森を守るために国産の割り箸をつくる|JUON NETWORKの取り組み

大学生協と学生たちの思いから生まれたJUON NETWORK。その活動内容は、森林保全から割り箸の製造・販売のコーディネート。働き手が減りつつある、農家さんのお手伝いまでと多岐に渡ります。

今回は、認定特定非営利活動法人JUON NETWORKの理事・事務局長・鹿住 貴之さんに、水源や環境を守るための取り組みや私たちにできること、イベントの様子などを伺いました。

認定特定非営利活動法人 JUON NETWORK

担当者 鹿住 貴之さん

理事・事務局長

学生たちのボランティア活動を支える

——始めに、JUON NETWORKの設立のきっかけ、沿革を教えてください。

鹿住 貴之さん(以下、鹿住さん) 元々は大学生協※の連合会が、呼び掛けて出来た組織です。大学は短期大学も含めると、日本全国に750校以上あって、そのうち約200校に大学生協があります。大学生協の構成メンバーは、学生がメイン。あとは大学の先生や職員で構成されています。

※大学生協・・・大学生協は「大学生活協同組合」の略で、数ある「生活協同組合」の一つです。利用者の一人ひとりがお金(出資金)を出し合い組合員となり、協同で運営・利用する組織です。

引用元:全国大学生活協同組合連合会ホームページ

大学生協と農山漁村地域の方が出会って、JUON NETWORKを作ることになりました。出会ったきっかけは、ふたつあります。

ひとつめは、過疎地域で学校が廃校になってしまったこと。その廃校になった学校を大学生の合宿施設(セミナーハウス)として、いくつか再利用しました。

セミナーハウスのひとつ、Starforest利賀

ふたつめは、1995年にあった阪神淡路大震災。その地域に元々お住まいの方だけでなく、学生も多数被災しまして、仮設の学生寮を5か所に造ることになりました。そこで徳島県の林業関係者の方とご縁をいただき、1か所は間伐材製の学生寮ができたのです。

さらに、あの時は全国から学生以外にもたくさんボランティアが駆けつけて。学生たちはみんな普段から活動できる場やきっかけがあれば、ボランティア活動をしたいと思っていることを知りました。

都市と農山漁村地域を結びながら、日常的にもボランティア活動ができる組織を作ろうということで、1998年に誕生して今年で25周年です。

森林で活動をするボランティアのみなさん

——事業を通じて大切にしている考え方や思いはどんなことですか。

鹿住さん JUON NETWORKは、元々大学生協が呼びかけたというのもあって、体験重視」を大切にしています。

森林ボランティア団体は、全国に約4,000あると言われていますが、定期的に同じメンバーで参加して活動するところも多いかと思います。私たちの場合は、活動自体がイベントのような感じ。初めての方でも、1回だけでも参加しやすいような環境作りを心掛けています。

阪神淡路大震災で知った林業の現実

間伐材・国産材製「樹恩割り箸」

——JUON NETWORKの事業のひとつに割り箸の普及があります。どういった経緯で割り箸を始めることになったのですか。

鹿住さん JUON NETWORK設立のきっかけとなった徳島の林業関係の方と、出会ったことが始まりです。日本の森林は、手入れが必要です。森林の手入れのひとつが、木を間引く、「間伐」という作業です。

森林は、木を間引いたり整備したりすることではじめて守られるんですね。

そういったなかで出た間伐材を使えないかと考えたときに、大学生協は食堂を持っている。なら割り箸がある!ということで、国産の間伐材を使って、割り箸を作るプロジェクトが生まれました。

——子どもの頃に割り箸を使えば、環境破壊につながると教わりました。割り箸で環境を守るとは、どういったことなのでしょうか。

鹿住さん  森林を手入れして守ることは、まわりまわって水や環境そのものを守ることにもつながります。

割り箸を使うことは、環境にはよくないといったイメージがあるかもしれません。ですが、普通の箸の場合、使い終わったら洗いますよね。

油が強いものであれば、洗剤も多く使うし、流す水の量も必然的に増えます。

大学の食堂でも規模が大きくなれば、排水の基準を超えてしまうことがあるようです。そこで割り箸を使えば、洗い物も排水も減らせますよね。

割り箸制作現場

——そう考えると割り箸を使うことに、罪悪感がなくなりますね。ちなみにJUON NETWORKの割り箸は、何県の木を使っているのですか?

鹿住さん 徳島のものだと、徳島県と高知県など四国。あとは、埼玉県の熊谷市と福島県の南会津町、東京のものもありますよ。

——東京の木で作られている割り箸があるんですか?

鹿住さん 実は東京の36%が森林なんですよ。東京といえば23区で森なんてないイメージですが、西多摩や島しょ部も含めるとそれくらいになります。

東京の割り箸には、ごくまれに埼玉県の秩父の木が入ることもあるようですが、ほぼ東京の木で作られています。

森林での作業風景

——森林を守ることが水源や環境を守ることに、どうつながっていくのでしょうか。

鹿住さん 要は、森は緑のダムということですね。森があることで、木から落ちた葉からスポンジ状の土壌が生まれ、ゆっくりと地下に水を落します。そうして浸透した水がやがて、川から海へ流れていく。

森がないと、川もない。雨が降ったときに海に一気に流れるので、水もすぐになくなります。森があることで、私たちは水を使えるわけです。

みんなで協力して作業します

——私たちが水源や環境を守るために、すぐにできることはどんなことだと思いますか。

鹿住さん 割り箸もそうですが、やっぱり日本の木を使おう!ということですね。

プラスチックは石油でできていて、なくなってしまうものからできている。持続可能ではないと思うんですよ。石油は40年でなくなる。石炭は200年でなくなると言われています。

また、金属類は地球上で埋蔵量が決まっているので、リサイクルが大事ですよね。

お芋畑を手入れ中

それに比べて草や木は、育てれば育てるだけ、作ることができます。使いすぎてはいけませんが、上手に育てて上手に使えば持続可能な資源ですよね。

割り箸にしても輸入品の方が値段は安い。けれど、運ばれてくるまでにかなりのエネルギーが使われています。そういったことを考えて、なるべく地産地消、木は国産のものを使うと、意識してほしいですね。

「森林の楽校」、「田畑の楽校」とは?

山に入っての間伐

——JUON NETWORKでは、イベントが多く開催されていますよね。「森林の楽校(もりのがっこう)」について聞かせてください。

鹿住さん 詳しいことはホームページにもありますが、「森林の楽校」は、森づくりを体験して、地元の方との交流を目的としています。

森林で作業して、廃校になった学校に宿泊したり、カヌーで川下りやきのこ狩りの体験などができます。

また、全国18か所で開催していて、2023年度は33回開催予定です。参加する場所によって楽しみ方が変わります。日帰りコースもありますよ。

草を刈るのも重要な作業

——楽しそうですね。「田畑の楽校(はたけのがっこう)」はどんな感じですか?

鹿住さん 農村部にお住まいの方と農業に興味がある都市在住の方が、出会えるきっかけをつくるプログラムです。

林業もそうですが、農村部も過疎や高齢化が進んでいるので、地域で助け合っていくことがむずかしい。そこで繁忙期にボランティアとして手伝ってもらえる方を募集しています。

棚田での作業風景

こちらは全国4ヵ所。2023年度は21回開催予定です。
開催場所はどこかというと、山梨県のぶどう農家さん、長野県のりんご農家さん。三重県はみかん農家さん。あと、和歌山県の米農家さんです。棚田での田植えや稲刈りなどが体験できますよ。

みかんの収穫

——どんな方が、参加されているんですか。

鹿住さん 他の団体と比べると大学生協が呼びかけていることもあって、学生や20代以下の方の参加が多いです。

ただ、最近だと年代はさまざまで、学生だけでなく、30代や40代、80代の方も参加されています。香川県の「森林の楽校」など、親子向けにやっているプログラムもありますよ。

森と人をつなぎ、農山村部に定住する人を増やす

農家さんといっしょに作業します

——これまでJUON NETWORKに携わってこられて、楽しかったことやうれしかった思い出はありますか。

鹿住さん JUON NETWORKが立ち上がって間もない頃のことですが、「森林の楽校」に、大阪の高校3年生の女の子が参加してくれたことがありました。

「森や自然に興味があるから、どんなものなのかを見に来た」と、徳島までやってきたんですね。その子が「森林の楽校」が終わるときに、「大学で林学を学びたい」と言ってくれたんですよ。

うちは大学生協が母体なので、その後大学の資料とかいろいろ送りましたが、しばらく音沙汰がなかった。その翌年に「大学に受かって、今林学を勉強しています」と連絡をもらったときは、すごくうれしかったですね。

たわわに実ったぶどう

——JUON NETWORKとしての今後の展望や目標を聞かせてください。

鹿住さん やっぱり農山漁村に移住する人が、増えてくれるとうれしいですよね。コロナ禍を経て、リモートワークが普及して農山漁村に移住する人も増えてはいると思います。

都市部に住んでいる方と農山漁村地域に住んでいる方のつながりの入口をもっともっとたくさん作って、多くの方に行っていただけたらなと。

都市から農山村地域に行って、そこの仕事を手伝うのも大切ですけど、やっぱり農山村地域に人が住むっていうことが大切。人と人、都市と農山村や漁村をつないで、最終的にはその場所が気に入って住んでくれる人を増やしていけたらいいなと思っています。

認定特定非営利活動法人 JUON NETWORK
〒166-8532 東京都杉並区和田3-30-22 大学生協杉並会館5F
TEL:03-5307-1102 
FAX:03-5307-1091

この記事の執筆者

chillco

横浜市在住。ダメOLからライターへ転身。旅行や不動産、街の情報など、Webを中心に執筆。最近は取材やインタビューなどを中心に活動中。

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