徳島県の最南端の町、海陽町の沖合に浮かぶ「竹ヶ島」は美しいサンゴの群生が見られる島。
島内にある「海洋自然博物館マリンジャム(以下、マリンジャム)」は、「竹ヶ島」の美しい海を満喫できるレジャー施設です。海中観光船やシーカヤックを体験できるほか、「竹ヶ島」の海を見て・触って・学ぶことができる小さな水族館もあります。
また、マリンジャムは「竹ヶ島」の貴重な自然環境を守るために、地域と連携してサンゴの保全活動や海のモニタリング調査を行っています。
今回はスタッフの木村さんに、マリンジャムの魅力とサンゴ保全活動などの環境への取り組みなどについて伺いました。
海洋自然博物館マリンジャム
スタッフ 木村 素子さん
徳島県小松島市出身。武蔵野美術大学卒業。他業種を経て、2020年より海洋自然博物館マリンジャムで勤務。マリンジャムの好きなところは、日々変化する自然を感じさせてくれるところ。
サンゴが生息する美しい海を満喫できる「竹ヶ島」
──竹ヶ島はどんな島ですか?
竹ヶ島は周囲4kmの小さな島です。島というと船に乗って向かうイメージがありますが、竹ヶ島は100mほどの短い橋を渡るだけで上陸することができます。
竹ヶ島の入江には約70種類のサンゴが生息していて、海域公園に指定されています。小さなエリアにたくさんのサンゴが生息していることは、日本国内でも珍しく、とても貴重な環境です。
また竹ヶ島周辺のサンゴは、一般的なサンゴより大型であることが知られています。
幻想的なナイトクルーズがおすすめ!海中観光船ブルーマリン号の魅力とは?
──徳島でもサンゴが見られるのですね。マリンジャムの海中観光船ではサンゴを間近で見ることができるのですか?
マリンジャムの海中観光船ブルーマリン号では、船艇から海の中を見ることが可能です。
竹ヶ島の海に生息するサンゴや魚を海中から見ることができるので、乗船されたお客さまには大変ご好評いただいております。
夏はサンゴの産卵ツアー、冬はライトアップされた発光するサンゴが見られるナイトクルーズなど、季節によってイベントを開催しています。
──ナイトクルーズで夜の海に光るサンゴを見るなんて幻想的ですね。
サンゴは「GFP(ジー・エフ・ピー)」という蛍光タンパク質を含むので、特殊なライトを浴びると発光します。
ブルーマリン号のナイトクルーズでは、竹ヶ島の代表的サンゴである「エダミドリイシ」が最も美しく光るように開発した専用のLEDライトでライトアップしています。
昨年は12月23日から25日のクリスマス期間にナイトクルーズイベントを開催しました。
夜の海で光るサンゴを目の当たりにすると、皆さま目を奪われて、船内が静かになるんです。イベントの後には、「すごく感動した」「また絶対に来ます」といった声をたくさんいただきます。
ナイトクルーズは冬の目玉イベントなので、ぜひ一度体験してほしいです。
遊んで学ぶ!マリンジャムで体験するアクティビティと小さな水族館
──マリンジャムでは海中観光船のほかに、どのような体験ができますか?
シーカヤックやグラスボード、SUP(サップ=スタンドアップパドルボード)、スノーケルなどのマリンアクティビティをお楽しみいただけます。
色々な角度から違った目線で、竹ヶ島の自然を堪能できるのが一番の醍醐味ですね。
また、マリンジャムには竹ヶ島周辺の海に生息する生き物を飼育・展示する小さな水族館があります。
この水族館の重要なコンセプトのひとつは、これからの未来を担う子供たちが生き物をしっかりと観察できる「子供たちの目線」を大切にした水族館です。
スタッフが作った「子供たちの目線」に合わせた高さの水槽や、海の生き物に触れることができるタッチプールなどがあります。
タッチプールでは、餌をあげようとすると生き物たちが一斉に集まってくるので、子供たちの大人気スポットです。
──アクティビティや水族館など盛りだくさんですね。実際にマリンジャムを訪れた子供たちの反応はいかがですか?
以前、シーカヤックを体験された小学生のお客さまから「マリンジャムで働くにはどうすればいいですか?」と尋ねられたことがあります。
すごくマリンジャムを気に入って、ここで働きたいと思ったと話してくれました。
そのほかにも、マリンジャムでの体験をきっかけに、大学で生物学を専攻したというお客さまがいます。子供の頃にマリンジャムを訪れ、そこではじめて海の生き物に間近で触れて、その面白さを知り、海の研究をすることを志したのだそうです。
また働くスタッフの中には、海陽町やマリンジャム、竹ヶ島周辺の自然環境を気に入って県外から就職した者もいます。
マリンジャムを訪れた人が、竹ヶ島の自然を気に入ってくれるのは、本当に嬉しいですし、やりがいに繋がっています。
サンゴが激減!地域で守り続けてきた「竹ヶ島」の美しい海
──竹ヶ島の自然再生事業について教えてください。
竹ヶ島を含む海域は、サンゴの一種であるエダミドリイシの群生が見られる貴重な海域として、環境省から海域公園に指定されています。
しかし2001年のモニタリング調査で、以前に比べてエダミドリイシが減少したことがわかり、サンゴの保全などの自然再生事業がスタートしました。
現在では、初期に実施された大規模な移植活動などが功を奏して、かつてのようにエダミドリイシの群生を見ることができます。
しかし、これで終わりということではありません。竹ヶ島の海を守り続けるため、海陽町やマリンジャム、地元小学校、地元漁協など地域のみんなで協力して自然再生事業に取り組んでいきます。
──マリンジャムでは、具体的にどのような活動をされていますか?
マリンジャムは、海やサンゴの様子を日々観察するモニタリング調査を行っています。
また、地元の宍喰(ししくい)小学校で行われているエダミドリイシの移植活動をサポートしたり、環境教育を目的とした小中学校への出前授業を行ったりしています。
地域の子供たちがサンゴや海に興味を持ち、自然環境について想像したり、考えたりすることで、これから先も竹ヶ島の自然を大切にしてくれたら嬉しいです。
記憶に残り続ける「竹ヶ島」でありたい
──マリンジャムで働くスタッフの想いについて教えてください。
竹ヶ島の小さな入江に住む生き物たちの「生命の営み」が、末長く続いてほしいというのが一番の願いです。
そして、そのために私たちは何ができるだろうかといつも考えています。
この美しい竹ヶ島の自然を守るために、私たちができること。
それは、訪れた人がまた来たいと思ってくれる「記憶に残る場所」であり続けることだと思っています。
誰かが覚えていてくれる場所であれば、きっと竹ヶ島の自然は、これからも大切にされて、未来へと残っていくはずです。
──最後に今後の目標などがあれば教えてください。
もっとたくさんの方に来ていただいて、竹ヶ島の自然を知ってほしいです。サンゴといえば沖縄などの南国のイメージがありますが、徳島でもサンゴを見ることができます。
今、SDGsなど環境問題について考える機会は多いと思います。
実際に海に来て、サンゴをはじめとする海の生き物たちを間近に感じると、画面越しや教科書ではわからなかった新しい発見や学びがあるはずです。
これからも、子供たちの目線を大切にしながら、訪れる人の記憶に残るマリンジャムを目指して頑張っていきたいと思います。
あとがき
いかがでしたか?
海洋自然博物館マリンジャムは、海中観光船ブルーマリン号やマリンアクティビティなど、竹ヶ島の自然を満喫することができる施設です。また、サンゴの保全活動やモニタリング調査を行っています。
そこには、竹ヶ島の美しい海を守りたいという想いがありました。
地元の人々が大切にする海。
そこではきっと、普段は味わうことのできない素晴らしい体験ができると思います。
ぜひ一度、海洋自然博物館マリンジャムに足を運んでみてくださいね。
海洋自然博物館マリンジャム
〒775-0513 徳島県海部郡海陽町宍喰浦字竹ヶ島28-45
TEL:0884-76-3100
FAX:0884-76-1402
徳島県の最南端海陽町にある竹ヶ島で海洋観光船やシーカヤック、サップなどのマリンアクティビティを体験できる施設。
竹ヶ島周辺の生き物の飼育展示を行う小さな水族館がある。
※海中観光船ブルーマリン号の休航日は毎週火曜日(火曜祝日の場合は翌日)ただし、GW・夏休み・年末年始は営業。