【奥多摩】新宿から2時間の大自然。訪れた人がそれぞれの楽しみ方を見つけられる場所

「東京から日帰りで行ける大自然」奥多摩。
新宿から電車で2時間、東京の最西端の奥多摩町にはおよそ4,600人の人々が住んでいます。

東京都内でもっとも面積が広く、土地の90%以上は森林に覆われているという緑豊かなエリアです。

多摩川を堰き止めて作った奥多摩湖は「東京都の水がめ」と呼ばれ、都民の貴重な水源になっています。
※2023年10月現在の情報
奥多摩町ホームページ「人口・世帯数」/東京都産業労働局「森林と産業」

そんな緑と水に恵まれた奥多摩の魅力を、一般社団法人奥多摩観光協会の事務局次長、矢作佑允さんにお伺いしました。

一般社団法人 奥多摩観光協会

事務局次長 矢作 佑允 さん

「緑の多いところで働きたい」と、10年前に神奈川から奥多摩に移住。好きな奥多摩のアクティビティはカヤックや登山。

奥多摩と言えば…夏?いえいえ、1年中楽しめます!

──奥多摩と東京都心との違いはどういったところに感じられますか?

矢作佑允さん(以下、矢作さん)まずは環境ですね。

窓を開けたら緑が見えますし、近くに川や山があり、もちろん空気も美味しいです。私としては都会の真ん中よりも住みやすさを感じています。 

氷川渓谷

矢作さん 次に東京都心部と違う点は、体験できるアクティビティです。

奥多摩は多摩川上流部に位置しており川の水が綺麗なため、水辺のアクティビティが盛んです。ウォータースライダーのように沢を下るキャニオニングがここ数年で非常に人気が高いです。

キャニオニング 提供:奥多摩町産業観光課

また、白丸湖にはSUP(スタンドアップパドルボート)やカヌーを体験しに多くの方が訪れます。

白丸湖でのSUP(スタンドアップパドルボート)
提供:奥多摩観光協会

──水辺のアクティビティが盛んとなると、やはりおすすめの季節は夏でしょうか?

矢作さん キャニオニングはどうしても夏推奨になりますが、奥多摩は年中楽しめます。

春には都心よりも約10日遅れで桜が咲くので、都心で早く散ってしまったとしても、奥多摩に来ていただくと引き続き満喫いただけます。

東京都心よりも約10日遅れで開花する桜(見はらしの丘 遊歩道)
提供:奥多摩観光協会

また、ソメイヨシノが散り始める4月中旬以降には、山の斜面で自生しているヤマザクラが開花します。シートを敷いてお花見というわけにはいかないのですが、新緑が芽吹く中で見られる一味違った桜もいいものです。 

矢作さん 秋は紅葉ですね。カエデ類をはじめとして奥多摩の山には多様な種類の木が自生しています。

また、カヌーに乗りながらの紅葉狩りは、秋でも楽しめる水辺のアクティビティです。

氷川渓谷の紅葉
提供:奥多摩観光協会

矢作さん 冬はキャンプが盛り上がっています。

以前は冬のキャンプ場はテントもまばらだったのですが、ここ数年は流れも変わって、冬キャンプを楽しむ方が増えています。

冬キャンプ
提供:奥多摩町産業観光課

全国的にも珍しい「綺麗なダム」

──奥多摩は清らかな水のイメージがありますが、水の状態はいかがですか?

矢作さん はい、非常に良い状態だと言われています。東京都水道局が森の管理をしていることもあり、水が綺麗な状態に保たれています。

昔は無闇な木の伐採により、雨のたびに土砂崩れで川が汚れてしまっていたそうです。ですが、明治の頃から東京都が森林の手入れを始めたので、今では東京都から山梨県にまでまたがる立派な水源林(※)になりました。

※水源地で、雨水などを吸収して水源の枯渇を防いだり、水流が一時に河川に集まって洪水を起こすのを防いだりする目的の森林。引用元:コトバンク

整備された林

矢作さん また、水源地の奥多摩には小河内(おごうち)ダムがあり、全国的に見ても綺麗なダムと言われています。

ダムの抱える問題として、ダムの底にどんどん泥が溜まってきてしまい、既定の量の水が貯められなくなってくることがあります。

ですが、小河内ダムは上流の森の管理がしっかりされているので、泥が溜まることもほとんどなく、正常に機能しているそうです。 

小河内ダム
提供:奥多摩観光協会

──観光協会の方で水の状態を保つために活動されていることはありますか?

矢作さん 清掃と声かけ活動です。

川辺でバーベキューをされる方の中には、残念ながらゴミを置いて帰ってしまう方もいるので、定期的に清掃をしていました。

また、利用者の方にゴミを持ち帰っていただけるように「東京都 奥多摩ビジターセンター」の方々と協力して、氷川渓谷でマナーを説明するなどの声かけ活動をしていました。

その甲斐もあってか、少しずつマナーが向上している印象はあります。以前はゴミを置いていく人の割合が大きかったのですが、今年はゴミを自動車に乗せて帰られる人も多く見受けられました。

氷川渓谷の水辺

「自分で楽しみ方を見つけられる」奥多摩の宝探し要素

──奥多摩にきたら「これだけは食べてほしい!」といった食材はありますか?

矢作さん まずはわさびですね。わさび栽培には奥多摩の清らかな水が不可欠です。

目の細かいおろし金で擦ってもらうと味や香りが出てくるので、チューブのものとは別物に感じてもらえると思います。

採れたてのわさび

矢作さん また、奥多摩には「わさび兄弟(東京わさび)」という実のご兄弟でわさび栽培に取り組まれている方々がいます。土日にキッチンカーを出しているそうです。

メディアに取り上げられたこともあり、以前よりも「わさびやわさび丼が食べられる場所はありますか?」と質問されることが増えました。

わさび兄弟が提供するわさび丼 

矢作さん もう一つのおすすめは奥多摩ヤマメです。

「3倍体(※)」といわれる、通常のヤマメよりサイズが大きい魚になります。通常のヤマメは2年ほどで産卵して、体長が小さいまま死んでしまうのですが、3倍体の奥多摩ヤマメは産卵をしなくなるため、通常のヤマメの数倍の大きさに育ちます。

通常サイズ(20センチ)だと塩焼きぐらいにしかできなかったのですが、奥多摩ヤマメ(40センチ)はムニエルや刺身など幅広い食べ方ができるようになるのもポイントです。

※3組の染色体をもつ魚のこと。通常の魚は2組の染色体を持つが、受精卵をぬるま湯につけることで3組の染色体を持つようになる。3倍体のメスは性成熟しないので産卵をしなくなり、肉質をキープしたまま体長が大きくなる。(引用元:こども水産大学

奥多摩ヤマメ
引用:東京都農林水産振興財団

──奥多摩は水系のアクティビティや日原鍾乳洞が有名ですが、矢作様の「一般的にはあまり知られていないおすすめの楽しみ方」はありますか?

矢作さん 奥多摩は自分でしたいことや、楽しみ方を見つけられる宝探し要素がある場所だと思っています。

奥多摩の90%以上は森林なので、植物観察をしても良いですし、自分のボートを持参して川で遊ぶこともできます。

リモートワークの方は、水辺に椅子とパラソルを持ってきてゆったりと仕事をするのも良いですよね。

氷川渓谷

矢作さん 誰かに決められたことをするのではなく、訪れた人自身がしたいことを実行できる余裕があるところが奥多摩のいい部分だと思っています。

ですので、既成のアクティビティやツアーに参加していただくのももちろん良いですが、自分たちで開拓する楽しさもあるのが魅力の一つかなと感じています。

氷川渓谷で誰かに積まれた石 

観光協会の人も知らなかった!まだまだある奥多摩の魅力

──観光協会として奥多摩をもっとこうしていきたい、といった展望はありますか?

矢作さん 奥多摩町単体ではなく、複数の街と連携して奥多摩エリア全体の魅力で人々を地域に引き入れたいですね。

現在地域の宿や飲食店と連携して、「『青梅·奥多摩ごぜん』プロジェクト」を推進しています。具体的な活動は、青梅市と奥多摩町で生産されている食材をふんだんに使った季節メニューの開発です。

『青梅・奥多摩ごぜん』プロジェクト
引用元:青梅・奥多摩ごぜん

矢作さん 新しい商品開発や地元食材の掘り起こしを目的にしているのですが、プロジェクトを進める中でわたしたち観光協会のメンバーも知らなかった食材が出てくることもあります。

以前みんなで驚いたのは「青梅市のレモン」です。「この辺ってレモンが採れたんだ!」と盛り上がりました。

奥多摩を訪れる方は「せっかくなら地域のものを食べたい」と思ってくださっていて、対して奥多摩の人たちには「できるだけ地元のものを使いたい」という想いがあります。プロジェクトによって、両者を結びつけられたらなと思っています。

一般社団法人 奥多摩観光協会

〒198-0212 東京都西多摩郡奥多摩町氷川210
TEL:0428-83-2152

この記事の執筆者
山梨 さや

大阪から上京して3年目の30代インタビューライター。趣味は美術館巡り。気になる展覧会に出掛けては、つい図録を買ってしまう。好きなものは岩盤浴と犬。

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