湖畔にポツンと佇むサウナ施設。「十和田サウナ」が追求する究極の自然体験とは

青森県十和田市と秋田県鹿角郡小坂町にまたがる湖、十和田湖(とわだこ)。そんな十和田湖の湖畔に、サウナ施設が2年前オープンしました。

今回は、十和田サウナを運営するネイチャーセンス研究所の中野さんに、十和田サウナや十和田湖の魅力について伺いました。

ネイチャーセンス研究所

中野 和香奈さん
なかの・わかな/編集者/インテリアコーディネーター。住宅会社のインテリアコーディネーターを4年勤めた後、北欧雑貨・家具をメインに扱うインテリアショップへ転職。店長、バイヤーを経験。2014年から雑誌編集の世界へ。雑誌『Discover Japan』の編集を経験し、現在は十和田サウナを運営する合同会社ネイチャーセンス研究所所長のかたわら、編集・執筆、インテリアコーディネートの業務も行う。

ただ見るだけでなく、十和田湖の魅力を肌で感じてほしい

──まず、十和田サウナオープンの経緯について教えてください。

中野さん 十和田湖を生活の拠点にしている仲間のアイデアで、十和田サウナは生まれました。

いつも一緒に何かをするメンバーの大半は、十和田出身ではない移住者たち。皆、十和田湖の魅力に惹かれて移住してきており「見るだけではなく、深みのある体験を通して、十和田湖の魅力を伝えたいよね」とよく話していたんです。

そんな中、仲間の1人がEX-PROというテントサウナを購入。十和田湖畔でみんなでサウナをする機会がありました。

実際に体験すると、湖が水風呂になったり、自然豊かな湖畔で外気浴できたり「こんな楽しみ方があるんだ!」と気づいたんです。

「私たちだけで楽しむのはもったいない、これをビジネスにして、もっといろんな人にも体験してもらいたい」と、補助金をとって事業化に踏み切りました。

──サウナ設営は、サウナ好きの有志の方が集まって行われたんですよね。

中野さん はい。十和田サウナは、木製の樽型の小屋にストーブを設置したバレルサウナを導入しています。

当時は代理店などもなく、知人経由でロシアから輸入し、自分たちで組み立てました。説明書には「大人2人、2日で組み立てられます」と書いていたのですが、全くそんなことはなく(笑)。

Twitterの発信を見てくださった北東北のサウナ好きの方にもご協力いただきました。週末のみの作業で、1ヶ月以上はかかりましたね。

──十和田サウナのコンセプトを教えてください。

中野さん とにかく、「十和田湖の自然を感じてもらう」こと。

サウナは最近の流行にもなっていますが、十和田サウナはサウナ施設ではなく、あくまでも十和田湖の自然を感じるためのツールの一つだと考えています。

チェアやバスローブにもこだわりました。例えば外気浴用のチェアは、エコファーンといって木材を切った時にでる木片を使って作られています。

万一破損したとしても、サウナの燃料にもできるのでゴミにはなりません。十和田サウナの備品も、なるべく自然に近いものを採用しています。自然体験にノイズを持ち込みたくないんです。

バスローブは、フィンランドのブランド「ラプアンカンクリ」のリネン。栽培から加工までを全てヨーロッパで行い、上質なリネンだけに与えられる称号「マスターオブリネン」を取得しているものです。

サウナ中に飲む水やウィスクも、地域のものにこだわって

──サウナ中にいただけるお水にも、こだわられているんですよね。

中野さん サウナを利用するお客さまには、十和田の森の湧水を使っている「十和田湖美水」を2Lご用意しています。

このお水は、コラーゲンの生成を助ける役割を果たす、シリカが多く含まれています。

「まろやかでおいしい」というお声をよくいただきますね。

せっかく十和田に来たのであればその地のものを口にしてほしいと考え、地元メーカーに特別に大容量のサイズを作っていただきました。

また昨年からは、サウナ中に利用するウィスク(枝葉のブーケ)も近くの森から採取したダケカンバから作っています。 ※ウィスクはオプションです

四季を通して、異なる表情を楽しんでほしい

──十和田サウナの季節ごとの楽しみ方についても教えてください。

中野さん 春先は、まだ緑が少ない芽吹きのタイミングです。生きようとする、植物の生命力を感じられます。

夏は気温が上がり、周りの森は徐々に深い緑になります。湖も入りやすい温度なので、十和田湖と仲良くなれる季節です。秋は紅葉、赤や黄色に染まる森が湖にも映えてとっても美しいんですよ。

中野さん そして、冬。冬は本来オフシーズンで、キャンプ場も閉鎖されます。

しかし十和田サウナでは、12月末から3月末のホワイトシーズンも営業し、1日1組のみご予約を受け付けています。

湖畔までの道路が通行止めになるので、片道20分の森を歩くところからスタート。その後は、たっぷり3時間のサウナを楽しんでいただけます。

冬の湖は冷たい空気を纏い、より清冽な水になります。おそらく、どの季節よりも美しく感じるのではないでしょうか。

グリーンシーズンは1日2〜3組ですが、ホワイトシーズンは完全貸切で、究極の自然体験を堪能いただけます。冬はいわゆるパウダースノー。ふっかふかの雪にぜひ触れてください。

と、色々お話しさせていただいていますが、「ここが綺麗」「ここを見て」とお伝えするより、感じていただきたいのが本音。

ぜひ、私たちの知らない景色を見つけていただきたいです。

──十和田サウナを訪れる方におすすめしたい、近隣の観光スポットはありますか。

中野さん 十和田湖は、北東北の中心地に位置しており、秋田県、岩手県にもアクセスしやすい場所にあります。弘前は1時間半、盛岡は2時間ちょっとで行けるので、ぜひ十和田湖を拠点にいろんな場所を楽しんでいただきたいですね。

特に青森県と秋田県は温泉大国。なかでも蔦温泉は日本では源泉湧き流しの温泉として有名です。

また、十和田の有名観光スポットといえば奥入瀬渓流もありますね。

奥入瀬渓流の源流は十和田湖。ぜひ源流を見てから渓流に行っていただきたいです。

観光客増加はもちろん、ここに暮らす人を増やしたい。

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──十和田サウナオープンによって、町に変化はありましたか。

中野さん オープンからこれまで、500組、1000人以上の方が十和田サウナにお越しくださいました。

それに、十和田サウナに関わりたいといって2名がこの地に移り住んでくれました。十和田湖は限界集落のため、相当なインパクトだなと感じています。

おそらく人口を増やさなければ町として存続できません。観光はもちろん、この町を存続させることも意識していかなければいけないな、と。

とはいえ、あまり難しく考えずに今住んでいる私たちがこの十和田湖での暮らしを楽しんでいけたらと思っています。

カヌーなどの自然アクティビティを主催する会社や、中長期滞在向けのゲストハウス、食堂やホテル・・・。

ずっとこの地で商売を営む人や新しく入ってきた人、みんな十和田湖が好きという気持ちがある人ばかりです。そんな気持ちに共感して、かかわりたいと思う人がもっと増えていくといいですね。

今、会社として検討しているのは、新しく宿泊事業・飲食事業を展開すること。

現状十和田周辺には、気軽に泊まれる宿泊施設や夜間に空いている飲食店などがないため、フラッとお越しいただけるようなきっかけを作るのが次の目標ですね。

──最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

中野さん 十和田湖は、植物も動物も固有種が存在していないと言われています。

ただ、昔から信仰の場所とされていたこともあり、森や湖を汚すことは許されてこなかったため、森の階層が深く、手付かずの自然がたくさん残っています。

お越しくださる方にはぜひ、そんな純度の高い自然を体感していただきたいと思っています。

先ほどもお伝えした通り、私たちが何かをおすすめするというよりも、皆さんに自由に自然を感じていただきたいですね。

十和田湖が今の形になったのは、巨大な噴火が要因と言われており、湖単体だけでは語れない深さがあるんです。

ぜひ立体的に十和田湖を楽しんでいただきたいですし、十和田サウナがそのきっかけになれば嬉しいです。

十和田サウナ

〒018-5501 青森県十和田市奥瀬十和田湖畔宇樽部 宇樽部キャンプ場内

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