福島県・相馬市の「松川浦」は、福島県唯一の潟湖で、景観の美しさから日本百景に選定されています。
太平洋と松川浦を両手に望める「大洲松川ライン」は、サイクリングやドライブで最適なコースです。
近隣の「浜の駅 松川浦」には、相馬で水揚げされた新鮮な魚介類をはじめ、地元農産物や加工品、お土産などを販売。さらに松川浦周辺では「浜焼き」が復活し、新たな観光資源が続々と生まれています。
今回は、相馬市観光協会事務局長の大谷和正さんに相馬市の観光の魅力をうかがいました。
相馬市観光協会
大谷 和正さん
事務局長
千年以上の伝統が今も続く「相馬野馬追」
──まず相馬市の歴史と観光の魅力からお話を伺いたいと思います。
大谷和正さん(以下、大谷さん) まず国の重要無形文化財である「相馬野馬追(そうまのまおい)」という、1000年以上の歴史を持つ伝統行事を紹介します。
発祥は、相馬地方を支配・拡大した相馬氏※の遠い先祖である平将門(たいらのまさかど)※が始めたとされています。
放した野馬を敵兵に見立てて、馬を捕まえる軍事訓練や、捕まえた馬を神前に奉納する祭礼として始まったと伝えられています。
「相馬野馬追」では人馬一体となり風を切り疾走する「甲冑競馬」、天中高く打ち上げられた二本の御神旗を勇猛果敢に奪い合う「神旗争奪戦」が行われます。
2023年度では、約370騎の騎馬武者が行列をつくりました。
●相馬氏
桓武天皇の子孫桓武平氏の平将門の流れをくむと伝えられる。福島県東部で勢力を伸ばし、戦国時代には伊達氏と抗争。江戸時代では相馬藩6万石として安堵され、現代でも相馬家は続いている。
●平将門
桓武天皇の子孫。下総国(現・千葉県)・常陸国(現・茨城県)に広がった平氏一族の抗争から、やがては関東諸国を巻き込む乱を起こす。その際に常陸国府(国の政務を行う施設・現在の都道府県の役所にあたる)を襲撃。「新皇」を名乗り東国独立を目指すが、藤原秀郷・平貞盛らにより討伐される。
感動の松川浦の光景、日本百景に選ばれる
──さて「相馬野馬追」では戦国ロマンを感じましたが、「ミズテル」は水にフォーカスした媒体ですのでそちらのご紹介もお願いします。
大谷さん 代表的な観光地として、海水と淡水が入り混じる「松川浦」があり、道一本はさんで太平洋が見渡せます。
松川浦の外側が「大洲海岸」であり、海岸を走る大洲松川ラインという道路は、内側に松川浦県立自然公園の潟湖、外側に紺碧の太平洋があり、両手いっぱいに美しい海を望めるドライブ・サイクリングコースです。
松川浦の中にはあおさ海苔の養殖が盛んで、みそ汁にすると香りがとてもいいです。
ここの周辺でもう一つ紹介したい観光地が「浜の駅 松川浦」で、2022年10月にオープンしました。地元を中心に相馬の水産物、加工品、お土産品としての購入の場ですので是非お立ち寄りください。
大谷さん 「浜の駅 松川浦」の中には、フードコートとして浜の台所「くぁせっと」があり、地元の農水産物を使ったメニューをそろえています。
地魚丼が人気の料理で今の時期(12月)では、さわら、スズキ、アブラボウズなど相馬市ならではのラインナップの食材を用意しています。
旅館の若旦那のグループが「浜焼き文化」を復活
──次に海ならではの体験も楽しめると思うのですが。
大谷さん 松川浦の旅館の若旦那がつくる「松川浦ガイドの会」は、人工機でカニ釣り体験を主催しています。いいカニが釣れれば、お宿がそのカニをみそ汁にしてくれますし、子どもから大人まで楽しめます。
東日本大震災前では松川浦の旅館や飲食店の前に、炭火で焼かれた地元の魚介類の「浜焼き」が日常風景で売られていました。相馬市の魚、イシモチ、カレイ、イカやトウモロコシを材料にして、炭火で焼いて串にさして秘伝のたれで味付けしていました。
しかし震災後、相馬市全体も被災し旅館を修繕した時に、浜焼きができる施設がなくなってしまったのです。
そこで「松川浦ガイドの会」が中心となり、2021年に浜焼きは松川浦の観光名物として見直して、復活しました。お客様は串の打ち方やたれのつけ方、浜焼きなども体験でき、若旦那からは浜焼き復活の想いの話もうかがえます。
体験コーナーは団体のお客様が中心ですが、是非、浜焼き文化を体験してきて欲しいです。
今「旅館 いさみや」の旅館業は休館中ですが、屋外で浜焼きを再開し土曜、日曜や祝日のみ営業、テイクアウトもできます。
──福島沖では本当にいろんな魚が豊富に取れますね。その秘訣はどこにあるんでしょうか。
大谷さん 元々、福島県沖で獲れる水産物は「常磐もの」として高く評価されてきました。
これは千島海流から流れる親潮(寒流)、日本海流から流れる黒潮(暖流)が交わるため、プランクトンが繁殖し、質のいい魚が育ってくるんです。
魚の種類も豊富で、200種類ともいわれています。
ただし一般的に流通するのはそのうちの50種類。松川浦の中でも多くの魚が釣れ、多くの釣り人で賑わっています。
そして、魚つながりで相馬市の新名物とアピールしているのがとらふぐ。
最近30tを超えるとらふぐが獲れるようになり、全国でもトップクラスの水揚げ量。10月~2月が漁期で今(12月)がまさにシーズンです。
宿泊施設や飲食店11店舗でとらふぐを食べられます。将来的にはとらふぐを「西の下関 東の相馬」と呼ばれるように格が上がっていけばと思います。
ちなみにこのとらふぐは、人に街に福を呼ぶ意味合いから、相馬市の相馬双葉漁協が「福とら」と命名しました。
先日も「浜の駅松川浦」で「福とら」の雑炊を無料でふるまい、新名物としてアピールにつとめています。
新名物の天然とらふぐ『福とら』を楽しめる旅館
──いろんな魚が楽しめることも相馬市の魅力ですね。宿泊施設はいかがでしょう。
大谷さん 「福とら」が食べられる宿泊施設は、「なぎさの奏 夕鶴」「松川浦温泉 ホテル飛天」「ホテル みなとや」「観光ホテル喜楽荘」です。
ちょうど今、相馬市では、「泊まって、食べてキャンペーン」を展開しています。
キャンベーン対象店舗で「福とら」をお召し上がりの上、専用QRコードを読み取り、アンケートにご回答頂いた方の中から抽選で200名の方に「福とら」オリジナル手ぬぐいをプレゼントしています。
対象店舗は申し上げた4つの宿泊施設で、期間は2024年1月31日までです。
相馬名産のいちごを使ったアイスが話題に
──海の話題も多かったですが、お土産品はいかがでしょうか。
大谷さん 先ほどの松川浦で紹介しましたが、乾燥した海苔がたくさん売れていますね。
本観光協会が「相馬ブランド」として2023年度に認定した、㈱マルリフーズの「松川浦かけるあおさ」という商品にも注目して欲しいです。
瓶詰めのごま油の中に松川浦の海苔とガーリックが入っています。調味料としてご飯や豆腐、パスタなどにかけると相性もよく食事も進みます。
次におすすめしたいのが、苺園「和田観光苺組合」と、松川浦沿いの絶景カフェショップ「sweetrap」がコラボをし、相馬名産のいちごを使用したアイスです。
相馬はいちごの栽培が盛んで、1〜5月までがシーズン。
北海道天塩村の「宇野牧場」の貴重なノンホモグラスフェッドミルクを使用し、甘い苺の果肉との組み合わせが贅沢すぎる組み合わせです。
また相馬商工会議所が発案し、相馬市の美味しいお米と水をアピールする「相馬ブランド酒」があります。
相馬市で栽培された福島県の酒米「夢の香」を使用、福島県二本松市の人気酒造が手造りで醸造した「夢そうま」という地酒があります。
人気酒造は伝統的な製造方法や道具にこだわりを持ち、すべて木製の大桶を使い発酵させ、瓶の貯蔵で品質管理をしています。
震災学習旅行増加につとめる
──これからの貴協会の動向を教えてください。
大谷さん 最近になって増えてきたのがスポーツ合宿。サッカー、野球、バレー、バトミントン、剣道、合気道などのスポーツを行う方々が合宿場に相馬を選んで頂いています。夜には浜焼き体験もされたりしています。ただ学生が多いので夏に集中します。
これまで震災学習ツアーがありましたが、最近はモニターツアーが増えていますので、丁寧なアテンドにつとめ、数年後の相馬市の観光業界の活性化にタネをまいています。
また、2022年3月の地震では松川浦周辺の宿泊施設は、半分ほど休業してしまったのです。今後、宿泊施設が立ち直っていくことを見据えて、震災学習旅行などが増えていくようにアテンドしたいと思います。
相馬市観光協会
〒976-0042 福島県相馬市中村字北町55-1
TEL:0244-35-3300
FAX:0244-35-3210