【感動の伊豆稲取】温泉や天然海水浴場、キンメダイのほか肉チャーハンで話題沸騰

東伊豆に位置する「稲取温泉(いなとりおんせん)」は東京からの交通の利便性もよく、露天風呂に入りながら、コバルトブルーの太平洋を眺める光景に感動し、リピーターが増えています。

伊豆半島全体に温泉街は多いですが、稲取は情緒あふれる温泉街のひとつ。グルメでも稲取といえば、キンメダイといわれるほど「稲取キンメ」は有名。さらに、肉チャーハンも稲取が発祥です。

今回は、稲取温泉旅館協同組合事務局の村木友香さんに稲取温泉や周辺の魅力をうかがいました。

稲取温泉旅館協同組合 事務局

担当者 村木友香さん

職員

稲取温泉・・・静岡県賀茂郡東伊豆町稲取にある温泉。1月20日〜3月31日に開催される「雛のつるし飾りまつり」の発祥地で全国的にも有名。電車の場合、伊豆急行線伊豆稲取駅下車。車では東名高速道路沼津インターチェンジより国道136号、国道414号、国道135号などを経由。あるいは、西湘バイパス石橋インターチェンジより国道135号経由。

太平洋のブルーオーシャンを一望できる稲取温泉がSNSで話題沸騰

外国人観光客も立ち寄るように客足も回復

──稲取温泉の歴史と魅力からお願いします。

村木友香さん(以下、村木さん)  稲取温泉は、静岡県賀茂郡東伊豆町稲取にある温泉で開湯が1956年(昭和31年)と歴史が浅い温泉地です。泉質は、硫酸塩泉

お風呂屋を開業された方が、旅館に発展させたりしたことで温泉旅館がこの地で広まったようです。

高度成長時代からバブル期はかなり多くのお客さまがお越しいただきました。

昭和の記録が残っていないのですが平成元年から3年(1989年~1991年)にかけては、年間入湯者は70万~80万人にも及びます。

思い当たるとすると伊豆は、足を延ばしやすい地域だったということと当時は社員旅行が盛んであったり、農家の方が秋の収穫を終えひと休みできる10~11月ごろにお越しいただいたりと団体旅行でお越しいただくことが多かったことかと思います。

しかしその後の伊豆大島近海地震やバブル期後の景気後退の影響で、1994年~1995年(平成6~7年)の入湯者を調査すると、10万人近く下がっています。

※伊豆大島近海地震・・・1990年(平成2年)2月20日伊豆大島の西方約10kmを震源とするM6.5の地震が発生、東京都、静岡県、神奈川県、千葉県などの広い範囲で最大震度の4を記録したほか、大島町と南伊豆町で最大30cmの津波を観測した。

この時期から入湯者が徐々に減少し、2010年(平成20年)ごろには40万人を切るような数字でした。

最近の傾向としては団体客が減りましたが個人客が増えてきています。コロナ禍では厳しかったですが、数年前より台湾をはじめとする外国からのお客さまが増えています。

これは地元の観光協会が台湾のお客さま向けにリリースを行い、直接、台湾にうかがいPR活動を進めたことが実を結びました。

今回、コロナ禍も収まりつつあり、お休みしていたイベントも復活します。

稲取温泉の特徴として露天風呂付の部屋が多い

山にも近い稲取には山の上から海を見られる露天風呂付客室もある

──稲取温泉周辺のホテル・旅館などの宿泊施設も充実されていると思うのですが。

村木さん 本組合に所属している旅館・ホテルは16施設あり、そのほかにも民宿や個人で運営されている施設を合計すると、22施設あります。

各宿泊施設では、稲取沖や近海でとれたお魚をメイン料理として提供。最近は個人や少数でのお客さまが増えたことを反映し、自分たちのプライベートな空間を楽しめるよう、ゆっくりできる環境を整えています。そこで最近は露天風呂付のお部屋をつくる旅館もかなり増えています。     

──どのような方が稲取温泉への観光を楽しまれていますか。

村木さん 年齢的には高めの団塊の世代の方が中心ですが、SNSに積極的に取組んでいる旅館も多いためか若いカップルの方も多くお越しくださっています。

「稲取キンメ」という名称で稲取のキンメダイはブランド化(出典:一社東伊豆観光協会)

──稲取は名物といわれるお魚もありますね

村木さん 稲取といえば、キンメダイといわれるほど盛んな水揚げを誇っています。「稲取キンメ」という名前でブランド化しています。

この「稲取キンメ」とは稲取漁港で日戻り操業で水揚げされた一本釣りのキンメダイを指します。

一本釣り漁で丁寧に扱い、日戻り操業と船上からの水氷保存により品質を管理しています。

※日戻り操業・・・日の出から操業し、午後四時までに入港。

稲取では、約60隻の船が操業しており、たくさんの漁師が「稲取キンメ」を支えているのです。

各旅館やお食事処では、キンメダイ料理を活発に宣伝しています。料理方法では煮つけが一般的ですが、珍しいところではしゃぶしゃぶです。

また、稲取は、温泉のまちですが、古くから漁業でも栄えてきました。稲取漁港では毎週末(土日祝日)の朝8時から正午まで開催される名物の朝市を開いています。

稲取の新鮮な魚介類や農産物などを販売している稲取「港の朝市」

水揚げされたばかりの新鮮な魚介類や地元でとれた農作物、加工品などを販売しています。キンメダイの釜めしや粗汁が人気です。

稲取は、海に面していますが、山にも接しており、柑橘系の品種開発が進められています。温暖な気候と栄養分に富んだ土壌に恵まれ、たくさんの品種が栽培されています。

具体的には早生みかんに始まり、ぽんかん、はるか、清見オレンジ、ニューサマーオレンジ(日向夏)などさまざまな品種を10月から翌年5月まで収穫できるよう栽培中です。

肉チャーハンの聖地・稲取

話題沸騰!! 稲取のB級グルメ・肉チャーハン(Twitterより) 

──肉チャーハンは稲取が発祥の地と言われていますね

村木さん  稲取の肉チャーハンは、卵だけのシンプルなチャーハンの上に、肉や彩り豊かな野菜が炒められ「あんかけ」となってかかっている変わったチャーハンです。店によりダシや具材が異なっておりいろんなお店で楽しめます。

この稲取の肉チャーハンの評判は高く、平日土日問わず、並んでいる方も多いです。実は遠方からこの稲取の肉チャーハンを食べるだけに来ている方もいらっしゃいます。

おすすめグルメで言うと、肉チャーハン以外にもあります。     

藤辺製菓という手作りパン屋さんがあり、ここのドーナツは本当においしい。

このドーナツは中央の穴も含めて12~13㎝と大きい。揚げたドーナツにたくさんの砂糖をふりかけてある昔ながらのドーナツで、地元のスーパーでも限定で販売しています。

朝に焼いた、美味しいパンを販売しています!揚げドーナツが人気(出典:伊豆稲取温泉 港の朝市HPより)

自然のプールのような「磯Sea Garden IKEJIRI」に注目

ファミリー層で人気な「磯Sea Garden IKEJIRI」

──これから夏に向けてイベントも豊富になってきますね。

村木さん 夏になると海水浴シーズンになりますが、稲取は砂浜がない海辺のまちです。磯の潮だまりを岩で囲んで、自然のプールのようになっている「磯Sea Garden IKEJIRI」というスポットがあります。

ご家族で磯遊びを楽しまれるお客様が毎年多くいらっしゃいます。波の影響を受けにくく小さなお子様でも安心して海水浴を楽しめ、たくさんの海の生物を見ることができる、ファミリー向けの海水浴場です。

2023年の期間は、7月22日(土)~8月27日(日)。この「磯Sea Garden IKEJIRI」を活かし、稲取温泉で30年以上続いている夏恒例の人気のイベント「さざえ・あわびのつかみ取り大会」を7月29日から31日まで行います。

磯にさざえやアワビを撒いて、お子さんがもぐって採りその場で焼いて召し上がっていただくイベントです。対象は小学生以下のお子様で料金は1000円ですが、稲取温泉旅館協同組合加盟施設にご宿泊のお子様は無料でご参加いただけます。

大人気!!夏恒例のイベント「さざえ・あわびのつかみ取り大会」

他にも、夏のイベントだと花火大会があります。

花火大会は7月26日(水)~30日(日)、8月26日(土)~30日(水)まで計10日間にわたり行います。稲取温泉の旅館は海辺にあるところが多く、花火は打ちあがる場所が異なり、打上場所の近くで見ることもできますし、旅館の部屋から見ることもできます。

花火大会は10日間にかけて行う

夏の終わりになりますが、奇祭「どんつく祭り」が5年ぶりに復活します!9月30日(土)の夕方4時から夜9時にかけて行います。稲取に昔から伝わる夫婦和合・子孫繁栄・無病息災を神に祈願する祭礼です。     

──ほかの稲取の見どころはいかがでしょうか。

村木さん 動物園(動植物自然公園、サファリパーク)と遊園地が一緒になった「伊豆アニマルキングダム」という観光施設が有名です。特にホワイトタイガーをはじめ、ライオン、チーターなど猛獣系の動物が人気です。その他にもキリン、シマウマ、鹿などたくさんの種類の動物を見たり触れ合えたりします。

エサやり体験もできたりするのでお子様から人気のスポットです。

稲取は柑橘系の栽培が発展した地域と申し上げましたが、全国でも珍しい、みかんでワインをつくっている地域です。工場では無料でみかんワインの試飲や見学が可能で、宿泊施設では食前酒として利用されています。

稲取ではカフェを併設したミカン園「収穫体験農園ふたつぼり」もおすすめです。収穫したもぎたてのみかんを使って、生ジュースしぼり体験や、ジャムづくり体験なども楽しめ、施設隣接のカフェで休憩可能です。

施設は山の上にあり、無料送迎バスがあります。ただし今シーズンのみかん狩りは終了していて、次のシーズンは10月1日を予定しているとのことです。

カフェにあるテラスは高台なので、広い太平洋を見ながら、ひと休みできる楽しみもあります。実はこちらの施設はまだ知らない方が多いので、絶賛おすすめ中です。

みかんと太平洋の眺望を楽しめる「収穫体験農園ふたつぼり

──先ほどは夏のイベントをうかがいましたが、他の季節でのイベントにはどんなものがありますか?

村木さん 稲取温泉のイベントといえば「雛のつるし飾りまつり」です。毎年多くのお客様にお越しいただいております。イベント開始時期と同じ頃、伊豆大島では、島を彩る椿の花とともに、一足早い春の訪れを楽しむ島をあげての一大イベント「椿まつり」が開催されています。

実はこの「椿まつり」の時期にあわせて1月後半から2月にかけて、稲取から伊豆大島まで高速船を走らせていました。

この間、わずか30分!「椿まつり」の期間限定ではありますが、伊豆大島と稲取温泉界隈の観光が両方お得に楽しめることができたのです。     

※平成初期まで稲取~伊豆大島に向かう船は出ていましたが、現在は廃止で通常では航行していません。

稲取発祥の「のつるし飾り」とは?

「素盞鳴神社」での「雛のつるし飾り」は圧巻

──ところで稲取は、「雛のつるし飾り」発祥の地でもあるようですね。

村木さん ひな祭りの際に飾られる「雛のつるし飾り」発祥の地です。この「雛のつるし飾り」は江戸時代から伝わる風習でひな祭りの時、ひな段の両脇に輪飾りを飾ります。生まれてきた女の子の無病息災や良縁の願いを込めて母や祖母が手作りし、初節句に贈られます。母から娘へと代々受け継がれてきた手作りのつるし飾りは美しいです。

「ひなのつるし飾り」は期間中、「文化公園雛の館」「素盞鳴神社(すさのおじんじゃ)」などで見ることができます。

素盞鳴神社・・・地元では「天王さま」として慕われている、牛頭天王と同体とされ、天照大神の弟・スサノオノミコトが祀られております。

絶品料理 キンメダイの煮つけやみそ漬けはお土産に最適

稲取で外せないのがキンメダイの煮つけ(出典:海一望 絶景の宿 いなとり荘)

──お土産はどういったものが多いのでしょうか。

村木さん やはり海産物、とりわけキンメダイがメインですね。キンメダイの煮つけやみそ漬けを購入され、ご自宅で楽しまれる方が多いです。

柑橘系ではオレンジジャム、サブレとさまざまな商品が開発販売されています。

今、「ミセスこらってぃ」という名称で農家の奥さまが集まり農園で収穫された果物や野菜をそのまま出荷するだけでなく、新たな商品やレシピを生み出し消費者に提供する活動をされています。

女性の方中心に人気があるのが「ドライフルーツ」蒸し暑い時にこれをフレーバーティーなどにして飲むと暑さを忘れ、爽やかな感覚が体内に入ります。

暑さを忘れるドライフルーツたっぷりのフレーバー緑茶

──これから夏本番を迎え、観光をされる方に一言。

村木さん 最後になりますが、稲取温泉はこれから本格的な夏を迎えます。海を利用した天然のプールでのサザエのつかみ取りや花火大会、ちびっこ縁日などお子さんたちが喜ぶイベントや花火大会なども行います。

もともと良港で知られた稲取港で賑わい、豊富な海の幸が自慢なまちです。温泉、観光、海水浴、グルメなど魅力にあふれた地域と自信をもって申し上げられます。

是非、この夏には稲取温泉で楽しい日々を過ごしてほしいと願っています。私たち宿泊・観光関係者一同お待ちしています。

稲取温泉旅館協同組合

〒413-0411 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取1521-3
TEL:0557-95-2901 
FAX:0557-95-5180

※2023年 稲取温泉夏のイベント
稲取温泉花火演舞 7月26日(水)~30日(日)、8月26日(土)~30日(水)午後8時30分~
磯Sea Garden IKEJIRI 7月22日(土)~8月27日(日)午前9時~午後4時
サザエ・あわびのつかみ取り大会 7月29日(土)~31日(月)午前11時~正午(予定)
ちびっこ縁日 8月2日(水)~8月4日(金) 午後7時30分~午後9時

この記事の執筆者

長井 雄一朗

建設業界30年間勤務後、セミリタイアで退職し、個人事業主として独立。 フリーライターとして建設・経済・働き方改革などについて執筆し、 現在インタビューライターで活動中。

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