロンはスリランカ、ケニアの紅茶などを輸入しています。実際に紅茶の買い付け担当である「紅茶鑑定士」が現地に出向いて視察して、輸入量などを決めています。
──「紅茶鑑定士」という言葉を初めて聞きました。「神戸紅茶」独自のものでしょうか?
久保田さん はい、そうです。「紅茶鑑定士」とは、資格名とかではなく「神戸紅茶」の品質を守るためのプロフェッショナルに与えられた称号のことです。
社内に2名おり、彼らが買い付けも担当しています。
「紅茶鑑定士」は、「神戸紅茶」というブランドに最適な厳選した茶葉を選ぶ人たちです。「神戸紅茶」の品質は、この2人が支えているといっても過言ではありません。
紅茶のサンプルはクオリティーシーズンに届くので、そうすると彼らは毎日テイスティングをしています。
紅茶は同じ農園でも、毎年味が違うので必ずテイスティングをして仕入れを決めます。たくさん雨が降った年や、逆に雨が降らない年など、気候によって味も異なるんです。
例えば、A茶園で取れた茶葉でも、6月の1週目、2週目で取れた茶葉で味が変わります。なので、どの茶園の“どの時期のものがいいのか”まで見極めるのが大切なんです。
茶葉の鑑定には、「味」「香り」「水色」「お湯を入れる前の茶葉の形状」「お湯を入れたときの茶葉の開き具合」といったポイントがあります。
そういったポイントから、最良の茶葉を選ぶのが彼らの仕事です。
また買付は1年に1回だけなので、年間の販売を維持するために、どのくらいの量を仕入れるのかまで考える必要があります。ワインのソムリエのような繊細さと経営判断の両方が必要です。
「神戸紅茶」は長い歴史があり、ご愛顧いただいているお客さまがたくさんいらっしゃいます。お客さまを納得させる品質を維持するために、彼らは何年も修行を積んで、味も品質も理解しています。
10年以上前からSDGsに取り組む「神戸紅茶」
──「神戸紅茶」はSDGsにも取り組んでいるとおうかがいしました。その取り組みについて聞かせていただけますか。
久保田さん 「神戸紅茶」は、オーガニックやフェアトレードの紅茶を扱っています。
農薬や化学肥料などの化学物質を使っていない事を証明する「農産物有機JASマーク(※1)」は2008年に取得しました。
社会的・環境的・経済的基準を満たしたフェアトレードの認証マーク(※2)は、2006年に取得しています。
※1農林水産省|有機食品の検査認証制度
※2FAIRTRADE JAPAN|認証ラベルについて
SDGsは最近特に注目されていますが、弊社は10年以上も前から取り組んでいました。有機JASマークとフェアトレードの認証マークを両方取得している企業は珍しいかもしれません。
特に紅茶で有機というと品質の確保ができない上に、取り組むのが大変という背景があります。
しかし、現地を視察した紅茶鑑定士からも一生懸命働いてくれる人達を安い賃金で働かせることへの違和感があったそうでフェアトレードの取り組みを始めました。
──実際にお客さまのニーズも変化していますか?
久保田さん はい。OEMのお客さまからも環境へ配慮した商品開発の依頼が増えています。例えば、パッケージをリサイクルできる素材に変えたいという依頼や、ティーバッグの素材を土に還る生分解素材にしたいという依頼もありました。
実は、弊社は20年以上前からコットン素材のティーバッグを使用しています。紙の素材だと紅茶に紙の匂いがついて雑味が出てしまうためです。
茶葉の品質にこだわっているからこそ、ティーバッグにもこだわりたいという想いから、独自開発しました。そのため他社にはないコットン素材を使っています。
みなさまに「紅茶本来の美味しさを楽しんで欲しい」という所から、たまたま環境保全などの取り組みにもつながったというイメージです。
純粋に紅茶本来の美味しさを楽しんで欲しいという思いで製品開発をしているので、それに時流がついてきたという感覚がありますね。
紅茶に馴染みのない人でも楽しめる方法
──最近はコンビニで手軽に買えるなど、どこでもコーヒーを飲める時代となっています。紅茶に馴染みのない人も多いと思いますが、そんな人でも楽しめる方法はあるのでしょうか?
久保田さん 「ティータイム」という言葉があるように、ぜひ”紅茶を淹れる時間”を楽しんで欲しいです。
忙しい毎日の中で、茶葉をティーポットに入れて、お湯を注ぎ、紅茶をゆっくりとカップに注ぐ、そんな「淹れる」ところから紅茶を「飲む」時間までの“ティータイム”をゆっくり取ってホッとする時間にしてほしいと思います。
コーヒよりも手間がかかりますが、その手間も味わえるのが紅茶ならではの魅力だと思います。
紅茶は産地や茶葉などによってたくさんの種類があるので、色々と試しながら自分好みのものを見つけてほしいですね。
例えば、ダージリンだと春摘みと夏摘みの茶葉で味が全然違うんです。夏摘みの茶葉は、まさしくダージリンという味わいですが、春摘みの茶葉は緑茶のような爽やかさがあるんです。
紅茶を“マイボトル”でより美味しくする秘訣
マイボトルでも美味しい紅茶を楽しめる
──マイボトルを持ち歩く人も増えていますが、紅茶を持ち歩くときに美味しさを保つ秘訣などはあるのでしょうか?
久保田さん 紅茶を淹れる前にマイボトルそのものを湯煎して温めておくのをおすすめします。
もともと紅茶は100℃の熱湯で淹れることで茶葉がしっかりと開き、本来の美味しさが楽しめるものです。
なのでマイボトルを湯煎して高い温度にしておけば、紅茶を注いだ瞬間に温度が下がらず、美味しい紅茶をそのまま持ち運ぶことができます。
また蓋を閉じて、しっかりと“蒸らし時間”を作ることもポイントです。
「神戸紅茶」の製品には、必ず“蒸らし時間”の記載があります。その時間を守ることで紅茶そのものに香りが凝縮されて、より美味しい紅茶になりますよ。
神戸紅茶株式会社
〒658-0042 兵庫県神戸市東灘区住吉浜町16番地2
TEL:078-822-1001(代表)