百年前の水で造られる酒とは。金沢最古の酒蔵、福光屋

1625年創業の福光屋は、金沢で最も長い歴史を持つ酒蔵。「恵みの百年水」と契約栽培米によって酒を醸す純米蔵です。

現在では長年培ってきた米醗酵技術を生かし、化粧品や食品開発にも取り組み、日本文化としての日本酒を国内外に発信しています。

今回は、企画広報室長 兼 健康美事業部長の岡本亜矢乃(おかもとあやの)さんにインタビュー。福光屋の酒造りや歴史、商品の特徴などについてお話をうかがいました。

株式会社 福光屋

担当者 岡本亜矢乃さん

企画広報室長 兼 健康美事業部長

1999年に美術大学を卒業後、金沢市内の百貨店に入社し、ビジュアルマーチャンダイジングなどを担当。2007年に福光屋へ転職し、商品開発やマーケティング、広報などに従事。2013年からは、企画広報室長、2022年からは、健康美事業部長としてスタッフマネジメントにも取り組む。

その水は、百年の時をかけて酒蔵まで辿り着く

金沢大学理学部の調査により、福光屋の水は百年ものであると判明。
まだ環境汚染がされていない一世紀前に降った雨雪が、百年の時をかけて地中を流れ、今の福光屋の蔵に湧き出ている。

——最初に、福光屋の酒造りの特徴を教えてください。

岡本 亜矢乃さん(以下、岡本さん) 福光屋の酒造りのキーワードは「恵みの百年水」と「契約栽培米」、そして「職人魂」です。

酒は水と米という自然の恵みから造られます。
恵みの百年水は、その名の通り生まれて百年。霊峰白山の麓に一世紀前に降った雨が地中深くに浸み込み、幾重にも重なる地層をくぐり抜け、百年の歳月をかけて福光屋の蔵に辿り着きます。

その過程のなかで酒造りに最適な成分が溶け込み、酒の味わいを作り上げていくのです。
かけがえのない恵みの百年水があるからこそ、福光屋は創業以来、現在の地で酒を造り続けることができています。

酒米の最高峰を生み出す農家との共同創造

酒米の最高峰といわれる「山田錦」。兵庫県産は全国の約7割を占め、特に福光屋の契約栽培米でもある兵庫県南部エリアの山田錦は、毎年の鑑評会で優秀な成績を収める。

——契約栽培米については、どのようなこだわりがあるのでしょうか?

岡本さん 福光屋では、1960年から「兵庫県多可町中区」の農家と契約栽培をおこない、ともに土づくりから取り組んでいます。
そこは酒米の最高峰といわれる「山田錦」の発祥の地。今では長野県木島平で「金紋錦」、兵庫県出石で「フクノハナ」、富山県福光と石川県白山で「五百万石」を契約栽培しています。
それぞれの酒米の個性を納得いくまで見極め、仕込みによって使い分けています。

こうした自然の力を発揮できる最適な土壌があれば、多少の気候変動にも負けず立派に育ちます。稲が気持ち良く育つ環境を整えるために、知恵と工夫を尽くす職人魂があるのです。

職人魂を貫く、酒造り

酒造りの「しぼり」の様子。ほんの一日タイミングがずれただけでも酒の味は大きく変化します。酒が最高に美味しくなった瞬間、タイミングを逃さず搾ります。

——自然の恵み、そして職人魂によって純米酒ができているのですね。

岡本さん はい。職人魂は酒の仕込みにも宿っています。毎年冬になると、酒蔵では職人たちにとって一瞬も気を抜けない仕込みがはじまります。

酒造りの土台である水と米に、麹や酵母などの微生物が交わり、酒は醸し出されます。
職人の役割は、その自然の摂理をうまく働かせること。麹や酵母の絶妙な変化をとらえ、表情をみて、香りをかぎ、味をみて、感触を感じ、音を聴く……。

そうして、酒造りの主役ともいえる微生物が気持ちよく活躍できるよう、知恵と工夫を惜しまず、自然の力を最大限に引き出します。

職人たちは精神を集中させながら、自然の摂理と真正面から向き合う。
酒造りは自然の営みだからこそ、機械で置き換えることは到底できません。人の手による伝統技術があってこそのものなのです。

伝統は革新の連続なり。13名の当主によって進化を遂げた

オーガニック純米酒の「禱と稔(いのりとみのり)」。
古来日本人がすべての営みは自然の摂理の中にあり、神に禱(いのり)を捧げ、稔(みのり)を授かると考えてきたことに由来する。

——福光家の家訓である「伝統は革新の連続なり」について、詳しく教えてください。

岡本さん 創業以来、13名もの当主によって時代ごとに変化を遂げてきた福光屋。その歴史はたやすいものではありませんでした。大火事や感染症、租税、戦争……。

あらゆる時代の変化を受けとめながら、先人たちの経験や技術を守りつつ、創造と破壊を繰り返してきました。
時代に合った酒を世に送り出すというのは、先人たちの積み上げてきた努力の結晶なのです。

たとえば12代目の当主は、日本酒に「熟成」という概念がないことに疑問を抱きました。
ワインの名産地である欧州を訪れ、熟成は酒文化を支える大きな要素であるという思いを強めて帰国。日本酒の熟成について研究をはじめました。

そして、熟成に適した酒米の選定や栽培法に工夫を重ね、1969年には「三年熟成 福正宗 オールド」の発売に至りました。

その後も市場や顧客の多様化に対応するために、さまざまなコンセプトや味わいを持つブランド、商品を展開しています。

福光屋の酒ならではの特徴は、すべて純米造りであること。
そして、オーガニック純米酒の「禱と稔(いのりとみのり)」、「加賀鳶(かがとび)」。長期熟成純米酒「百々登勢(ももとせ)」、「瑞秀(みずほ)」、「初心(はつごころ)」を販売していることです。

他にも、添加物不使用の発酵ドリンクはアルコールを摂取できない方やお子さまにも支持をいただいています。

福光屋の「今」と「未来」

オーガニックコスメ「FRENAVA natural & organic」。有機栽培米を100%使用した醗酵由来のオリジナル原料とするオーガニックスキンケアシリーズ。

——最後に、今後の展望や読者の方へのメッセージをお願いします。

岡本さん 日本酒の伝統技術と先端技術を融合させた「Traditional Biotechnology(トラディショナル バイオテクノロジー)」の取り組みにも力を入れています。

オーガニックコスメ「FRENAVA natural & organic(フレナバ ナチュラル&オーガニック)」などの展開も実現できたので、今後は医療に近い分野でも貢献していきたいと考えています。
それと同時に、酒粕の廃棄ゼロやガラス瓶の高いリユース率、米の研ぎ汁の有効活用などの環境保全活動も継続していきます。

また、恵みの百年水は地域資源として汲み場を開放しています。近隣の方々に親しまれており、みなさん口を揃えて美味しさを絶賛されます。さらに著名なシェフやソムリエ、お茶の先生も利用されています。お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。

オンラインショップでもさまざまな商品を取り揃えております。百年水で醸造した福光屋の純米酒もぜひお楽しみください。

株式会社福光屋

〒920-8638 石川県金沢市石引二丁目8番3号
TEL:076-223-1161 (代表)

この記事の執筆者

志摩 若奈(しま わかな)

個人事業主として、取材や執筆、カウンセリングをおこなう。「自分と繋がる瞑想法®︎」を活用した、自己信頼や自己受容を育むセッションを提供中。お問い合わせはInstagramのメッセージまで。

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