「ウェーブパークなめりかわ」は富山湾沿岸にある道の駅です。海岸沿いという、少し珍しい場所に立地しています。
富山湾の名産・ホタルイカをテーマとしたほたるいかミュージアムを中心に、海洋深層水の販売・展示を行う「アクアポケット」などがあります。
海や水に触れ、学ぶことのできる観光拠点として賑わっているんですよ。
今回は、「アクアポケット」の魅力や、富山湾で取水される海洋深層水の特徴、全国的に有名なホタルイカ漁について、株式会社WAVE滑川 取締役業務本部長 小林昌樹さんにお話を伺いました。
株式会社WAVE滑川
小林 昌樹さん
取締役 業務本部長
海辺の道の駅・ウェーブパークなめりかわ
──ウェーブパークなめりかわはどんな施設ですか?
小林 昌樹さん(以下、小林さん) ウェーブパークなめりかわは富山湾の海岸沿いにある道の駅です。
ホタルイカについて学べるほたるいかミュージアムをメインに富山湾が一望できるレストラン・売店・カフェを併設しています。
同エリア近くには、海洋深層水分水施設「アクアポケット」もあります。
この道の駅は、オープンした25年前に博物館であるほたるいかミュージアムの駐車場として作られました。物販や特産品が豊富に売られている、いわゆる普通の「道の駅」とは設立の背景が少し異なっています。
アクアポケットについて
──アクアポケットはどんな施設ですか?
小林さん ウェーブパークなめりかわと同時オープンではありませんが、アクアポケットも設立20年以上と長い歴史があります。
もともと滑川では海洋深層水を取水しており、近くにある県の研究機関で海洋生物の養殖や飼育に使われていました。
ただ、海洋深層水そのものが非常に清浄で健康に良いということ、ホタルイカの蓄養に適しているということもあって、この海洋深層水を利用して何かをしようということになりました。
それで、深層水の販売や展示を行うアクアポケットの事業が始まったんです。
──アクアポケットを訪れるお客さんにはどんな方が多いですか?
小林さん 特に近隣に住んでいらっしゃる個人のお客様の利用が多いです。
主に『脱塩水』を買っていかれる人が多いですね。脱塩水とは、ミネラルなどを抜いて深層水の成分をわずかに残した真水に近い状態のお水です。
お客様は、脱塩水でお茶を入れたりコーヒーを入れたりご飯を炊いたりと、生活用水として活用されているようです。
ミネラルが食べ物や飲み物の味を邪魔せず、お水そのものの味が味わえるため、水を嗜好品として楽しみたい方にご好評いただいています。
法人のお客様では『高濃縮水』を買われる方が多いです。
高濃縮水とは、塩分を濃縮し塩分濃度12%から13%くらいに調整された海洋深層水のことです。
それで塩を作ったり、塩の結晶を作って入浴剤の素に使うなど、加工品を作る際に利用されています。
富山湾の海洋深層水はミネラルがたっぷり
──富山湾で取水される海洋深層水の特徴を教えてください。
小林さん 富山湾の海洋深層水は春夏秋冬と季節に関係なく水温が一定なので、年間を通して水温・水質が安定しています。
また富山湾には1,000mを超える非常に深い階層があります。
そのためたくさんの魚が住んでおり、食物連鎖が非常に活発に行われていることから、ミネラルが豊富だというのも特徴の一つかもしれません。
ミネラルがたっぷり含まれたミネラル濃縮水は、普通の真水とは味わいや喉越しにかなり違いがあります。
──ミネラル濃縮水にはどんな特徴がありますか?
小林さん 飲むと舌に強い苦味を感じます。また、口当たりはドロッとしていてゴクゴク飲むことはできません。ミネラル濃度によって味わいやのど越しはまったく異なります。
アクアポケットでお水を買っていかれるお客さまは、脱塩水(真水に近い水)とミネラル濃縮水の両方を買っていき、自分で好きな割合に薄めて飲むパターンが多いです。
水深333mから取水された海洋深層水に触れるタッチプール
──ウェーブパークなめりかわ内で、特に訪れてほしいおすすめのスポットはありますか?
小林さん ほたるいかミュージアムの中には、海洋深層水そのものを展示している「深海不思議の泉」というコーナーがあります。
海洋深層水のプールに深海魚が展示してある、深海魚のタッチプールのようなものですね。
ここで触れるのは、滑川沖水深333mのところから取水された海洋深層水で、水温は5°C。
非公式ですが、日本で3番目に冷たい水のタッチプールと言われています。普段は触れることのできない海洋深層水に直接触り、その冷たさを体感してもらうことができます。
真夏の海の水はねとっとして、粘りが手に残ってしまうような感じがありますよね。
同じ海の水でも、海洋深層水の手触りは水道水のようにさらっとしています。それだけ菌類の繁殖がなく綺麗なお水だという証です。
海洋深層水に直接触れる体験はなかなか他ではできない体験です。深海不思議の泉で、ぜひ一度触れて体験していただきたいと思います。
国の特別天然記念物に指定された滑川のホタルイカ群遊海面
──ホタルイカが多く集まる滑川の海面は、国の特別天然記念物に指定されたと伺っております。どうしてこれほどたくさんのホタルイカが富山湾に集まるのでしょうか?
小林さん 実は漁獲量からいうと、ホタルイカが一番たくさん取れるのは兵庫県の浜坂なんです。
また、福井県や京都府など他の場所でもホタルイカを穫ることはできます。しかし、富山県がそれらのエリアと異なるのは定置網を使った漁をしているという点です。
定置網でも獲れるくらいなので、江戸時代や明治時代でも簡単な漁具でホタルイカ漁が成り立っていたそうです。
こうした漁を可能にしているのは、富山湾のすり鉢のような独特の地形だと言われています。
富山湾独特の地形が質の高いホタルイカ漁を可能に
──富山湾の地形とホタルイカ漁の関係について詳しく教えてください
小林さん 富山湾には海底の地形が急激に深くなっている場所があり、産卵のため海面に浮上してくるメスのホタルイカが岸に寄りやすい地形なのです。
ホタルイカは産卵シーズンの春になると、メスだけが深海から浮上してきます。もし、他の場所のように遠浅の海だと沖合から延々と岸まで泳がないといけません。
遠くから泳いでやってくるホタルイカには、岸に来るまでに外敵に食べられてしまったり、水温が高くなったりすると体が持たないという危険があります。
大量のホタルイカが短時間で海面に浮上し、短時間で元の生息地に戻っていくことが可能なのは深い水深を持つ富山湾特有の地形があるためです。
──富山湾では、ホタルイカは遠い沖合の海ではなく、岸近くの深い海から上がってくるので元気なホタルイカが大量に穫れるのですね。
小林さん また、富山湾では海岸近くにいるホタルイカだけを定置網で獲ります。
海岸近くにいて網に入るホタルイカだけを獲るので、そもそも乱獲など獲りすぎてしまう恐れがありません。
富山湾のホタルイカ漁は持続可能な漁であると言えるかもしれませんね。
また、産卵のためにやってくる体が大きく卵を持っている質の良いメスのホタルイカだけを収穫できるという点も富山のホタルイカ漁の特徴です。
沖合まで行ってする漁では、卵がなく痩せ細って小さいオスのホタルイカまで獲れてしまいます。
富山湾のホタルイカ漁は、沖合で漁を行っているところに比べると漁獲量で負けているかもしれません。でも、品質やブランド力では十分勝っていると自負しています。
──海岸近くにいるホタルイカだけを定置網で穫るから良質なホタルイカだけが穫れ、また、獲りすぎてしまう心配もないのですね。
美味しいホタルイカだけが穫れる上に、環境保全もできるというのは唯一無二の強みと言えるかもしれません。
ホタルイカが集うきれいな海を守る
──ホタルイカが集うきれいな海を保つために心掛けていることや行っている取り組みはありますか?
小林さん 取り組みというほどではないかもしれませんが、田植えの時期をずらしてもらったり、川に汚水を流さないように呼びかけています。
ホタルイカ漁は沿岸近くでやっているので、水が濁るとホタルイカが岸に寄ってこなくなってしまうことがあるからです。
ホタルイカ漁は3〜5月に行われるのですが、その時期はちょうど田植えが始まる時期と重なっています。
田んぼに水が入ると川から泥水が流れてきてしまうため、農家の方にはなるべくゴールデンウィーク明けに田植えをしてもらうようお願いしています。
漁業関係者の方だけではなく陸上で事業をやっている方にも、漁の最盛期には水をきれいに保っていただくよう配慮をお願いしています。
ここにしかない海洋深層水商品を楽しんでほしい
──「ウエーブパークなめりかわ」「アクアポケット」を訪れるお客様へ何かメッセージがあればお願いします。
小林さん 滑川はホタルイカの街でもありますが、海洋深層水をテーマにした商品もたくさんあります。
海洋深層水を練り込んだご当地ソフトは、甘さの中に少ししょっぱさを感じられるユニークな味わいです。また、海洋深層水を使ったコーヒーも売っています。
お水というとあまり派手な売り物ではないかもしれません。しかし、滑川の海洋深層水の良さを知ってもらうため食事のメニューや加工品にも海洋深層水を使っています。
ウェーブパークなめりかわ内のレストランや道の駅のカフェでも海洋深層水を使ったメニューを扱っていますよ。売店でも海洋深層水を使った味噌や醤油を販売中です。
ウェーブパークなめりかわにいらした時にはぜひ、海洋深層水商品を探して楽しんでもらえたらと思います。
株式会社WAVE滑川
〒936-0021 富山県滑川市中川原410
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