キレイを楽しくラクに。お客様と実直に向き合い続ける株式会社アイセンのモノづくり

株式会社アイセンは昭和21年の創業以来、愛染たわしを始めとしてキッチン・トイレ・バスなど水回りの清掃用品の製造・販売に取り組んできました。

「良い製品を適正価格で」という同社のモットーの下、新しい技術を盛り込んだ先端素材を製品作りに生かし、お客様目線の使いやすさを追求しています。

今回は株式会社アイセン様が大切にしているモノづくりへの想いについて、事業戦略室の中西様にお話を伺いました。

株式会社アイセン

中西茂樹さん

事業戦略室

「全てを愛に染める」創業者の精神から始まったたわし作り

──貴社の社名「愛染(アイセン)」の由来を教えてください。

中西茂樹さん(以下、中西さん) 会社の理念として掲げている「販売先を愛し、仕入先を愛し、自社を愛する。全てを愛に染める、愛染の精神を」の言葉のとおり、創業者が自らに関わる全ての方を幸せにしたい、という想いの元、愛染(アイセン)という商標でたわしづくりがスタートしました。

ただ一説には、当時流行っていた川口松太郎の小説「愛染かつら」からインスピレーションを受けたという話や、和歌山県の根来寺や高野山に祀られている愛染明王にちなんでいるなど諸説あります。

──本当に色々な説がありますね。もしかしたら全部にちなんでいるのかもしれませんね。

中西さん そうかもしれません。

──貴社設立の経緯やこれまでの歩み(沿革)についてお聞かせください。

中西さん 弊社は、昭和21年に「愛染」の商標でたわし・箒及び清掃用ブラシの製造業として業しました。

もともと海南市はたわしの素材となる棕櫚(しゅろ)の栽培が盛んな地域で、これを使った縄や箒、たわしの製造を行う産業が昔からあり、弊社ももともとは棕櫚から作るたわしの製造を行っていました。

しかし、昭和26年に旭化成工業様が開発した新素材「サラン」をきっかけに業界初となる「合繊たわし」の発売を始めました。当時、化学繊維をたわしの素材に使っていた企業は弊社だけです。

※合繊たわし・・・化学繊維を使用して作られたたわしで、難燃性・耐薬品性・弾力性・色を付けられる・水切れが良いなど自然素材にはない特性を持つ

中西さん また、昭和61年にはアメリカのダウコーニング社との共同開発で、抗菌剤バイオシルを素材に織り込んだ抗菌スポンジ「バイオシルクリーナー」を発売しました。

──新開発の素材や技術を業界に先駆けて製品に導入するなど、昔から非常にチャレンジングなモノづくりをされていますね。

中西さん 弊社では先代、先々代の時代から新しい技術や珍しい素材、面白いものをいち早く製品に取り込むということを心掛けていたようで、平成10年には生分解スポンジや生分解ボディタオルなども作っていました。

──すごい!今から20年以上も前にSDGsの先駆けとなる製品を作っていたのですね。

中西さん そうですね。当時の製品としてはちょっと先取りしすぎたかもしれません。当時のお客様の反応は芳しくなかったと聞いています。

──貴社の製品第一号は”たわし”とのことですが、たわしを製造することになったきっかけや理由は何でしょうか?

中西さん 弊社が創業した海南市では、古く昔から棕櫚栽培が盛んにおこなわれていた地域でもあります。

棕櫚には耐水性・耐腐食性・弾力性に優れているという特性がありたわしや箒、縄など棕櫚を使った製品を作って商いをしている方が多くいました。

──なるほど。たまたまその中で株式会社アイセンの創業者が選んだのがたわしだったということですね。

中西さん そうですね。棕櫚の繊維には油分も含まれていますから、棕櫚の箒で床を履くとワックス効果でつやつやになります。棕櫚自体が「洗う」という行為にとても適している素材だったということですね。

商品開発はお客様の困りごとのヒアリングから始まる

──貴社の製品開発において心がけていることは何でしょうか?ものづくりにかける思いなどがあれば教えてください。

中西さん 弊社が創業時から一貫してものづくりで心掛けているのは「モノとして使ってもらって良いもの」を作るということです。

普段お客様が家庭で毎日お使いになるものは、値段やパッケージを見て買っていることが多いと思います。

安価な清掃用品を作っている会社はたくさんありますが、その中でも弊社は「安かろう悪かろう」の製品ではなく、「価格に見合った良い商品を作る」ということを大事にしています。

──使いやすい良いものを適正価格で提供するということですね。

中西さん はい。あとは使って楽しくなるような商品作りも心がけているところです。毎日こなす家事である掃除をいかに楽しく、ラクにするかということも重要だと考えています。

──製品開発においては「お客様目線」を大事にしているとのことですが、お客様目線を製品に反映するために行っている特別な取り組みがあれば教えてください。

中西さん 近年では市場マーケティングはもちろん、実際に使っていただく消費者の方々と出来るだけ直接ふれあい、意見をお聞きできる場所を作ることを心がけています。

近年はコロナ禍もあって難しかったのですが、以前はコミュニティスペースに主婦の方々を集めて製品の試作品を使ってもらって意見を聞き、それを製品会議にフィードバックして改良するということをやっていました。

最近では色々なイベントに出店もさせていただき、「どんな形のスポンジが良いか」「使い勝手はどうか」「気になる点はどこか」など、お客様の意見をフェイストゥフェイスで聞かせていただき、商品つくりに活かしています。

──特にお客様の声が強く反映されている製品にはどのようなものがありますか?

中西さん 弊社の主力商品はスポンジなのですが、水切れに特化した『激キレ』や耐久性に特化した『長持ちスポンジ』、銀と銅で抗菌処理を施した『抗菌スポンジ』などがあります。

いずれも「水切れが良いスポンジが欲しい」「すぐカビてしまう」「すぐダメになってしまう」といったお客様の不満や不便を反映し解決するために開発した商品です。

目が荒く水切れの良いスポンジ『激キレ』
毎日使ってもへたりにくい『長持ちスポンジ』

──たしかに、「こんなスポンジが欲しい」「こんな点に困っている」というニーズ・不満は普段使っているお客様からでないと聞けない声ですね。

中西さん はい。実は弊社では室内干しハンガーも業界に先駆けて販売を始めたのですが、これも「梅雨時に洗濯物が干せなくて困っている」というお客様の声を受けて開発が始まったものです。

弊社の製品開発においては「日々の生活の中でお客様がどんなことに困っているかを聞く」というヒアリングからスタートしています。

──お客様から困りごとを聞き、それを解決するために商品を開発するということですね。アイセン様はものづくりの王道を行っているという感じがします。

中西さん そうですね。それに加えて新しい素材や製品について「こんな使い道がある」と弊社の方から新たな価値を提案させていただくということもしています。

開発に3年を要した「バイオマススポンジ」、思わぬきっかけで生まれた特許商品「トレピカ」とは

バイオマスマークの認定を受けたキッチンスポンジ

──どのような製品が一番人気ですか?開発のきっかけやエピソードも合わせて教えてください。

中西さん 弊社の主力商品はスポンジです。昨今のSDGsの流れもあり、今弊社で力を入れているのはリサイクル素材を使って製造した「バイオマススポンジ」の販売です。

製品の50%以上にクルミを始めとした植物由来の素材を配合しており、捨てるときはプラスチックではなくクルミ(生ゴミ)として捨てられます。

弊社で製造・販売している製品のほとんどはスポンジ・室内干し竿など化学・プラスチック製品など石油由来のものです。

そのため、これらの製品に代わる環境に優しい製品を作っていきたいという想いもあり、このバイオマススポンジは3年もの月日をかけて開発しました。

──開発に3年も要したのですね!すごいですね

中西さん おそらくリサイクル素材を10%配合するという程度ならすぐに作れたかもしれませんが、「やるからには半端なものは作りたくない」という想いがありました。

ただ、植物由来の原料を50%以上配合することで強度が落ちるなど諸々の問題があり、3年かけて試行錯誤してようやくできたのがこのスポンジです。

──自社で特許を取得された”トレピカ”について、開発時のエピソードをお聞かせください。

中西さん もともとトレピカの素材はスポンジとしてではなく、毛穴の汚れも落とせるタオルに使うためのものでした。ただ、この素材は繊維がブラシ状に立毛していて、肌に触れるとチクチクとした刺すような感覚があります。

この素材を肌にも使えるようにと研究を何度も繰り返していましたが、肌触りの改善はできないまま製品作りは頓挫しかけておりました。

そんなある日、開発担当者が食堂に行き注文した料理が出てくるのを待っている間、当日使用テストをしていた素材で食堂のテーブルクロスを試しに軽く拭いてみたら、ビニールのテーブルクロスが驚くほど白く綺麗になりました。

食事を終えて会社に戻り、社内のあらゆる場所をこすってみたところ、この素材の持つ特性がクリーナーにぴったりだと確信しました。

そこから繊維の細さ、弾力性など繊維の構造の研究を重ね、現在のトレピカが誕生いたしました。

髪の毛より細い0.045mmの極細繊維を採用した『トレピカ』

──はじめは清掃用の素材ではなかったものが、清掃に適していると偶然のひらめきで発見されたということなのですね。ドラマチックなお話です。

これからも時代にマッチしたモノづくりを続けていきたい

──業務用製品もスポーツ施設・医療用・ビルメンテナンスなど幅広くカバーされていますね。業務用製品の取り扱いを始めたきっかけをお聞かせください。

中西さん 業務用の製品に関してはノベルティとして配布したりということはしていましたが、あまり大々的に販売は行っていませんでした。

業務用製品の販売を広げようというきっかけになったのは、さきほど紹介した「トレピカ」です。

トレピカは一般家庭だけでなく、商業施設の清掃との相性が抜群です。大手飲食店チェーン様ですとか医療現場、ビル清掃などで実際に使っていただくことで良さを伝えられるようになりました。

今後は、体育館の清掃に使うモップにトレピカを取り入れていただきたいということも考えています。業務用の製品でも弊社のコンセプトである「楽しくラクに、早く」というところを変わらず大切にしています。

──今後の展望をお聞かせください。

中西さん これから、日本は少子高齢化がどんどん進んでいき、国内の人口は減っていくと予想されます。

また生活様式についても、家庭に食洗器が導入され従来のようなスポンジでお皿を洗うというシーンは減っていき、弊社で扱うようなスポンジの需要が拡大していくということは考えづらいと思います。

こうした時代の変化に遅れずついていき、その時代にマッチした「キレイを、楽しく」を提供できる商品開発を今後も進めていきたいと思っております。

また、本年度から本格的にSDGsに関する取り組みもスタートしました。

弊社で扱っている商品は最終的には捨てられてしまういわゆる「消費財」ですが、それを回収・リサイクルしてもう一度使えるよう製品に生まれ変わらせるという取り組みをメーカーとしてやっていきたいと思っています。

──使って捨てて終わりではなく、ゴミを出さずモノの寿命を延ばすモノづくりということですね。

中西さん はい。長期的な目標としてはゴミを出さないモノづくりを目指しています。清掃用品という身近なモノだからこそ、ぜひやりたいと感じています。

企業としての社会的な責務を果たしつつ、消費者の方々が知らない間に環境問題に貢献している、そういうような商品や取り組みを今後も提供していきたいと思っております。

株式会社アイセン

〒642-0014 和歌山県海南市小野田258番地
TEL:073-487-0100 
FAX:073-487-3111

この記事の執筆者

海野 みき

取材・インタビューを中心に記事を執筆しているフリーランスのWebライター。SEO記事やレビュー記事の執筆も行っています。

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