以前からマイクロプラスチックなどの海洋ゴミが、海や生態系に影響を及ぼしていると取り沙汰されています。そんな海洋ゴミの問題と真摯に向き合っている企業が、熊本県にある株式会社SUSTAINABLE JAPAN。
SUSTAINABLE JAPANでは、海洋ゴミを集める海の掃除機とも言える「SEABIN」、農業用の水路でゴミを収集する「シースリバー」などを手掛けています。
今回は、海洋ゴミ問題に取り組む株式会社SUSTAINABLE JAPANの代表取締役社長である
東濵孝明さんに、海洋ゴミ問題に取り組む理由などを伺いました。
株式会社SUSTAINABLE JAPAN
東濵 孝明さん
代表取締役社長
故郷へUターンして思った、「この海をきれいにしたい」
——まずは、東濵さんの子ども時代のことを聞かせていただけますか。
東濵 孝明さん(以下、東濵さん) 熊本県の熊本市で育って、少・中・高と、ずっとサッカーをやっていました。高校は熊本県内のサッカーの強豪校にいたんですけど、3年生のときにケガをして、夢を諦めてしまいました。
高校卒業して服飾の専門学校に行ったんですけど、1年でやめました。その後、熊本で就職。最初に就職した会社を2年でやめました。
それから東京でしばらく働いて、結婚と奥さんの出産を機に熊本に戻ってきました。
——子ども時代はサッカー少年で、海に深い関心があったわけではないようですが、どんなきっかけがあって海に関わるようになったのでしょうか?
東濵さん 母の実家が熊本市西区の新町という港町。祖父母が亡くなってから、疎遠になっていました。
東京から熊本に戻ったある日、20年ぶりくらいに尋ねてみたら、びっくりするほどゴミだらけで海が汚かった。
子どものときはすごくきれいな海だったのに、なぜこんなことに?と思ったのがきっかけです。そこから、昔のように海をきれいにしたいと。海洋ゴミに興味を持つようになったんです。
ビーチクリーンから始めて、海の掃除機「SEABIN」と出会う
——「海をきれいにしたい」と思われて、どんなことから始めましたか。
東濵さん 海をきれいにするなら、まずはビーチクリーンだ!と思ってビーチクリーンから始めました。続けていくうちに、その日はきれいになるんだけど、次の日はまたゴミがある。
やってもやってもゴミが増えている現実に、もっと効率よくゴミを回収できないかと考えるようになりました。
熊本に戻ってきたころは、昔みたいにきれいにしたいよなっていう、淡い気持ちでした。でもビーチクリーンをやっていくうちに、だんだん思いが強くなっていったというか。
それで、今よりいい方法はないかとインターネットで調べていくうちに、オーストラリアで開発・販売されている「SEABIN」と出会いました。
——「SEABIN」と出会って、販売できるようになるまでに大変だったことは?
東濵さん 今でこそ「SEABIN」で検索すると、日本語でパッと出ますけど、7年前は英語の表記しかなくて。そんな時「SEABIN」がゴミを吸っている動画が上がっていたんです。
けれど、これ欲しい!と思ってもサイトが全部英語。英語の読み書きが大変でしたね。
まず、1からGoogleの翻訳機能を使って日本語にしてサイトの内容を理解します。メールを作るにしても、日本語で文を起こしてから翻訳。それを「SEABIN」の会社にメールして、また訳してメールしての繰り返しです。
——7年前だと翻訳機能は、多少不安なこともありましたよね?
東濵さん 確かに。今思うと、「SEABIN」の会社に失礼な英語でメールを送っていた可能性はあります。でも、気持ちの熱さは間違った英語でも伝わっていたんじゃないか、と思います。
私と同じように、日本で販売したいと言っている会社があるとのことだったので、紹介してもらいました。「SEABIN」を仕入れるにあたり、個人では難しいと言われたので、SUSTAINABLE JAPANを作りました。
「SEABIN」を経て、農業用水路向け「シースリバー」を開発
——「SEABIN」が販売できるようになって、試験運用を開始していきました。今の海洋ゴミは、具体的にどんなものがあるのでしょうか。
東濵さん ペットボトルはもちろんですが、タバコの吸い殻が思っている以上に多いです。コンビニなどで売られているおにぎりやパンなどの包装用の袋。あとは人工芝なんかもありますね。
——思っている以上にタバコの吸い殻が多いんですね。人工芝が海に流れ着いているのも、意外でした。
東濵さん タバコを吸う人全員のマナーが悪いわけではないですが、ポイ捨てする人は一部います。人工芝は使われているところが結構ありますよね。サッカー場や野球場など、それ以外にも。人工芝が削れて、用水路や川に落ちて海まで流れてくるんですよ。
——「SEABIN」を販売して、次に「シースリバー」を開発されました。経緯を教えていただけますか。
東濵さん ある時、熊本市から依頼されて江津湖で「SEABIN」を使い、ゴミを集める実証実験をしました。その様子が、地元の新聞に出たんです。それを読んだ米農家さんがうちの用水路にもつけてほしいと連絡をいただきました。
海と同じように、用水路にも生活ごみや肥料の膜が流れているのが理由です。
ただ「SEABIN」は、水深が1.2mくらいあるところで能力を発揮するもの。用水路だと水位が変わるし、そこまでの深さがない。
そこで、用水路用のものが必要だ!となり、開発することになりました。
パーツを買って試作品を製作した、「シースリバー」開発時代
——「シースリバー」開発時に大変だったことは?
東濵さん 最初は本当に手探りでした。設計するにあたり、図面は知り合いの内装業者さんにお願いしたんです。
——内装業者さんとは、また意外ですね。
東濵さん その方はすごいアイデアマンで、「シースリバー」の設計をやってみたいとおっしゃってくれて。普段から私の志を理解してくれていましたし、気持ちの熱い方だったので、お願いしました。
最初はパーツをホームセンターで買ってみたり、Amazonで大きめのプールを買ってみたりとか。素人感満載なところからスタートして。そんな感じだったので、1号機ができた時は重すぎてプールから移動させるのに、クレーンを使わなくちゃいけなかったんですよ。
とにかく初めてのことなので、四苦八苦でした。
——楽しかったことはありますか?
東濵さん 試作品を作る工程もよくわかってなかったので、パーツをホームセンターで買うとか。作ってはみたけど重すぎてプールから出せないとか。実際は苦労したことではあるんですけど、それも今思うと楽しかったなって思います。
もっと効率よくやろうと思えば、できたかもしれない。でも、手作りで作っている感じが楽しかったですね。
——「シースリバー」の実証実験での思い出を聞かせてください。
東濵さん 池で実験をしたときのことですが、池のなかに私も入らなくてはいけなくて。腰の高さぐらいまで池に浸かるんです。
時期は11月くらいだったかな。防水服は着ているんですが、水がとにかく冷たくて。体がちょっとキツかった実験の思い出ですね。
「SEABIN」から「シースリバー」、海への思い
——最後に 東濵代表とSUSTAINABLE JAPAN の今後の展望をお願いします。
東濵さん 会社を設立して4期目ですけど、海洋ゴミは年々増えています。SEABINやシースリバーはお客様に買っていただいても、ゴミを取るだけで経済性ゼロのビジネス。お金は生まないですよね。そこに挑戦して、持続可能なビジネス・モデルを作っていきたいです。
今はケースによっては、弊社の機材は一部レンタルも可能としていますが、購入いただくことがメイン。ゆくゆくは購入するだけじゃなくて、レンタルなどお客様に使い勝手のいいチャンネルを増やしていきたいです。
あとは、アンバサダー制度っていうのをやっています。最初は応援してくれる仲間が欲しいと思って、クラウド・ファウンディングで始めました。
今は「海洋保全サブスクリプション」として、ホームページから申込めるようになっています。アンバサダーの方と交流イベントをやったりしているんですよ。SUSTAINABLE JAPANに共感してくれる人が増えてくれたら、うれしいですね。
未来の子どもたちのためにきれいな海を残す。そのためにできることを続けていきたいです。
株式会社SUSTAINABLE JAPAN
〒860-0803 熊本県熊本市中央区新市街13番10号
TEL:050-3196-4731