日本一の大きさを誇る「富士山ラムネ」を販売。木村飲料が守り続ける日本のラムネ文化

昭和28年に創業した木村飲料株式会社は、創業70年間に渡り瓶入りの炭酸飲料の製造を続けてきました。

今や、静岡エリアのお土産として人気がある同社の商品。

今回は瓶入り炭酸飲料への思いについて、木村さんにお話を伺いました。

木村飲料株式会社

木村さん

戦後や高度経済成長期、激動の時代を生き抜いた

──まずは、貴社の沿革、成り立ちを教えてください。

木村さん 当社は、昭和22年に清涼飲料水の製造を開始。創業以来、瓶入り清涼飲料水の製造に専念してきました。

当時は戦後間もなく、とにかく物が無かったので作れば売れる時代でした。

今でこそ70周年を迎える当社ですが、当初は同業他社が複数ある状態だったんです。そんななか、有り金を叩いてなんとか機材を導入し、商売をスタートさせました。

木村さん 数十年したら、どんどん周りの企業は瓶入り清涼飲料水の製造から撤退し始めました。

というのも、当時は飲んだ瓶を返せば10円が戻ってくるシステムでしたが、国が豊かになるにつれそのシステム自体が薄れていってしまったんです。

そして市場は、より安く手に入るペットボトルや缶の時代に突入。

そうなると、当社のような小さな会社は大手工場には敵いません。数は圧倒的に少なくなったものの、やはり「ラムネは瓶の方が良い」という消費者に支えられながら事業を続けてきました。

昔は静岡県内を中心に納品していましたが、ラムネを作る企業はどんどん減ってしまい、現在は全国に納品するようになりました。

不純物のない、純水がおいしい炭酸作りのポイント

──飲料製造における水の大切さについて教えてください。

木村さん 一般的に、飲料水は軟水が良いと言われています。

日本の水は世界的にも珍しく軟水なんです。特に島田市の大井川は地下水が良く、井戸水から飲料水が作れます。

炭酸飲料は、さらに不純物の少ない「純水」が推奨されています。なぜなら、純水は中身が変化しにくく、味や匂いが変わってしまわないからです。

当社の使用している清涼飲料水は、大井川の井戸水を、ミネラル分を除去する装置で純水にしています。

また当社では、品質管理も徹底しています。FSSC22000(食品安全マネジメントシステム)の認証を取得しており、高い基準を満たした上で商品の出荷を行っていますのでご安心ください。

日本一の大きさを誇る、「富士山ラムネ」はお土産にも

──貴社のおすすめの商品について教えてください。

木村さん まずは、代表的なものは「富士山ラムネ」ですね。特徴はその大きさです。基本的にラムネは200mlですが、富士山ラムネは410mlと大容量。

この大きさは日本一(ラムネを販売しているのは日本と台湾くらいなので、おそらく世界一)なので、土地柄もあり「富士山」というネーミングをつけました。

ただ、売れ筋で言うと「富士山サイダー」の方が人気ですね。富士山サイダーは240mlで、その飲みやすさが人気のようです(笑)。

──貴社はすごく商品数が多いですが、多くの飲料を販売している理由について、こだわりなどを教えてください。

木村さん ラムネは時代の変化によって、今やスーパーやコンビニではなかなか売れません。コスト面では大手企業に勝てないですからね。

そこで目をつけたのは、お土産屋さんです。当社では、静岡県内にお越しくださる観光客をターゲットにユニークな商品を企画・販売するようになりました。

「しずおか茶コーラ」や「静岡サイダー」のほか、伊豆のお土産に「わさびらむね」というサイダーを作ったことも。

わさびの味にこだわりすぎて辛かったのか、人気は出ずすぐに終売になってしまいました(笑)。今はそのノウハウを生かして「WASABIジンジャーエール」を販売しています。

──すごいアイデアですね。

木村さん 売れるか売れないかを考えながら、これまでいろんな商品を企画してきましたね。

最近はコロナの影響で観光地も衰退していたので、新製品をほとんど出していません。今はコロナも落ち着いてきたので、新しい商品開発もしていきたいと考えています。

炭酸飲料は、ペットボトルや缶でも飲めます。むしろ瓶の方がコストはかかります。そんななかでも、「瓶で飲む炭酸はやはりおいしい」と言ってくださる方がたくさんいます。

瓶入り炭酸飲料を製造できる企業は年々減ってきていますが、これからもそう言ってくださるお客様に商品を提供し続けられるよう頑張っていきたいですね。

日本唯一!ラムネの歴史を学べる博物館

──貴社ラムネを楽しめる、清水ラムネ博物館の魅力を教えてください。

木村さん 清水ラムネ博物館は、エスパルスドリームプラザにあります。もともとはコンビニが入っていたのですが、たまたま当社のテレビ取材を見られたようで、お声がけいただきました。

せっかくであればラムネについて学べる展示もしたいということで、博物館と名付けました。

というのも、当社には創業以来ラムネ製造に関するさまざまな資料や展示物が保管されています。

既に製造を中止した企業から譲っていただくこともありました。ラムネの歴史について学べる日本唯一の場所になっているので、ぜひお越しいただきたいです。

博物館ではもちろん、当社のラムネも取り扱っています。展示を楽しんでいただいた後には、ぜひ気になるラムネを飲んでみてください。

同業同士が手を取り合い、この火を消さないように

──最後に、今後の展望について教えてください。

木村さん 1953年には2300社あるとされていたラムネ製造の企業は、今や34社のみ。

現在ラムネ協会の会長を、当社の社長である木村英文が務めています。

そこで話しているのは「この火を消さないこと」。

そのために、同業同士でも手を取り合ってなんとか生き残れるよう画策しています。

ここ最近ではありがたいことに、海外輸出が伸びてきています。開けるときのプシュッという音が物珍しそう。

安定供給のためにも、製造拠点の近代化やビー玉製造などへの設備投資に力を入れていきたいですね。

木村飲料株式会社

静岡県島田市宮川町2429
TEL:0547-35-1507 (直営店舗) 
FAX:0547-35-1154

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