皆さまは、「中間支援団体」という団体をご存じでしょうか?
自らが何かを実行するのではなく「実行する人たちを助ける」。1人ではできないことをできるように「サポートする」。そんな団体を「中間支援団体」と言います。
今回は、近畿圏の中間支援団体「エコネット近畿」の正阿彌さんに、社会課題に立ち向かう人々を陰ながら支える活動についてお伺いしました。
NPO法人 エコネット近畿
正阿彌 崇子さん
副理事長(事務局長兼務)
「市民の環境活動を支える団体を」セブンイレブンの声かけがきっかけ
──まずは、エコネット近畿様を立ち上げられた経緯を教えていただけますか?
正阿彌崇子さん(以下、正阿彌さん) 2000年ごろ、環境活動が活発になってきたのを受けて、セブンイレブンから「市民の環境活動を支える団体を作ってほしい」と、近畿圏の市民団体に声かけがありました。
それがきっかけとなり、集まった市民団体で3年間の議論の末、2006年に設立されたのが中間支援団体の「エコネット近畿」です。
やはり、市民団体や行政、企業でも、1つだけではできることが限られますよね。
「こんなものがあったら、さらに活動が良くなるだろう」と考えながらも、「自分たちだけではできるはずがない」と、あきらめてしまっていることがあると思います。
それらの実現を支援するために、その活動をサポートしたり、同じ目的で活動している人たちや団体を結びつけたりするのが、私たちの活動です。
──活動のビジョンもお伺いできますか?
正阿彌さん エコネット近畿は、「人々の夢も、地球の夢も~関わりあって、豊かな暮らし、生き方を~」をスローガンに活動しています。
そして実は、ホームページにも載せているイラストにも、エコネット近畿の実現したい想いが込められています。
「人々が夢を抱けるような社会になってほしい」という願いは、子どもからお年寄までの人々やさまざまな動物として。
そして、地球にはいまだに人には見えていないものや、わかっていないものが山ほどあると思います。「そういったものも、一緒に生きていけるように」という願いを、妖怪や鬼などの不思議な生き物として、描いているんです。
私たちは、「どうしたら地域を、地球をよくできるのか」みんなで会話ができる場、繋がれる場を作ることで、このようなビジョンを実現したいと考えています。
広域の環境活動を把握しているからできること
──「繋がれる場を作る」というお話がありましたが、「水辺の交流会」もそのような活動の1つですか?
正阿彌さん 水辺の交流会は、「河川活動を通して、プラスチックごみを減らそう」をテーマに、河川活動を実施している団体を集めて、それぞれの活動発表やパネルディスカッションを実施しました。
ですが、この活動も私たちが主催したのではなく、行政からご相談を受けて支援させていただいたものです。
といいますのも、私たちは、何かの活動を実施したり主催したりする団体ではありません。「地域の人たちの事業に寄り添う」のが、私たち「中間支援団体」なんです。
水辺の交流会では、琵琶湖から淀川流域にいたるまで広域の環境活動を把握している私たちが、それぞれの団体を紹介する形でサポートしました。
川に関する活動でいいますと、「大川クリーン活動」での支援は、HP上で活動するなどの広報をしたり、ゴミばさみ用のトングをお貸ししたりといった内容です。
──エコネット近畿の会員になれば、そのような支援を受けられるのでしょうか?
正阿彌さん 支援は、会員であるかどうかに関わらずいたします。ただ、会員の方へは手厚くさせていただいていますね。
基本は団体での入会を推奨していますが、個人での入会も問題ありません。行政や企業などは特に団体として入会するハードルが高いようで、個人で入会してご相談をされる方も多いです。
地域の課題解決を事業へ
──「地域の人たちの事業に寄り添い、サポートする」という、中間支援団体としての活動を、詳しく教えていただけますか?
正阿彌さん 私たちは中間支援団体として、大きく4つの柱で活動しています。
【エコネット近畿の4つの柱】
1つ目は、団体や行政、企業の方が、「地域の課題を解決したい」と考えたときに、それを「事業」としてお金を回していけるように支援をする、「環境事業支援」です。
具体的には、やりたいことをヒアリングして、事業の組み立てからわからない場合には、ビジョンや年間計画の作成から伴走します。
資金がない場合には、補助金や助成金の制度、クラウドファンディングなど、資金調達の方法を一緒に考えていますね。
他にも、視察や研修をコーディネートするなど、相手の段階によって必要な支援をしています。
仕事に活かせるまで講座は続く
正阿彌さん 活動の2つ目は、人材育成です。
特に、私たちが育成したいと思っている人材は、「事業を起こせる人」「事業を起こした人の相談に乗れる人」「地域で事業をコーディネートできる人材を育てる人」になります。
──では、昨年からスタートしたローカルSDGsリーダー養成講座も、事業を起こせる人を育てる目的で実施されたものですか?
正阿彌さん この講座は、「地域の課題を正確に把握して、何が必要かを考えることができる人」「環境だけではなく、福祉や暮らし地域経済の課題まで、同時的に解決できる人」を育てる目的で実施しました。
そして、できればその課題解決に対して、ボランタリーではなくて「仕事」として、長年向き合いたいと思ってくれる人を育てたいという思いで始めた講座です。
──どのような方が参加されていますか?
正阿彌さん 今まで参加されている方は、市民団体や行政の方に限りません。一般企業やメディア関係、信用金庫の方など、業種の幅もかなり広いです。
年代としては、40、50代の中堅層が中心で、今やっていることをもっと極めたいと、参加されている方が多いように感じます。
この講座の特徴は、学びを地域で生かして「仕事」にしてもらうために、講座で終わらないところです。
講座終了後も、インターンシップがしたい場合にはマッチングをしたり、事業を始めた場合にはその相談にのったりと、アプローチや個別相談を続けています。
──具体的な講座の内容もお伺いできますか?
正阿彌さん 今年実施した「さかなの目コース」は、時代の流れを読むために、デジタル地図書きを実践しました。地域で調査したことを地図に落とし込み、見える化をすることで、課題を解決していくという内容でした。
1つの団体ではできないことを実現するために
──4つの柱の3つ目の活動についても教えていただけますか?
正阿彌さん 3つ目は、資金調達のお手伝いです。先ほど「環境事業支援」のなかでもお伝えしたとおり、直接資金調達の支援もしているのですが、ここでいう活動は「お金が回る仕組みづくり」になります。
例えば、信用金庫のようなコミュニティバンクと組んだり、助成金を出している企業や財団などと一緒に「社会的にお金が回る仕組みづくり」を考えたり。
それだけではなく、寄付とは違った「社会的投資のようなこと」が一般の方もできる仕組みづくりも研究しています。
これは、一般の方が「今は使わない預金がある」ときに、銀行に預ける以外に「自分の住んでいる地域、または自分が興味のある課題解決に投資します」という選択肢を作りたいという思いからです。
やはり事業やプロジェクトでは、資金に困ってしまう方が多いんです。少しでも地域課題の解決にお金が回っていく仕組みをつくりたいですね。
──「環境支援」「人材育成」「資金調達の仕組みづくり」と、4つの柱の3つの活動までお伺いしました。最後の4つ目の活動についても教えてください。
正阿彌さん 活動の4つ目は、「ネットワークの構築」です。これはエコネット近畿が、他の支援団体などとの関係をつくることを指しています。
私たち自身がさまざまな団体と繋がりを持つことによって、ご相談を受けても私たちだけでは答えられないこと、サポートが難しいことも、ネットワーク全体で支え合う仕組みを作っているんです。
ここまでお話した、「環境支援」「人材育成」「資金調達の仕組みづくり」、すべてそうだと思うのですが、1つの団体だけで実践することは難しいですよね。
1つではできないことの実現をサポートする。それが私たち「中間支援の役目」だと考え、この4つの柱で活動しています。
「エコネット近畿があってよかった」を目指して
──今後の展望をお伺いできますか?
正阿彌さん 実は私たちの活動に、このような4つの柱を立てたのは一昨年からなんです。コロナ禍もあり、改めて「私たちに何ができるのか」を、考え悩みながら立てました。
この4つの柱の活動をとおして、これから5年後10年後、もっと経ったときに、「エコネット近畿があったから、地域がこんなふうに良くなりました」「エコネット近畿があったから、みんなが繋がれた、仲良くなれた」と、誰か1人にでも言ってもらえるような団体になりたいと考えています。
そして、そんな団体になれたら、あのビジョンのように「人々の夢や地球の夢を支えられた」と思えるかもしれませんね。
私たちは「影の存在」です。ですから今はひたすら陰ながらですが、少しでも多くの方の相談にのってサポートできるよう頑張っていきます。
NPO法人エコネット近畿
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