「夢千代日記」で有名な山陰の名湯「湯村温泉」と「湧泉の宿ゆあむ」の人気の秘訣とは!?

「湯村温泉」は兵庫県北西部、日本海側の山陰地方に位置し、鳥取県に接する地域にあります。古くから山陰の名湯として名高く、湧出量が豊富な温泉のため、身体が芯まで温まると評判です。

吉永小百合さん主演の「夢千代日記」のロケ地でもあったため、その風情を懐かしむため訪れる方もいます。その温泉街の中で、旅館の趣を残しつつ現代のライフスタイルに合わせた居心地のよい宿泊施設として「湧泉の宿ゆあむ」が人気です。

今回は、同宿の広報を担当されている高木麻衣さんに話をうかがいました。

兵庫の隠れ宿 湯村温泉 「湧泉の宿 ゆあむ」

担当者 高木麻衣さん

広報

NHKドラマ「夢千代日記」の舞台に

夢千代の里 湯村温泉街の光景

──湯村温泉(ゆむらおんせん)の概要からお願いします。

高木 麻衣さん(以下、高木さん) 兵庫県の北西部にあり、山々に囲まれた静かな温泉街です。開湯は平安時代初期の848年で長い歴史を持ちます。

特に、吉永小百合さん主演の「夢千代日記」(1981年のNHKドラマ)のロケ地でしたので、湯村温泉は全国的に知られるようになりました。

今でもその風情を懐かしむために、訪れる観光客の方はとても多く、「夢千代の里」とも言われています。

※夢千代日記・・・社会や人間の断片を切り取り、人生を深い視点で捉えるヒューマンドラマというコンセプトのシリーズ。現在、温泉街の中心部である荒湯のそばに吉永小百合をモデルにした「夢千代の像」が建てられています。シリーズは、「夢千代日記」「続 夢千代日記」「新 夢千代日記」と続き好評でした。このほか映画化や舞台化もされています。

また、関西の温泉街では城崎温泉や有馬温泉が有名ですが、湯村温泉は穴場的スポットといえます。観光的なものは少ないですが、温泉とお食事でのんびりされたい方にオススメの温泉街です。

詳しく後に話しますがお食事も高い評価で、泉質も炭酸水素塩泉(たんさんすいそえんせん)と良好で美人の湯として名高い。肌に優しいのでお子様や肌が弱い方にも最適です。

※炭酸水素塩泉・・・療養泉の中の塩類泉に分類。ある種の美肌効果も期待されます。

他の温泉では加温が必要な場合がありますが、湯村温泉の源泉温度は98度と高く、逆に加水をしないと熱すぎるという贅沢な悩みがあります。しかしながら身体の芯まで温まり、朝も爽やかに起きやすくなります。

旅館のおもてなしとホテルの機能性が融合

「湧泉の宿 ゆあむ」エントランス外観

──「山陰湯村温泉 湧泉の宿(ゆうせんのやど)ゆあむ」は和モダンな温泉宿ですね。

高木さん 旅館のおもてなしを残しつつも、プライベートも守られる和モダンの温泉宿がコンセプトです。

部屋もベッドタイプが多く、構成としては旅館よりもホテルに近い。ベッドタイプだとお部屋にお邪魔する布団敷の作業がありませんから、プライベートも確保できます。

ところどころに地元・兵庫県の伝統工芸を配置し、県を再発見できる工夫をしています。

照明には豊岡杞柳細工を使用

たとえば、照明には豊岡杞柳細工(とよおかきりゅうざいく)、エントランスの風鈴は、姫路市の明珍火箸(みょうちんひばし)、時計は小野市のそろばん、キーホルダーは豊岡カバンの革を使っています。

風鈴は姫路市の明珍火箸(みょうちんひばし)

※豊岡杞柳細工・・・兵庫県豊岡市で生産される杞柳(きりゅう)製品。杞柳製品とはコリヤナギの自然木を使い、強靭でしなやかな風合い、柔らかさと粘りを活かしながら、手で一つ一つ編み上げる技法。コリヤナギや籐(とう)などで編んだ行李(こうり)やバスケット、インテリアなどの木工品です。国の伝統的工芸品並びに特許庁の地域ブランドに指定されており、少なくとも奈良時代には成立し、長い歴史を持ちます。

※明珍火箸・・・兵庫県伝統的工芸品の一つ。19世紀初頭、姫路藩主である酒井家などに仕えていた明珍家が技術をいかして火箸をつくったのが始まり。打ち合わせると澄みわたった音色がすることから、最近では火箸を利用して風鈴もつくられています。

小野市のそろばん時計

※小野市のそろばん時計・・・兵庫県小野市は、そろばんの二大生産地の一つ。最近ではそろばんをもとに時計などさまざまな製品を開発・販売しています。

こうした和の文化や伝統を施しながらも機能性はホテルです。お部屋は旅館であれば和室がメインですが、ここはスタイリッシュなデザインが多く、洋室に加えて和室をリニューアルした和モダン客室がベースとなっています。

──宿の風呂の構成はいかがですか。

高木さん 湯村温泉は、層の岩石の間をじっくりと時間をかけて地上に出てくるのでミネラル分も豊富な温泉です。

無色無臭ですが、お湯の泉質に重曹が含まれているため、少しトロっとしています。宿では大浴場を男女それぞれに用意し、朝と夜に入れ替え制になっています。

「湧泉の宿 ゆあむ」大浴場

タオルは毎回新しいものを使えるので、手ぶらで温泉に入ることができます。タオルはやはり毎回新品なものを使うと心地よく、乾かす手間もありません。

アメニティでは、POLAなどのシャンプー、コンディショナー、ボディーソープ、化粧水・乳液・クレンジングを完備しています。

湯上りところでは、温かくなった体をお茶でクールダウンできます。コロナ禍では使用を中止していたのですが、現在はマッサージチェア2台を用意、お風呂上がりの休憩に利用可能です。

宿の温泉は、神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺などに効能があります。

──宿をご利用されるのはどんな方が多いですか?

高木さん 湯村温泉は静かな温泉街のため、のんびりと過ごしたいとしたいご夫婦などが多く、本宿も同様です。また、温泉自体の評判がよく、泉質も良好なためリピーター様も多くいらっしゃいます。

関西では穴場的な温泉街で観光地というよりも、何度でも訪れたい場所です。外国の方は他のエリアと比べると少なめで、お客様の多くは日本人です。

温泉半露天風呂付客室を新設

温泉半露天風呂付客室新設

──2023年2月に、温泉半露天風呂付客室「かわみ」3タイプが新設されましたね。

高木さん まず露天風呂は外にあるお風呂ですが、半露天風呂は、実際には屋外ではないですが、窓を開けることで露天風呂のように開放感があります。

コロナ禍では、旅行のスタイルもめまぐるしく変化し、3密を避けてプライベートに温泉が愉しめる温泉付客室のニーズが高まっています。

実際、既存の温泉付客室(温泉露天風呂付スーペリア)2室は満室日が多くなっていました。

そこで本宿では、2023年2月から新たに3タイプ5室の温泉半露天風呂付客室を新設しました。

これにより温泉付客室は合計で2室から7室へ、また定員数は最大3名様から6名様となり、ファミリーや3世代のお客様でも宿泊しやすくなりました。

専用の温泉半露天風呂の窓から下に目線を移すと、流れている春来川(はるきがわ)を眺め、川のせせらぎを心地よく聞け、心も大変癒されます。

悪天候を気にせずに窓から春来川を眺めながら入浴できるよう、温泉半露天風呂としました。この新しいお部屋が贅沢さを表しています。

また、湯村温泉は大変湯量が豊富で、天然温泉と水の水栓があるので、ご自身で温度調整もできますよ。

「湧泉の宿 ゆあむ」のすぐ横には春来川が流れている

熱い温泉を楽しまれたい方は熱くできますし、夏であれば加水により、温度を低くすることもできます。ファミリー層でお子様がいらっしゃる場合でも、温度を低めにすることができます。

また、従来からある一般客室の中でも「和モダンツイン」は、おみ足が不自由な方にとっては布団よりもベッドなのでよいと好評で人気です。ほか、「洋室ツイン」「マッサージチェア付き次の間付和室」と部屋のタイプは多様です。

季節折々の創作会席

夏の和会席のイメージ

──続いて、季節の旬の食材を使った自慢の夕食が好評だそうですね。

高木さん 素材を重視した、身体に優しい創作会席となっています。湯村温泉は山の中にありますが、車で20分も走れば、日本海を望めます。

山の幸、海の幸、自然が豊かですので田畑にも恵まれ、地元の農家から仕入れ、お米も「新温泉町産コシヒカリ」を使用しています。

「日本海の海の幸」ではカキ、カニ、イカなどがあり、兵庫県は「但馬牛」が有名ですのでこれらの素材を活用した、和会席が自慢です。(※プランによって食材・お料理内容は異なります)

若い料理長は完全な和食ではなく、洋食の技法も採り入れており、お客様から好評を得ています。

──お酒は、どのようなものをご用意されているのでしょうか。

高木さん 日本4大杜氏のひとつ「但馬杜氏」(たじまとうじ)が醸す、兵庫の地酒「香住鶴」(かすみつる)「竹泉」(ちくせん)などを多数ご用意しております。

但馬杜氏・・・但馬は兵庫県の旧国名で北部地域を指します。この地域は、冬季の積雪が多く農業を行えないため、古くから出稼ぎとして酒造業に携わる人が多かったのです。杜氏数は南部杜氏・越後杜氏に次いで多い。なお、杜氏とは、酒造りの最高責任者で、杜氏の下で働く蔵人(くらびと)を管理・監督します。

しぼりたての日本酒を宿で楽しめる

「KEG DRAFT SAKE」により、しぼりたての日本酒の飲み比べが好評

高木さん 兵庫県の地酒を中心に冷酒も熱燗もご用意しています。また、2023年2月のリニューアルオープン時に、「KEG DRAFT SAKE」を導入しました。

しぼった直後の日本酒には、発酵過程で自然と生まれる微発砲感やもぎたての果実のようなフレッシュ感があります。

「KEG DRAFT SAKE」は、これまで酒蔵でしか飲むことができなかった、「しぼりたて」の日本酒を提供しています。田治米合名会社の「竹泉」という銘柄で楽しめます。

本宿では、「KEG DRAFT SAKE」の3種類ののみくらべを提供中です。本来であれば酒蔵まで足を運ばないと飲めない、しぼりたての日本酒を本宿で飲むことができるので好評です。

お客様によっては地酒を楽しみに旅行される方もいらっしゃいますので、この「KEG DRAFT SAKE」も差別化の一環といえます。

朝食は温かく、地元の素材にこだわる

朝食は「せいろ蒸し」が好評

──朝食も楽しみですね。

高木さん 山陰地方の温かい朝食を提供しています。本宿では特に浜坂名物の竹輪(ちくわ)などの「せいろ蒸し」が好評です。

お客様が席についてから蒸しあげてお席に届けますので、湯気が出てきます。アツアツの「せいろ蒸し」をお召し上がりできます。

食材にもこだわり、契約農家から仕入れた新鮮野菜や地元ブランド「八鹿豚」「新温泉町産こしひかり」と「但熊のこだわり卵」、栄養価の高い「鳥取県東郷湖産しじみ味噌汁」などいずれも山陰地元産です。

新温泉町産こしひかりと地元のこだわり卵を贅沢に使用した、「卵かけごはん」も絶品です。これは地元ではかなり並ぶ、卵かけごはん専門店「但熊」から仕入れた、産みたて卵です。

温かい朝食をお召し上がりいただいた後は、冷たい当館手作り「きなこプリン」をテーブルにお届けします。

立地も竹田城跡や鳥取砂丘からも近い

雲海につつまれる秋の竹田城

──地域周辺の観光についてはいかがでしょうか。

高木さん まず鳥取砂丘までは車で40分です。海岸砂丘として国内で唯一天然記念物に指定されています。砂丘観光のあとは、砂の美術館や、鳥取砂丘こどもの国を訪れることも楽しみです。

「天空の城」・「日本のマチュピチュ」と呼ばれる竹田城跡も車で75分。秋の早朝では雲海につつまれる光景がとても人気です。

また、日本海からも近く、海水浴場もあり、近辺に滝もあるほか、冬にはスキー場も近くにあるため、観光スポットには事欠きません。

──本日のお話をうかがって、宿泊施設における地方創生の役割はとても大きいと感じました。

高木さん 湯村温泉を盛り上げるためには単独では難しいので、ほかの宿泊施設と積極的に連携することが大切です。

今取り組んでいるのは、「”浜坂地エビ”のブランド化」です。

兵庫県の北西端、新温泉町の沿岸部に位置する浜坂港で水揚げされ、そのほとんどが地元で消費する浜坂地エビがあります。

湯村温泉がある新温泉町では、この地エビをブランド化するため、新たな観光資源とするため、各宿泊施設でも一緒になって取組み中です。

こうした各宿泊施設が協力し合うことで地方創生に役立つものと考えています。

兵庫の隠れ宿 湯村温泉 「湧泉の宿 ゆあむ」

〒669-6821 兵庫県美方郡新温泉町湯1610
TEL: 0796-92-1101
(10:00~21:00)

この記事の執筆者

長井 雄一朗

建設業界30年間勤務後、セミリタイアで退職し、個人事業主として独立。 フリーライターとして建設・経済・働き方改革などについて執筆し、 現在インタビューライターで活動中。

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