地球の大半を占める海の世界には、生命の神秘と数々の体験が待っている。国内トップクラスのダイビングスクールが伝えたいこと

国内トップクラスの規模を誇るパパラギダイビングスクール。創業37年目を迎え、初心者のダイビングライセンスの認定者は2万7000人にのぼります。

今回は、2代目の代表を務める松本行弘(まつもとゆきひろ)さんに、パパラギダイビングスクールの特徴や、海やダイビングの魅力について話をうかがいました。

パパラギダイビングスクール 代表取締役

松本 行弘さん

ダイビング歴33年。元バンドマン。失恋をきっかけにダイビングをスタート。真鶴でダイバーのライセンス講習を受けた際、海の中でカラフルな魚たちが泳いでいるのに驚き、どんどんとその魅力にのめり込んでいく。当初は船酔いがひどかったが、「ダイビングを楽しみたい」という一心でオーストラリアへ渡り1年間船上での仕事をして克服。一時は会社員として働くことも考えたが、テレビで綺麗な海のシーンを見て、惹き戻されるかのように海の世界へ。そこからパパラギでのダイビング人生がはじまった。

1986年に1号店をオープン。ダイビングインストラクターを「職業」へ

藤沢市のパパラギ1号店(旧店舗)

——最初にパパラギダイビングスクール(以下、パパラギ)がオープンした経緯を教えてください。

松本 行弘さん(以下、松本さん) 37年前の1986年、パパラギは藤沢市に1号店をオープンしました。

当時、世の中のダイビングインストラクターはまだまだ未熟なところが多く、仕事としても確立されていない状況。パパラギでは、何よりも安全に対する意識や技術、そして経験を積むことが必要だと考えました。

質の高いサービスを提供するべく、グアム店には海の専門家であるアメリカ人やチャモロ人を正社員として雇い入れました。

パパラギの歴史は、ダイビングインストラクターを職業として確立させてきた歴史でもあるのです。

海の素晴らしさを伝えながら、自然を大切にする心を育みたい

——どのような理念をもって活動していますか?

松本さん 私たちは「人間力」「プロ力」「仕事力」の3つから成る「パパラギ・スタンダード」という行動規範を持っています。

このスタンダードが目指すところは、絶対安全に海の素晴らしさをお伝えできるインストラクターであること。そのためにスタッフ全員が日々切磋琢磨をしています。

特に大事にしているのは「人間力」で、インストラクションの技術はもちろんですが、お客様から「ここが不安なんだよね」「ちょっと体調が悪くて」と、些細なことでも話してもらえるかどうか。人間力があってこそ安全を守れると考えています。

また、私たちが運営するNPO団体 パパラギ“海と自然の教室”の活動を通じて、多くの人の「海や自然を大切にする心」を育てていきたいと思っています。

NPOでは子ども向けの活動も行っているのですが、子どもの頃に海で遊んだことがあれば、大人になっても海を汚そうと思わないはず。実際に0歳から参加していた子は大学を卒業し、今ではうちのお手伝いをしてくれているんです。

これからも幼い頃から海と関わる機会を作り、自然と「海を大切にしたい」と思える人を増やしていきたいですね。

NPO活動のひとつ「海洋生物観察会」。
子どもの感性と好奇心は、インストラクターをひょうひょうと飛び越えることも。

松本さん そして、私たちが大切にしているもうひとつのことは働きやすい会社であること。スタッフ一人ひとりの意見を反映し、常に運営を見直しています。

年間60〜70回は研修を開催。スタッフ全員が月報を提出し、そこには日々の業務で感じたことや意見、アイデアが書かれていて、必要なことはすぐに実践されています。

ちなみにスタッフの8割くらいは、もともとお客さん。ダイビングや海の素晴らしさに魅了され、そのまま仕事にしたということです。

スタッフ一人ひとりがパパラギを創っていると思っているので、新しい仲間が入ったら、また昨日までとはちょっと違うパパラギになります。

パパラギのお客様はとてもやさしくて良い方ばかりなのですが、これもスタッフたちが普段心がけているすべての人に対しての敬意と明るさがあるからこそ、お付き合いさせていただくのが楽しいお客様が集まって下さるのだと思っています。

スタッフ一人ひとりの存在によって、パパラギの歴史は今も創られている

ダイビング歴33年の理由は「四季のある海」に惹かれて

——松本さんはダイビング歴33年とお聞きしました。どのようなところに魅了され、長く続いているのでしょうか。

松本さん 私は特に、日本の「四季のある海」が好きなんです。以前グアム店に勤務していたとき、グアムの海は1年中同じで、いつも綺麗な海を見られるのは良いことですが、変わり映えのなさを感じていました。

そんなとき、たまたま日本からダイビング雑誌が送られてきて「やっぱり日本の海って良いよな」と思い、日本に戻ってきたんです。

たとえば、伊豆の海は5月位からアオリイカの産卵シーズンが始まります。メスが卵を産みつけるときオスが覆い被さるようにして上から守ります。

そのときのオスはとても大きく見えて、身体は綺麗な虹色に。それから1ヶ月半くらいすると、卵から小さな赤ちゃんが生まれて、また大きくなって…。

あらゆる生命の神秘を間近で見られるんです。

美しい魚が泳ぐ目を惹くような景色

——普段では味わえないような体験が待っているのですね。

松本さん はい。地球は青いと言いますが、海は地球の7割を占めると言われています。その海を知らないままというのはもったいないです。ダイビングを始めると、本当に人生が変わると思いますよ。

今でもすごくワクワクするのは、海の中に潜っていく瞬間です。じわじわと海の中に入っていき、目線が水面を超えた瞬間に一気に海の世界が広がります。

水中を自由自在に泳げる感覚が面白いですし、時には海底に沈んでいる船を発見することも。大きな船を上から見下ろしたり、横から覗き込んだり……。

まるで、自分が空を飛んでいるかのような気分になるんです。

パパラギダイビングスクールは初心者もすぐに上達できる!

——本当に初心者の人でもダイビングを始められるのでしょうか?

松本さん イチからお教えするのでご安心ください。いつもびっくりするのですが、皆さんすぐに上達されるんですよ。ついさっきまで海の中で呼吸をしたことがないのに、すぐに自分で泳ぎ回れるようになる。

なぜなんだろう? と考えていたのですが、ある時見つけたこの写真が解決をしてくれたんです。

松本さん 左は人間、右はイルカの胎児です。パッと見ただけでは判別がつかないくらい似ていますよね。

人間の母親の羊水は、海の成分とほとんど一緒なのだそう。つまり私たちもお腹の中にいた頃は、海の中にいたようなもの。

だから、ダイビングは新たに覚えるというよりも、昔の記憶を思い出していく。自分自身に還っていく。そういうものなのだと腑に落ちました。私たちはそのお手伝いをしているのです。

きっと海の世界に救われる人もいると思いますよ。僕もグアムにいた頃、いろいろと煮詰まって海に逃げたことがあって……。

「嫌になっちゃったな」と海の中で上を見上げると、そこにはイルカがいたんです。グアムのイルカは普通、人間のそばにはこないのですが、その時はなぐさめてくれているかのようで「もうちょっと頑張ろう」と元気をもらえました。

案内人として「海を通じた豊かな人生経験」を提供したい

平均年齢70歳を超えるメンバー。みなさん元気!

——これからどのようなことを実現していきたいですか?

松本さん 私たちが目指しているのは「一生付き合いたいダイビングスクール」です。NPO活動を含めると、0歳から80代の方までお付き合いがあり、一緒に海に行っています。

ときどき年配の方から「そろそろ身体がしんどくなってきたから、海から引退しようと思うんだよね」、「パパラギさんに出会えたおかげで、楽しい人生を過ごさせてもらったよ」と言っていただくことも。海の世界を案内している者として、この仕事をしていて本当に良かったと思う瞬間です。

これからもそうやって感謝をしていただける仕事をしたいですし、海を知ることで豊かな人生を送っていただくことが私たちの役割だと思っています。

パパラギダイビングスクール

〒251-0055 神奈川県藤沢市南藤沢10-4
TEL:0466-26-6101 
FAX:0466-26-7540

この記事の執筆者

志摩 若奈(しま わかな)

個人事業主として、取材や執筆、カウンセリングをおこなう。「自分と繋がる瞑想法®︎」を活用した、自己信頼や自己受容を育むセッションを提供中。お問い合わせはInstagramのメッセージまで。

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