夕日観光クルーズ船SEA CRANE船上からの夕日
豊かな自然にあふれた釧路・阿寒湖エリアは、特別天然記念物の「タンチョウ」や「阿寒湖のマリモ」など、そこでしか見ることができない貴重な動物に出会える土地。
さらに、それらの自然の恵みが生み出す絶景やこの地域ならではのレジャー、海産物・地酒などのグルメも必見です。
そこで今回は、釧路・阿寒について、おすすめしたいスポットやお土産にしてほしい名産、地域での取り組みなどを、釧路観光コンベンション協会の内間木伸也さん、阿寒観光協会まちづくり推進機構の寺尾泰徳さんにお伺いしました。
一般社団法人釧路観光コンベンション協会
内間木 伸也さん
NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構
寺尾 泰徳さん
地域資源を活かした観光推進に取り組む
──釧路観光コンベンション協会様、阿寒観光協会まちづくり推進機構様、それぞれの日々の活動内容について教えてください。
釧路観光コンベンション協会 内間木伸也さん(以下、内間木さん) 一般社団法人釧路観光コンベンション協会は、釧路市とその周辺地域の産業・技術・文化・歴史・自然などの資源を活用して、観光事業の振興やコンベンション誘致、支援をしています。
大まかな業務は、観光客の誘客促進、観光案内所・釧路市湿原展望台の施設運営になります。
それらの目的は、人的交流の促進をすることで、地域経済の活性化を促して地域社会の健全なる発展に寄与することです。
阿寒観光協会まちづくり推進機構 寺尾泰徳さん(以下、寺尾さん) NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構は、阿寒湖温泉やその周辺地域において住民一人一人に、この地域の気候・自然・景観・文化などの地域資源を見つめなおしてもらうことで、それらを活かした観光まちづくり事業を推進しています。
活動の目的は、訪れる人々に対して真心を込めたおもてなしを行い、観光の振興を通してこの地域の活性化に寄与することです。
また、この事業を推進する住民の少子高齢化・医療・福祉サービス等を支援することも目的としていますね。
釧路湿原ではタンチョウを、釧路川ではカヌーを!
——まずは釧路の魅力を簡潔にお伺いできますか?季節ごとの楽しみ方も教えてください。
内間木さん 釧路湿原国立公園の雄大な自然は、一年を通して観光客が訪れています。湿原に生息する日本最大の鳥類、特別天然記念物「タンチョウ」は冬の給餌場で、多い日に200羽ほど観賞することができますね。
釧路湿原東側のJR釧網本線では、夏と冬に運航する観光列車「釧路湿原ノロッコ号」「SL冬の湿原号」が人気です。
また、釧路川ではアクティビティとしてカヌーが盛んで、冬でもカヌーに乗ることができますよ。
──釧路の絶景スポットや、訪れてほしい場所を教えてください。
内間木さん 220平方キロメートルに及ぶ国内最大の湿原「釧路湿原」は、タンチョウを代表とする多様な動植物の楽園です。
湿原の東側を流れる「釧路川」は護岸されていないため、カヌーイストの聖地ともいわれ、多くの方が訪れています。
釧路川の流路延長は154km、流域面積は2,510km2あるにもかかわらず、人工的なダムや堰が存在していないのは、釧路湿原は「天然のダム」として釧路川の氾濫を防いでいるためです。
幣舞橋から沈む夕日を眺めた後は、地酒を堪能してほしい
──釧路の絶景の1つである、「夕日」を見るのにおすすめの場所はありますか?
内間木さん 夕日は「幣舞橋」がおすすめですね。釧路駅から歩いてすぐの距離なので訪れやすく、近くには釧路夕日観光クルーズ船SEA CRANEもあるんです。
──釧路は、おいしい海産物でも有名ですよね。
内間木さん 釧路の海産物がおいしいのは、釧路の近海が、太平洋沖で発生した霧が摩周湖・屈斜路湖まで上り、山や湿原でミネラルを蓄えながら釧路川を通って、太平洋に還った水でできているためだと言われています。
釧路の海産物を利用した名物で有名なのは、釧路和商市場の「勝手丼」。市場で、ご飯を片手に食べたい海産物を載せて完成させることができる「自分だけの丼」なんです。
──海産物以外にも、おいしい水を使った名産があれば教えてください。
内間木さん 大正8年に創業した、伏流水が湧き出る井戸水で作られる地酒「福司」の、海底炭鉱の坑道で寝かされた「海底力」がおすすめです。
今年2023年に販売がスタートした、釧路沖の海底で5カ月貯蔵された「海燈KAI TEI」もご賞味いただきたいですね。
地酒「福司」を使った、「福司ケーキ」「horo酔いプリン」も人気のお土産です。
阿寒湖のマリモは「自然の豊かさのシンボル」
──続いて、阿寒湖の魅力についても教えてください。
寺尾さん 阿寒湖は、北海道で5番目に大きな湖で、約15万年前の噴火によって誕生したカルデラ湖です。
特別天然記念物の「阿寒湖のマリモ」のほか、アメマス・ニジマス・イトウ・コイなど多くの水生生物が生息しています。マリモが生育する湖沼は多くありますが、直径30cmまで成長する球状の大型マリモが生育、群生するのは、阿寒湖を含め世界で2ヶ所しかありません。
そのためマリモは、阿寒湖周辺の自然がどれほど豊かであるかを示すシンボルなんです。
さらに、湖畔には日本最大のアイヌコタン(集落)があり、自然を神(カムイ)として敬う独特の生活文化を今に伝えています。
温泉資源も豊富にあり、単純泉の泉質のお湯は刺激が少なく『万人の湯』としても知られていますね。
──阿寒湖のマリモは、自然の豊かさのシンボルなんですね。その特徴も詳しく教えてください。
寺尾さん さきほどもお伝えしたように、マリモが生育している湖沼は阿寒湖だけではありません。
2002年時点で日本では17ヶ所、世界では北半球の比較的寒冷な地域の湖沼や河川を中心に50ヶ所以上でマリモの生育が確認されています。
しかしほとんどのマリモは、岩に付着しているものや綿くずのような塊となっているもので、直径15㎝以上の球状のマリモが群生している湖は、阿寒湖とアイスランドにあるミーヴァトン湖の2ヶ所だけなんです。
このうちミーヴァトン湖の球状マリモは、自然環境破壊等の影響を受けたため絶滅の危機に瀕してしまいました(保護活動により、2016年頃から数は上昇傾向)。
このことからも、環境の変化等で簡単に絶滅してしまう植物であり、環境を保持することが何より大切なことだといえますね。
また、マリモが丸く育つためには、いくつもの自然の条件が揃っていなければなりません。
例えば、光合成に必要な日光がマリモに十分当たるような広く遠浅な地形や、マリモがその場にとどまって回転できる程度の波を作りだす風、また、マリモの生長を促進するミネラルを豊富に含んだ温泉や冷泉の湧き出る場所などが必要です。
このような多くの条件が揃った奇跡的な場所こそが阿寒湖なんです。
──これらの阿寒湖のマリモは、どこで見ることができるのでしょうか?
寺尾さん 阿寒湖にある球状マリモの群生地は、環境省の特別保護区に指定されており、保護の観点から立ち入りが制限されています。
ですから、例年10月8日まりも祭りの一環として開催される「生育地観測会」の日を除いて、実際に湖底のマリモをご覧いただくことはできません。
ただ、阿寒湖温泉にはマリモを展示している施設が2ヶ所あります。
1つは観光遊覧船に乗って行くことのできるチュウルイ島のマリモ展示観察センターです。マリモの群生地を再現した大水槽は必見ですよ。
もう1つは阿寒湖畔エコミュージアムセンターです。
──阿寒湖のまちづくりを支援している、女性グループがあるとお伺いしました。どのような活動をされているグループなんでしょうか?
寺尾さん 2002年、観光客の満足度や滞在時間の増加を目指して、地元住民や大学教授などの有識者らがメンバーとなり結成した「まりも倶楽部」というグループですね。
「まちづくりを考えるには、女性が少ない」の一言で、これまではあまり外へ出る機会がなかった、地元の主婦たちが奮起して立ち上げました。
まりも倶楽部のモットーは、「やりたい事・必要だと思う事・私たちにできる事」を「無理をせず・空いている時間に・楽しみながら」。
「それ、面白そうだからやろう」と、思い付いたらすぐ実行するフットワークの軽さが持ち味です。最近は、若いホテル従業員や男性部員も活動の輪に加わることも。
漬け物をつまみながらの井戸端会議から始まり、お茶を片手に気軽にアイデアを出し合うスタイルは今でも変わりません。
手作りマップ、地場産品料理研究、花いっぱい運動など・・・人と人をつなぐ接着剤のような役割も果たしながら、阿寒湖の元気な母さんたちが、マリモのような「まあるい」まちづくりに取り組んでいます。
子どもから高齢者まで楽しめる「万人の湯」
──阿寒湖は温泉資源も豊富にあるとのことでした。阿寒湖温泉の特徴もお伺いできますか?
寺尾さん 阿寒湖温泉の多くは、「万人の湯」や「神経痛の湯」として親しまれる単純温泉(中性低張性温泉)です。
「万人の湯」と呼ばれるのは、無臭・無色透明という泉質と、広範囲に柔らかな効果が期待できるため。
静養・療養に優れ、低刺激なので肌にもやさしく湯疲れもしにくく、子どもから高齢者まで気軽に利用できます。そのため、「温泉を楽しむための始まりの湯」ともいわれていますね。
また、阿寒湖は手湯の発祥の地で、温泉街には手湯や足湯が数多く点在しています。手軽に温泉を楽しむことができるのも魅力の一つです。
令和4年にできたばかりの源泉かけ流しの足湯『ウレ・カリプ』は、足をつけてるだけでも全身ポカポカになりますよ。
──マリモや温泉以外で、訪れてほしいおすすめスポットはありますか?
寺尾さん 「阿寒湖畔展望台」の景色をぜひご覧いただきたいです。春から初夏にかけての花々や秋の紅葉は見ものなんです。
また、冬は国設阿寒湖畔スキー場のゲレンデに姿を変えますので、グリーンとホワイト2シーズンとも景色を楽しめますよ。
イベントでは、グリーンシーズンは「KAMUYLUMINA阿寒の森ナイトウォーク」、ホワイトシーズンは「あいすランド阿寒」がおすすめです。特にあいすらんど阿寒では、全面結氷した阿寒湖の上で、天然わかさぎ釣りやスノーモービル、バナナボート、アイススケートなどのアトラクションがあるんです。
阿寒にしかない「海兵のレイクロブスター天丼」や、豆腐工房まるふくの「まりも豆腐」もぜひ食べていただきたいですね。
アドベンチャートラベル事業にも力を入れたい
──釧路観光コンベンション協会様、阿寒観光協会まちづくり推進機構様の今後の展望についてお伺いさせてください。
内間木さん、寺尾さん 2023年9月には、国際団体であるAdventure Travel Trade Association(ATTA)主催するイベント「Adventure Travel World Summit(ATWS)」の北海道開催も控えているため、釧路市では新たな市場としてアドベンチャートラベル事業を推進しております。旅行商品の高付加価値化にも取り組んでいますね。
今後も、各関係機関と連携し、持続可能な観光地域づくりを目指して観光推進に力を入れていきたいと考えています。
一般社団法人釧路観光コンベンション協会
〒085-0017 北海道釧路市幸町3丁目3番地
TEL:0154-31-1993
FAX:0154-31-1994
NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構
〒085-0467 北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉2丁目6-20
TEL:0154-67-3200
FAX:0154-67-3024