ワインづくりを炭酸水作りに活かす。瀕死の状態になったからこそ生まれた、株式会社OTOGINOのストーリー

株式会社OTOGINOは、強炭酸水「KUOS」や見て楽しむ雑貨「マジック桜」など、幅広いジャンルのものを製造・販売しています。

今回は、代表取締役社長である鬼武公洋さんに、企業ヒストリーや商品にかける想いをお伺いしました。

株式会社OTOGINO

鬼武 公洋さん

代表取締役社長

HP制作会社からスタートした株式会社OTOGINO

──御社の創業からこれまでの歩みをお聞かせください。

鬼武公洋さん(以下、鬼武さん) 2003年、弊社はもともとホームページの制作会社からスタートしました。

2004年頃からネット通販を行う企業がちらほら出始めて、弊社もECサイトの制作依頼がだんだん増えていきました。

その後、ECサイト構築のノウハウを蓄積するため、地元大分県特産の柚子胡椒を通販で販売し始めました。

美味しさは充分わかっていたので、絶対に売れる自信がありました。私の予想通り、すぐに月100万程度の売上を立てることができました。

この柚子胡椒の販売をきっかけに、自社でもECサイト運営に乗り出し、ブランディング、商品開発、DtoCのノウハウが蓄積されました。その結果、ヒット商品が次々と生まれ、商品は仕入れれば売れるということが続き、売り上げも右肩上がりで伸びていきました。

苦労したのは、資金繰りです。ツテや卓越した技術があり投資してくれる人がいたわけではなく、ゼロから会社を作ったので、当然資金も潤沢にはありませんでした。

当時は資本金が1000万以上ある会社でなければ、株式会社も設立することができなかったのです。

ただ、経済産業省が試験的に、100万円の資本金があれば起業を支援してくれる制度(特定株式会社)を実施していたので、それを利用しなんとか会社を設立することができました。そのあとは支援者にリターンを提供する、今でいうクラウドファンディングのようなやり方で仕入資金をやりくりしていました。

しかし、一定売上が立った後も、金融機関からの資金調達に追われていました。当時は輸入商材も扱っており、輸入取引の場合は前払いをしなければいけませんでした。

入荷、販売、回収の一連の流れは3か月かかったため、例えば1000万円の仕入れを連続で行うと3000万円が必要となり、売上が伸びれば伸びるほど仕入資金も必要になってくるので資金調達に奔走しました。

当時はまだインターネット通販が浸透していなかったため、銀行にはネットワークビジネスとECは同様のものだと思われることが多々あり大変でした。その都度一から説明し、なんとか納得してもらって融資を受けていました。

海外での経験が炭酸水商品開発のきっかけに

──そんなOTOGINOさんが、炭酸水を取り扱おうと思ったきかっけは何だったのでしょうか。

鬼武さん あるとき、知り合いの経営者から、「飲料水工場を5億円かけて作ったのだが、販路がなく潰れそうだ。お金を貸してほしい。」と懇願されました。

しかし、私もそこまでの余裕はなく、お金を貸すことはできませんでした。ただ、お金は貸せなくとも得意のECで販売協力をすることはできると考えたのです。

当時私は液晶王国(カーモニター専門販売チャンネル)のブランディングに成功し、ECだけで年商10億円に迫る勢いでした。海外の展示会を回ったり、香港に会社を設立したりして、海外に滞在する機会が多くありました。

海外のレストランに行くと、水や炭酸水が有料で提供されるのを目の当たりにしました。
そこで、日本でも、お酒などの割り材として使われることの多かった炭酸水を飲料水として売れるのではないかと考え、その知り合いの工場で製造し、販売したのです。

強炭酸というフレーズで全国販売をしたのも当社が国内で初めてで、その個性が評価され、楽天市場では水・ミネラルウォーター(発砲)部門で97週間連続一位(のべ288週)になるなど大ヒット商品となりました。

その後、その工場とは別に、融資を受け12億円かけて自社工場を設立し、現在はその自社工場でKUOSを製造しています。

ピュアな水×強炭酸=KUOS

──主力商品「炭酸水KUOS」について詳しくお聞かせください。KUOSの原水はどのような水質のお水ですか?他にはない味わいや口当たりの特徴などもあれば教えてください。

鬼武さん KUOSはもともと、水の評価が非常に高い大分県日田市の地下200mからくみ上げたとても良質なナチュラルミネラルウォーターを使用しています。

さらにRO装置と呼ばれる、もともとはNASAが開発し、スペースシャトルにも搭載されている濾過装置を使い、ミネラル分を取り除きピュアな水に磨き上げています。
ミネラル分を含んでいると、不純物と混ざりやすくなり、ガス抜けの要因となってしまうからです。

この装置は今でこそ多くの飲料メーカーが採用していますが、当時は飲料に使用しているのは珍しかったと思います。

また、水本来のおいしさだけでなく、人工透析でも使用されるレベルの純水に国内最高水準5.5GVのガスを目いっぱい入れ、強炭酸を実現しています。

GV(ガスボリューム)・・・飲料中の炭酸ガスの含有量を示す単位。1Lの液体に1Lの炭酸ガスが溶けている場合1GVとなる。

最高水準のお酒の割材

──KUOSのどのような点がお客様に好評・支持いただいていると感じますか?

鬼武さん 純水であるがゆえに雑味が少なく、ガス抜けもしづらいため、お酒の割材としては最高水準のモノとして評価されています。

そのため、ECだけでなく福岡県の中州の飲食店300店舗にも卸させてもらっています。また、水1Lに対し5.5Lの炭酸ガスが入っており、国内最高水準の強い炭酸からくる刺激も好評です。

ガス抜けしづらく、強炭酸による強い刺激を与えるという開発コンセプトがそのままお客様に高く評価されているので、作り手としては大変うれしく思っています。

大きな事故からの生還が幅広い商品開発のきっかけに

──ビアフレーバー、ハイボールフレーバーなどユニークなフレーバーの炭酸水や「マジック桜」など独創的な商品も取り扱っていらっしゃいますね。
こうしたユニークな商品のアイディアはどうやって生み出しているのでしょうか?

鬼武さん 私は、もともと美容師をしていたんです。ある時、交通事故に遭い、顔面を何十針も縫う大けがを負い、高校時代の同級生などと道端で出くわしても、顔だけでは自分を認識して貰えない時期もあって一度世の中から自分が消えたように感じました。

せっかく命拾いをしたのだから、世界に自分が生きた証を残そうと思い立ちました。
まずは世の中を知るために、当時はまだインターネットで情報収集する時代ではなかったので、図書館に行き本を読み漁りました。

その中で、世界にはいろいろなものを作っている方がいて、何百年も継承されているやり方でものづくりをしていることを知り、感動しました。

もともとワインや雑貨が好きだったこともあり、そこから世界中を旅して、ワインの作り手やクラフトマンなどから歴史ある生産者のものづくりに対する思いや愛情などを学ばせてもらったのです。

ワインは何も添加せずとも、その種類や熟成方法、期間によってさまざまなニュアンスのアロマを持ち合わせ楽しむことができることも知りました。

そのノウハウや想いを炭酸水で表現したいと思い、試行錯誤しました。シロップや着色料を使用して味をつけることは簡単ですが、中毒性があり、多くの量を飲むと体に毒です。

水は1日に2L~3L飲むと健康に良いとよく言われますよね。健康的で、飽きずに多くの量を飲むことができる炭酸水を作りたいと思い、身体に害のない香料だけを入れて味をつけています。

人間は、舌で感じるのは甘味、塩味、酸味、苦味、うま味などで、基本的には危険を察知するために舌を使うと言われています。では、おいしさはどこから感じるのか?実は舌ではなく、鼻からなのです。

だからこそ、フレーバーには特にこだわりをもって作っています。

海外のワイナリーに行った際には、必ずそのワイナリーが卸しているレストランに連れて行ってもらうのですが、要人しか行けないようなレストランやミシュラン獲得店等にもたくさん連れて行ってもらいました。

そこで、多くの知識や商品のアイディアのきっかけとなるものを学ばせてもらっています。

「マジック桜」は、EC販売用の商材開拓のために参加した海外の展示会で出会った発明家と一緒に作りました。その方はその展示会で、カラフルなコケのようにも見えるある技術を使った壁画のようなものを展示していました。

それが、今のマジック桜にも使われている技術だったのです。その技術は、秦の始皇帝時代にあったもので、紙に花を咲かせることができ、その発明家が復元したものでした。

私がその技術を使い、ぜひ桜を作りたいと日本の桜の写真を見せたのですが、その方は満開に咲き乱れる日本の桜を知らなかったのです。

台湾にも桜はあるのですが、気候が温暖なので梅のような花のつき方で、満開の桜は見たことがなかったそうです。

日本の満開の美しい桜を見て私の想いに賛同してくれ、彼が復元した秦の始皇帝時代にあった技術を使い、一緒にマジック桜を作り上げました。

その後、技術を伝承してもらい販売を開始しました。今では様々なメディアで取り上げていただいたり、楽天などのECサイトで販売をしています。
また、皇居のほとりの千鳥ヶ淵で育ったソメイヨシノのエキスを加えた「マジック桜ちよだ」を千代田区観光協会さんで販売していただいたりしています。

もともと弊社は特定のものを作って売るのではなく、輸入品を販売したりして商社のような立ち位置でした。なので今でも、枠にとらわれず幅広く商品を手掛けられているのだと思います。

KUOSで料理をおいしく。加齢臭予防にも

──そのまま飲んだり、割り材として使うだけではない、KUOSの飲み方・活用法にはどのようなものがありますか?

鬼武さん 個人的にはお米を炊くのに最適だと思っています。古いお米でも、キラキラもちもちの美味しいお米が炊けます。糖質が気になる方は、炭酸水に30分程度浸け、その炭酸水を捨てると糖質が抜けるので、糖質がカットされたお米を炊くことができます。

また、煮物に使ってもとてもおいしく出来るので、おでん作りなどにも活用できます。とっても美味しいので夏場はそうめんつゆの割材にもぜひ使ってみてください。

以前、炭酸水を使って家でおでんを作ったところ、当時6歳の娘から怒られた事があります。買ってきた大量のおでんを鍋で作ったように見せかけたと思われたみたいで、「こんなおいしいおでんが家で作れるはずがない!パパこんなことしちゃだめだよ。」とお叱りを受けました(笑)

大きくなった今でも、あれが私が作ったものだと信じていないようです。

また、加齢臭にも効果的で、余った炭酸水を湯船に浮かべて温め、シャンプーを流す際に使うと臭いが取れるそうです。

ウイスキーづくりに挑戦中

──御社の今後の展望についてお聞かせください。

鬼武さん 現在、元キリンビール副社長 坂本健二氏協力のもと、KUOSを作るのに使っている水源からクラフトウイスキーを作ろうと考えています。

坂本氏はクラフトビールの神様と呼ばれる方で、炭酸水を作っている水でウイスキーを作ったらおいしいのではないかということで、共同事業の話を進めています。

また、通常油にしか溶けないと言われているCBD原料を水に溶かすことに成功したため、飲料水として胃から吸収のできるCBD飲料「CBD R」を開発し、販売を開始しました。

正確には、CBD分子を水の分子と同じくらい細かくすることで、水に溶けているのと同じ状態にしています。高いリラックス効果とそれによる安眠効果があるといわれていて、メンタル不調などで夜眠れずに困っている方や、ストレスで苦しんでいる方にお届けしたいと思っています。

睡眠薬のように朝起きるとだるさが残ったりせず、自然に眠れてスッキリとした目覚めを実現することができ、過度のストレスを抱えていたり夜眠れずに苦しんでいる方にとって必要なものだと思うので、私は命の水と呼んでいます。

また、今流行りのAIによると水溶化したCBDはオイル状態の8倍近く吸収されるともいわれていて、さらなるリラックス効果が期待できるため、飲料にとどまらず化粧品や入浴剤など横展開していきたいです。

株式会社OTOGINO

〒877-0078 大分県日田市北友田2丁目2123番地1
TEL:0973-26-0444
FAX:0973-26-0445

この記事の執筆

大久保 さやか

フリーランスWebライター。様々な業界での職歴を持つため、企業インタビュー記事執筆を中心に活動中。

新着記事