ふれあい日本一の水族館!大切なのは動物たちとの信頼関係。

愛知県知多半島にある南知多ビーチランドは、水族館とおもちゃ王国という遊園地が一体となった施設です。

特に、1980年4月に誕生した水族館は、イルカやペンギン、アザラシなどの海の動物と近い距離でふれあえるため子供に大人気です。

2003年頃から、動物たちに触ったり餌をあげられたりする『ふれあいイベント』を毎日開催しています。

当時の水族館は、水槽の外から眺めて楽しむのが一般的でしたが、全国に先駆けて動物たちとのふれあいを大切にし、“ふれあい日本一”を掲げる水族館です。

そんな南知多ビーチランドの見どころを、広報の三好菜月さんと、イルカの飼育員の床枝菜摘さんにお話を伺いました。

南知多ビーチランド

三好 菜月さん

広報

南知多ビーチランド

床枝 菜摘さん 

イルカの飼育員

朝から大忙し。飼育員さんの1日のスケジュール

青色が水の中を連想させるビーチランドの水族館内

──ふれあいを大切にしていることで、他の水族館と違う点はありますか?

三好さん 「飼育員がイルカと一緒にショーをする」点が当園の特色です。今も行っているふれあいカーニバルという毎日実施しているイベントが、2004年からスタートしました。

当時は、全国的にもふれあいを盛んに行っている水族館はあまり多くありませんでした。ふれあうことによって、図鑑ではわからない、生きている動物たちの温かさやにおいを感じられます。

それにより、動物たちを大切にする心を育くむことができると考えています。

イルカに餌をあげる飼育員さん

──飼育員さんの一日のスケジュールを教えてください。
床枝さん(飼育員) 8時半に出勤すると、まずは1日に使う餌を朝の段階で準備します。イルカの場合は、1頭あたり1日に10kgから15kgほど餌の魚を食べます。

当園ではイルカが16頭いるので、100kgから200kgほどの餌が必要です。

餌として使える魚と傷んでいて使えない魚を選別し、使える魚をイルカの体重に合わせた量にして、バケツに魚を入れていきます。

──朝から重労働ですね。餌の準備が終わったら次は何をされるのでしょうか?
床枝さん(飼育員) 次に、動物たちの健康チェックを行います。

イルカであれば、体温測定、身体に傷がついていないかのチェック。そして、ショーでは人が手でサインを出すので、正しく見えているのか視力のチェックを行います。

それができたら、お客様を迎える準備をして9時半に開園です。

開園後は、ショーやふれあいのイベントを実施したり、合間で動物たちの餌やりをしたり、水槽やショーのスタジアムの清掃を行います。

夕方になると、次の季節に向けてのショーの準備や動物たちのトレーニングを行って、後片付けをして終了です。

個性豊かな動物たち。目つきや表情まで観察

──それぞれの動物の担当は決まっているのですか?飼育が難しいと感じる動物があれば教えてください。

床枝さん(飼育員) イルカチーム、ペンギンチーム、サカナチーム、あとはアシカやアザラシなどのひれ足チームの、大きく分けて4つのチームに担当が分かれています。

それぞれに難しさはあると思います。動物たちはすべて個体識別をしていて、例えばペンギンチームだとフンボルトペンギンが80羽もいるので、大変そうだなと思います。

動物たちはそれぞれ、一見同じように見えると思いますが、性格も顔も全然違うんです。

ペンギンを担当した飼育員が、まず初めにすることは全てのペンギンの名前を覚えること。それができたらやっと餌があげられるようになるんですよ。

じゃれ合う2匹のフンボルトペンギン

──最初は柄とかで名前を覚えるのですか?

三好さん 翼のところにバンドがついているので、最初はそれを使って覚えます。ただ、80羽もいるので、毎回バンドを見て確認するのは大変です。最終的には、顔や特徴で覚えます。

床枝さん(飼育員) イルカの場合も、身体の模様や色、背びれの形で識別しますが、やはり一番は顔で見分けていますね。実はイルカにも、一重の子と二重の子がいるんですよ。

──目の感じや顔つきで見分けるのは、人間だけではないのですね。イルカは飼育員さんを見分けることができるのでしょうか?

床枝さん(飼育員) この人が誰という風に、見た目で見分けるのが恐らく難しいと思います。

ただ、餌の上げ方の癖や、ショーなどでのサインの出し方、動物たちのコミュニケーションの取り方などで、人の区別はしているように感じます。

三好さん ペンギンは、人を見た目で区別できていると思います。好みの飼育員には、ずっと待って追いかけていていたり、逆に新人に厳しい子もいたりしますよ。

動物たちも相性を感じ取ったりしているようで面白いですよね。

イルカの顔にも一頭一頭個性がある

華やかなショーを支える日々の小さな積み重ね

──例えばイルカショーでは、どのような準備をするのですか?

床枝さん(飼育員) 飼育員も演者としてショーに出ます。

次の季節のショーに向けての喋りの内容の検討や練習、どのような種目の順番で見せたらお客様に楽しく見てもらえるかなど、スタッフ同士でどんどん内容を詰めていきます。

水中ショーでは、私たちもイルカと一緒にショーをするので、まずは人間だけで練習。例えば、飛び込みのフォームや、水中での態勢作りを何度も練習しますよ。

イルカの鼻先で私たちの身体を押して進んでいく技の場合は、足の裏をプールに対して垂直になるように提示し、イルカたちが押しやすいような態勢を目指します。

人間が安定してできるようになった後に、イルカと一緒に練習を開始。イルカとの練習は、基本的に夕方に行います。ショーが終わったあとの時間に、上手くできなかったところを少し練習することもありますよ。

多くのお客さんの前でイルカショーを披露

──イルカたちには、どのようにショーを教えるのでしょうか?

床枝さん(飼育員) ペン先に丸いボールがついたものが、イルカたちの目標物になる『ターゲット』と呼ばれるものです。最初は、これを見せて『くるくる回ってね』と教えます。

そこから、ターゲットをくるくる回しながら高く掲げる。イルカたちがくるくる回りながらジャンプする『スピンジャンプ』を作っていきます。

こうやって、道具を上手く使って身体の動かし方を覚えることで、技ができるようになるんです。

──1つの種目はどのくらいの期間で覚えるのでしょうか?

床枝さん(飼育員) そのイルカの性格や、身体能力、種目内容、トレーナーの教え方によって変わりますね。

だいたい新しい技をショーで披露するまでには、3ヵ月ほどかかります。

最初はもちろん、イルカたちは何もしないのですが、毎日ターゲットをくるくる回して、できるようになったら褒めてあげます。

それを日々繰り返すことで、イルカは学習してだんだんとできるようになります。

小さな積み重ねを続けていくことで、イルカたちは最終的にサインを出すだけで自分で回ってくれるようになります。

ショーを成功させるのに大切なのは、動物たちとの信頼関係

──イルカたちに技を教えるときに大切にしていることはありますか?

床枝さん(飼育員) 餌を使ってトレーニングする時間も大切ですが、そのイルカと一緒にいる時間を多く作ることも、とても重要です。

一緒に過ごすことで、イルカたちとの信頼関係ができますし、イルカのことがより分かるようになるんですよ。

一緒にボールを使って遊んだり、触ってコミュニケーションを取ったりする中で、イルカたちの個性や性格を、私たちも把握していきます。

この子は、こういうことが好きなんだなとか、これはちょっと苦手なのかな、ということを少しずつ探りながら一緒にトレーニングをしていきます。

イルカと飼育員さんの信頼関係の構築がショーの成功に欠かせない

──「一心同体」となってショーをされるのですね。信頼関係構築の上で難しいと感じることはありますか?

床枝さん(飼育員) みんなそれぞれに性格が違うので、一頭一頭把握することが難しさでもあり、楽しさでもあるかなと思います。真面目に集中して練習してくれる子もいますが、中には年下のイルカにちょっかいを出したがる子も。

他のイルカが気になって、なかなか練習にならない子や、マイペースな子など様々です。個性に合わせて、教え方や時間の掛け方などを変えています。

お客様の安全を守るために大切なこと

──ふれあいイベントを続けていくために、大切にしていることはありますか?

床枝さん(飼育員) やはり、お客様に安全に楽しんでいただけることが一番大切だと思っています。

例えば、夏場は膝くらいの深さのプールにお客様が入っていただいて、イルカの背中に触れるというイベントをやっています。イルカが人に触られても驚かないように、日々トレーニングしています。

三好さん 季節ごとに、様々なふれあいイベントを行っていますが、それぞれのイベントが始まる前には、動物たちのトレーニングを行います。飼育員がお客様役になりお客様を想定し、動物たちに慣れてもらっています。

当園は、犬を連れてきても大丈夫です。ふれあいを大切にする以上、お客様に安全に過ごしていただけるよう、動物たちにも色んな刺激になれてもらうことが欠かせません。

床枝さん(飼育員) あとは、動物たちからすると、お客様に触ってもらう時間が長すぎたりしても、負担がかかります。

少しでも負担を軽減するために、合間の時間に一緒に遊んだりして、他のコミュニケーションを取るようにしています。人間側も、動物たちがふれあいの時間をなるべく楽しめるように配慮をしてます。

──飼育員さんたちの、そのような努力の上で、ふれあいのイベントが成り立っているのですね。

大きな水槽で悠然と泳ぐ魚たち

「ふれあいと言えばビーチランド」を目指して

──飼育員さんとして、今後の目標があれば教えてください。

床枝さん(飼育員) ショーが終わったあとや園内で、お客様が笑顔で話しかけてくれることが、私にとってもやりがいを感じることです。

動物たちに興味を持ってくれることや、同じ夢を持っている子供たちと話せるのはとても嬉しいです。

当園に足を運んでいただいたお客様に、「また来たい」「もっとこの動物の、こういうところを知りたい」と思ってもらえるような場所にしたいです。

そのために、なるべく多くの時間をお客様との時間を過ごしていきたいです。

華麗なジャンプを披露するイルカたち

三好さん ふれあいに力を入れている当園ですので、たくさんの方に遊びに来て欲しいです。

ただ触って終わりではなく、ふれあいを通して、動物たちの体温やにおいを間近に感じ、生き物を大切にする心を育んでいただける場所になれたら嬉しいです。

南知多ビーチランド
〒470-3233 愛知県知多郡美浜町奥田428−1
営業時間/9:30〜16:30
TEL:0569-87-2000
FAX:0569-87-3776

この記事の執筆者

横上 菜月

製薬関連企業で働きながら、旅と取材ライターをライフワークとして活動中。

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