風土×水×米×技によって作り上げられるほまれ酒造の日本酒。地元・喜多方を盛り上げながら、世界を見据えて進化し続ける

ほまれ酒造は、福島県喜多方市に蔵を構える創業100年超の酒蔵です。IWCチャンピオン・サケを受賞するなど、世界でも認められる酒を作り続けています。

今回は自らも日本酒を愛してやまない、ほまれ酒造4代目である唐橋裕幸さんに、日本酒についてや日本酒造り、地元喜多方への想いについてインタビューしました。

ほまれ酒造株式会社

唐橋 裕幸さん

代表取締役社長

風土と英知が生み出す極上の「再現性」のある酒

──ほまれ酒造の歴史について教えてください。

唐橋裕幸さん(以下、唐橋さん) ほまれ酒造は大正7年に、私の曾祖父が創業しました。もともとは米問屋でその卸先であった酒造が酒造りをやめるということで、その設備を引き継ぐ形でスタートしたようです。

平成30年(2018年)に創業100年を迎え、現在私が4代目としてほまれ酒造を経営しています。

──ほまれ酒造さんが作られる日本酒の特徴はどんなところにありますか?

唐橋さん 喜多方名水がなければ、会津ほまれは生まれなかったといっても過言ではありません。

喜多方の北端にそびえたつ霊峰飯豊山に降り積もった雪が、100年かけて地層に染みわたって出来上がる喜多方名水は、日本100名水に選ばれるほど水質が高く、甘みがあり柔らかい口当たりが特徴です。水量も豊富で、喜多方に多くの酒造があるのはこの喜多方名水のおかげと言えるでしょう。

すべてではありませんが同じ喜多方の水で育ち米わらの肥料を使った地元産の酒米を使用したり、熟練の感性を持つ杜氏とデジタルによる数値的な管理を融合させることで、「再現性」の高い酒造りを行っています。

つまり私達の酒は喜多方という土地の風土と杜氏をはじめとする先人からの英知の結晶なのです。

──「再現性」が高いとはどういったことですか?

唐橋さん 偶然美味しい酒になった、ということでただ「出来た」にすぎません。イメージ通りに仕上げることこそが「造った」と言えると考えています。

だからこそ、たまたま今年は美味しくできたということではなく、常に美味しい酒を造り続けるために努力し続けることが「再現性」であり、「再現性」を目指すからこそより良質な酒造りにつながっていくと思っています。

世界で認められた「会津ほまれ 播州産山田錦仕込 純米大吟醸酒」

──代表酒「会津ほまれ 播州産山田錦仕込 純米大吟醸酒」の特徴を教えてください。

唐橋さん 「会津ほまれ 播州産山田錦仕込 純米大吟醸酒」は南国系のフルーツを思わせるようなフルーティーながらもキレも余韻も楽しめる、甘みと酸味のバランスがとれた味わいが特徴す。

食中酒として最適で、和食はもちろんなのですが、力強い味わいのためステーキや中華料理などのすこしこってりとしたお料理と合わせても満足していただける味わいです。

──栄誉あるIWCのサケ部門で世界一をとられているのですね?

唐橋さん はい。2015年に世界一を受賞しました。その前後も9年連続金賞を受賞していますし、チャンピオンになったことで世界で認められる酒造りができているととても嬉しく思いました。

さらに、2011年の東日本大震災を経験し、風評被害などを受け笑顔が少なくなっていた福島県にとって、私達の受賞は1つの力になったのではないかと感じています。日本酒で復興していこう、皆の気持ちが一つになった瞬間でもありました。

クオリティを追求したブランド「からはし」

──代表酒会津ほまれ以外のブランドについて教えてください。

唐橋さん 「からはし」「喜多方テロワール」というブランドがあります。まず一つ目の「からはし」は、IWCのサケ部門において世界一を受賞したことで、今まで手掛けたいと思いつつなかなか着手できていなかった専門店向けの徹底的にクオリティにこだわった商品を作って行こうと決めて手掛けた商品です。

──通常の日本酒造りと何が違うのでしょうか?

唐橋さん 作る工程や日本酒造りへの想いは変わりませんが、管理という面でかなり徹底しています。

具体的に言うと、どんな工程の作業も丁寧に行い、生で貯蔵して旨味が出た後に1回の瓶火入れをし品質を保つためにすぐに-5℃の冷蔵庫で急冷して貯蔵し、出荷までの間徹底的に管理していきます。

こうしたこだわりが詰まった「からはし」ブランドの酒も、夢の香と山田錦という酒米を使った純米吟醸酒2種においてIWCでそれぞれ賞をいただいております。

地元・喜多方を盛り上げる「喜多方テロワール」

──もう1つのブランド「喜多方テロワール」についても教えてください。

唐橋さん 喜多方名水で作り上げる私達の日本酒ですが、さらに喜多方の素材を使って造っていきたいと思って手掛けているのが「喜多方テロワール」です。

テロワールとはワインなどでよく使われているのですが、土地の個性を活かした味わいという意味があり、まさに私達の想いと一致しています。

──酒米も喜多方産のものを使用されているのですか?

唐橋さん その通りです。もともと福島県では生産される酒米は五百万石という種類がメインでした。それは気候の問題もあり、酒米として人気の山田錦などは育成が難しいと言われていたのです。

難しいのは承知の上で、やはり喜多方で育った山田錦で酒が作りたいという想いがあり、地元の契約農家であるジュイタックさんに相談しました。私達の想いに共感いただき、様々な工夫を凝らして山田錦の栽培を成功させてくれたのです。

今では、その山田錦と福島県で開発した夢の香、さらには五百万石を使い喜多方テロワールを展開しています。

──その他にも何かこだわりがあったら教えてください。

唐橋さん 喜多方のことを知ってもらいたいという気持ちでブランド名に喜多方という名称を入れたことに加えて、ラベルは喜多方市の形をシンボルマークとしています。

代表酒である会津ほまれに喜多方ではなく「会津」を入れてるのは、創業当時は喜多方という地名の知名度が低く、多くの方に福島の酒であることを知って欲しいということで「会津」とつけていたようです。

酒蔵見学と合わせて楽しめる日本庭園「雲嶺庵」と直売所

──実際に日本酒を造っている酒蔵の見学ができるのですか?

唐橋さん 自由に見学いただくこともできますし、ガイドによる解説付きで見学いただくこともできます。なかなか見学することはないかと思いますが、酒蔵を見学していただくことでより日本酒に興味をもっていただけると嬉しいなと思っています。

──酒蔵の周りには1300坪もの広さの庭園「雲嶺庵」や直売所があると聞きました。

唐橋さん 曾祖父や祖父が作り上げた日本庭園です。もともとは身内で楽しんでいたのですが、とても美しい庭園であるため是非多くの方にみていただきたいと思い、無料で自由に見学いただいております。

また併設の直売所では、常時10種類以上の日本酒をご試飲いただけるように準備しており、散策と合わせてお楽しみいただければと思っています。試飲いただいて気に入った一本が見つかりましたら、ご自宅でも楽しんでいただけると嬉しいですね。

日本酒のよさ、楽しみ方を世界にも広めていきたい

──日本酒の魅力はどんなところにあると思いますか?

唐橋さん どうしても日本酒は先入観で嫌われがちです。二日酔いになりやすいとか、太りやすいとか、間違った情報が広がってしまっています。

本当は日本酒とは香り高く、色々なシーンで楽しんでいただける飲み物です。食事と合わせるもよし、食前酒として楽しむもよし、寝る前のリラックスタイムのお供にもぴったりです。まずは日本酒の楽しさを知っていただきたいですね。

そして、よく飲み方について温度や方法などに厳しい意見もみかけますが、氷を入れてもいいですし、常温でもいいですし、お好みの方法で日本酒を楽しんでいただきたいです。

──日本酒は海外からも注目されているのですか?

唐橋さん 日本食レストランの広がりの影響で、日本文化に注目が集まっており、その中には日本酒も含まれています。またIWCの受賞やG7伊勢志摩サミットで各国首脳への贈答品に採用されたこともあり、海外からの問い合わせも多くいただいております。だからこそ、通常の日本酒に加え日本酒とチョコレートや果実を組み合わせたリキュールなども展開しています。

日本酒の未来を考えるにあたり、日本だけでなく世界も視野に入れていく必要があります。多くの方に日本酒を楽しんでいただき、もっと好きになっていただけるようこれからも「再現性」の高い酒造りをしていきます。

喜多方や福島を盛り上げる、酒ツーリズムやイベントを展開

──酒造りだけでなく、その他にも地域を盛り上げる取り組みをされていると聞きました。

唐橋さん アメリカに留学した際にワインで有名なナパバレーを訪問し、ナパバレーのワイナリーを巡るツアーがあることを知りました。喜多方名水を使った酒蔵が喜多方には12ほどの蔵がありますし、是非ツアーをやってみたいと思いました。

現在それを実現し、のんびりウォークと題して実施しています。遠方からも来ていただき、多くの方に楽しんでいただいています。これも喜多方を盛り上げるのはもちろんですが、日本酒のファンづくりに役立って欲しいと願っています。

──地域のために色々と実施されているのですね。

唐橋さん やはり地域も日本酒も盛り上げたいですから。のんびりウォークだけでなく、その他にも乾杯まつりや冬に行う酒フェスタなど、志向を変えたイベントを地元の酒蔵と協力し色々と行っています。

今は喜多方がメインですが、今後は30以上ある会津の酒蔵とも連携し、さらに会津や福島県全体を盛り上げて行ければと考えています。

ほまれ酒造株式会社

〒966-0902 福島県喜多方市松山町村松字常盤町2706
TEL:0241-22-5151 (平日 9:00~16:30)
FAX:0241-24-4600

この記事の執筆者

藤原 明日香

某エネルギー会社のハウスエージェンシーに10年間勤務、紙媒体を含むディレクション、企画・編集、イベントなど幅広く対応。2021年に退職後フリーランスのインタビューライターとして200名以上に話を聞き、その人らしさを感じてもらえる記事作成を行っている。

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