「関西の奥座敷」あわら温泉はコスパ最高で、外国人からも「クールな街だ」と高い評価

福井県は、幸福度日本一の県として有名ですが、その中でも、「関西の奥座敷」として注目されている地域があわら市です。

あわら温泉は、越前ガニで有名な三国港に近い事から海の幸に恵まれ、旅館も京都から庭師を招き、立派な日本庭園を楽しめる場所としての存在感が高まっています。

また、北陸の観光地・金沢から特急電車で約30分のため、金沢を楽しみつつ、あわら温泉で宿泊する旅のスタイルが訪日外国人の間からも、「クールだ」との評価もあるようです。

今回は、一般社団法人あわら市観光協会事務局長の武田正彦さんにあわら温泉や観光の楽しみ方を教えていただきました。

※記事内で使用している画像は、一般社団法人あわら市観光協会の公式HPからの引用です。

一般社団法人あわら市観光協会

武田 正彦さん

あわら温泉は74本という豊富な源泉が魅力

各旅館では温泉とともに立派な日本庭園が楽しめる

──あわら温泉の歴史と魅力からお願いします。

武田正彦さん(以下、武田さん) 1883(明治16)年に、水田のためのかんがい用の井戸を掘ったところ、偶然にも生暖かい塩味の温泉が湧き出たことから始まっています。

他の温泉地のように山あいや川沿いのロケーションではなく、平地で生まれた温泉です。

温泉が発見された後、多くの人が温泉を掘り、いたるところに温泉が湧き、現在は74本の源泉が各旅館などで使用されています。これは温泉どころの北陸地方の中でも突出して多い数です。

温泉地の人々は、温泉の守り神である「薬師如来」(やくしにょらい)※を3つの社でお祀りし、大切にしています。

※薬師如来・・・病を直す法薬を与える医薬の仏さま。数多くの温泉では薬師如来が祀られている理由は、病気を治すことと健康への祈願があるとされます。

あわら温泉の温泉発祥地公園

武田さん あわら温泉では、旅館ごとに趣向を凝らした豪華な日本庭園が自慢です。これは京都から優秀な庭師を呼んで造園したと聞いています。

グルメでは近くの日本海でとれた新鮮な海の幸の評判が高いです。特に越前ガニで有名な三国港から車で約15分の距離ですから、新鮮なお魚が直送されます。

多くのお客様はいい旅館で美味しい料理を味わい、なおかつコストパフォーマンスも求められます。

そのため、あわら温泉では人情たっぷりのキメ細やかなサービスが培われ、そのサービスによりお客様は旅の疲れを癒し、楽しんでいただいております。

あわら温泉では、お湯の共同管理を行っておらず、各施設が何本かの温泉の井戸を持っています。そのため、各施設により温泉の成分が微妙に異なっており(ナトリウム・カルシウム塩化物泉、単純泉など)、それぞれ違った感触のお湯をお楽しみいただけます。

周囲を坂井平野に広がる水田に囲まれ、落ち着いた雰囲気のある温泉街を形成しています。また、レンタサイクルで街中を散策することができます。

その落ち着いたたたずまいから、関西・中京の人々に長く深く愛され、「関西の奥座敷」とも称されているのです。

関西には、有馬温泉、城崎温泉など有名な温泉地もありますが、程よい距離にあり、冬場の越前ガニが有名なことから、「関西の奥座敷」と呼ばれるようになったと聞いています。

開湯140周年を迎え、さまざまなイベントを開催予定

日帰り温泉も盛んな地域として知られているあわら温泉

──あわら温泉も140周年の歴史を迎えているのですね。

武田さん 来年の2024年春には、北陸新幹線「芦原温泉駅」が開業し、敦賀まで新幹線が走るようになります。

そこで、私たちの宝物である温泉の恵みに感謝し、お客様に私たちの真心を伝えたいと思います。

まず今年2023年8月8日、9日の湯かけ祭りからスタートし、新幹線が開業するまでの間さまざまなイベントやキャンペーンを企画・開催いたします。湯かけ祭りの詳細は後ほどお話いたします。

今、あわら温泉開湯140周年祭を一緒に盛り上げてくれる団体を募集しています。

まず「あわら湯のまち駅」のすぐ前にある「あわら温泉湯のまち広場」やJR芦原温泉駅のアフレアなどを活用し、あわら温泉の賑わい創出のイベントや、新幹線開業の機運を盛り上げる事業などを開催していきます。

開湯140周年記念して、「あわら温泉湯のまち広場」などでイベントも企画予定

──次に温泉周辺の旅館・ホテルなどの宿泊施設はいかがですか。

武田さん 昭和の頃は旅館・民宿を含めて50軒ほどでしたが、現在でも温泉街とその周辺には30軒ほどの旅館や民宿があります。

ほとんどが地元に根差した旅館で、宿泊定員は一日当たり約6000人と福井県最大を誇り、福井県や石川県観光の宿泊拠点としてご利用いただいています。

宿泊施設それぞれが規模や価格帯など異なったスタイルにて営業されており、お好みの雰囲気や、旅のメンバー構成によって宿泊施設を選んでいただけます。

観光客と地元民との交流の場でもある「湯けむり横丁」

訪日外国人が「クールな街」と評価した場所が「湯けむり横丁」

──温泉周辺のグルメは。

武田さん 「あわら温泉湯のまち広場」は、にぎわい拠点として、また市民や観光客に憩いの場としてご利用いただいています。広場内にある芦湯は総ヒノキ造りの北陸一上質な足湯で、だれでも無料でご利用できます。

この広場に、あわら温泉のランドマーク的な屋台村として、2007年から運営を開始した「あわら温泉屋台村湯けむり横丁」があります。

10軒の店舗からなり、全国屋台村協議会にも加盟しています。また、将来独立されることを前提として各店主は屋台村に入居されます。

あわら温泉屋台村「湯けむり横丁」

公式HP: https://yukemuriyokocho.com/

※全国屋台村協議会・・・各地方都市で地域づくりの屋台村として運営する各事業主とともに地域課題解決型の事業(コミュニティビジネス)として連携を図って行く目的で設立されました。

昭和の香り漂う屋台が並び、海鮮や串揚げ、フレンチからラーメン、中華、ホルモンまでジャンルもさまざまです。

基本、各店舗は競合しません。屋台村のお客様の半数は地元の方ですが、残りが観光されている方ではしご酒も楽しく、中には観光客と地元客との交流も楽しまれることが人気の秘訣といえます。

先日、日本語の話せる訪日外国人お二人があわら温泉を訪れていました。理由を聞きましたら、温泉旅行をしたことがないので体験したかったと言っておられました。

そして屋台村で夜を過ごされましたが、「ここはとてもクールだ」と絶賛されておりました。

私に「金沢までどのくらいかかるんですか」と質問されたので、「特急電車で30分ほどですよ」と回答したのです。その外国人は、「それもクールだ。金沢に泊まる必要がなく、またここで過ごしたい」とおっしゃられ、実際、翌日も屋台村で過ごされていました。

実は今、金沢の宿泊料が急騰しているため、あわら温泉で宿泊し、金沢を楽しむ観光はコストパフォーマンスが高いという評価を得ています。

昭和天皇が絶賛した福井の「おろしそば」

おろしそば

──福井県では「おろしそば」が有名ですね。

武田さん 平均寿命が全国でも上位とされる福井県で、最もよく食べられているそばが「おろしそば」です。

結婚式や仏事のしめの料理や、大みそかの夜の年越しそばとして食べられます。福井県でのそばの歴史は古く、朝倉孝景が一乗谷に居城を構えた時(1473年~)に、戦時の非常食として栽培したのがはじまりといわれます。

※朝倉孝景(朝倉氏7代目当主)・・・室町時代中期の武将。応仁の乱に参加したほか、越前国(福井県の旧国名)をほぼ平定します。歴代の家であっても無能であるなら奉行にしてはいけないと定めるなど当時としては合理的な思想の持主でありました。なお、織田信長に滅ぼされる朝倉義景の高祖父にあたります。また、10代目当主も孝景と名乗っています。

※一乗谷・・・朝倉氏は、戦国時代に一乗谷城を中心に越前国を支配しました。戦乱が続く京都から多くの公家や高僧、文人、学者たちが避難してきたため一乗谷は飛躍的に発展し、華やかな京文化が開花したのです。

一乗谷朝倉氏遺跡
(引用:福井県公式観光サイト)

昭和天皇が福井県に行幸※されたときのことです。

※昭和天皇の福井県行幸・・・第二次世界大戦後の混乱期と復興期に当たる1946年2月から1954年8月までの間に、昭和天皇は行幸して各地を巡っています。1947年10月23日~11月2日にかけて、福井・石川・富山の3県を戦災復興状況御視察のため、行幸されました。

宮内庁主厨長、いわゆる天皇の料理番として名高い、秋山徳蔵は、せっかく福井県に行幸されたので、昭和天皇に地元の名物である「おろしそば」が提供されたといいます。

この時、昭和天皇は「おろしそば」を大変お気に召し、おかわりを所望されたとのことでした。

※秋山徳蔵・・・福井県越前市出身の料理人。杉森久英による小説『天皇の料理番』のモデルであり、これまでに3回テレビドラマ化された。

東京に戻ってからも、「あの越前のそばは美味しかった」とたびたび懐かしく思われ、それが世に広まり、「越前そば」の名称が全国に広まりました。

「おろしそば」の美味しさは、在来種のそばを、昔ながらの石臼挽きで製粉することで、味はもちろん、そば独特の風味が生きています。

あわら温泉街には個性豊かなそば店が4店舗あり、加えて居酒屋や旅館内でも「おろしそば」は必ず提供されています。

全国から、あわら市にそば好きが集まり、時々、有名人もお蕎麦を食べにいらっしゃるようです。

宮中などの式典で福井の地酒を活用

──福井県ではお酒も有名ですね。

武田さん 福井・石川・富山の3県中でも福井県は酒蔵が多いです。いろんな地酒を楽しむことができることも人気の一つです。

有名な地酒でいえば、今上天皇が皇太子時代にご成婚されたときのことです。宮中では内宴の儀が執り行われ、その時に用いられたお酒が「黒龍」(黒龍酒造株式会社)でした。

また、「梵」(合資会社加藤吉平商店)は、昭和天皇の即位の儀式に日本酒として採用されたことで有名になり、現在では数々の政府主催の式典などで使用されています。

東京の女子大生からは「早瀬浦」(三宅商店)を、訪日外国人からは「白龍」(吉田酒造)が美味しいなどとそれぞれ高い評価を聞いています。

このほか福井県には30を超える酒蔵があり、それぞれ個性の高い日本酒を造られています。それぞれの地酒を味わうことも、福井旅行の楽しみの一つといえます。

福井や金沢の観光地から好アクセスという立地を活かす

東尋坊

──周辺観光については。

武田さん あわら温泉は、福井県や金沢、加賀地方の観光(宿泊)拠点です。東尋坊(とうじんぼう)や大本山永平寺、福井県立恐竜博物館、芝政ワールドのほか、金沢まで特急で約30分の距離にあることから、金沢周辺を観光され、お泊りはあわら温泉でゆっくり過ごされる方も増えてきました。

※東尋坊・・・福井県坂井市三国町安島に位置する崖。越前加賀海岸国定公園の特別保護地区に指定。地質上極めて貴重で、国の天然記念物や名勝に指定されています。観光地として開発され、遊歩道や遊覧船、展望用のタワーや商店街などもあります。

※大本山永平寺・・・福井県吉田郡永平寺町にある曹洞宗の仏教寺院。總持寺と並ぶ曹洞宗の中心寺院。開山は道元禅師。

永平寺で修業する僧侶たち
(出典::福井県観光公式サイト)

※福井県立恐竜博物館・・・福井県は恐竜などの化石が発掘されるなど、恐竜王国としても知られています。県は、2023年7月にリニューアルオープン。カナダのロイヤル・ティレル古生物学博物館、中国の自貢恐竜博物館と並び、世界三大恐竜博物館と称されています。

※芝政ワールド・・・福井県坂井市三国町にあるテーマパーク。

浴衣でまち歩きなど体験コースも活発

浴衣であわら温泉街を歩く

──あわら市での体験コースも活発とうかがっています。

武田さん 項目ごとに整理しますが、料金は変更となる場合があります。

  • 浴衣でまち歩き 2,000円※1 
    • 浴衣(下駄・巾着・髪飾り含む)レンタル・着付け・足袋・おやつクーポン(2枚)・荷物お預かりを含みます。
  • 芸妓とふれあい伝統お遊び体験 6名様で18,000円※1
    • 6名様より催行
  • あわら温泉満喫チケット 1,500円※1
    • あわら温泉の旅館11軒の内湯めぐりと、和スイーツや地酒などのちょっぴりグルメを満喫できる「福井うまいものちょっと体験」がついて1,500円、お泊りの宿以外の旅館も楽しめます。
  • 華やかな舞妓・芸妓さんに変身プラン
    • 1名様 13,000円/2名様 11,500円/3名様 10,000円※1
    • わら温泉の華と言われる芦原芸妓※による着付けつきで、本物の着物と化粧で憧れの芸妓さん・舞妓さんに大変身できます。
    • 着物は普通の着物と違って、実際に舞妓さん・芸妓さんが着用する着物を使用します。
    • オプションでプロカメラマンによる写真撮影もあります。(1名7,600円※1
  • 朝ヨガ体験
    • 最近の健康やリフレッシュ志向が強くなり、旅館の中でヨガ体験を行っています。

※上記の料金は、すべて税込です。
※1 2024年4月に料金変更予定

あわら温泉の奇祭・湯かけ祭りを開催

──あわら湯かけ祭りという珍しいお祭りも開催されるとか。

武田さん 全国的にも珍しい、お御輿にあわら温泉のお湯をかけるイベントです。

温泉が「湧く(わく)」と「ワクワク」にちなんで毎年8月8日、9日に行われているあわら温泉の奇祭です。

各旅館の源泉を用意して、お湯をかけあいます。他の温泉地区にも湯かけ祭りは開催されていますが、このあわら湯かけ祭りは日本最大級の規模です。

今年は約50tのお湯を用意、一般家庭の浴槽が約200ℓですから、その250倍のお湯をそろえることになります。

ビニールプールや大きなたらいを祭り会場に置き、地元の方など事前に祭りのことをご存じの方は、子供から大人までが、マイ湯桶や水鉄砲を手に取り、お湯を御輿にかけます。

湯かけまつりは、「お湯かけじゃあ!」との叫び声とともにかけます。

1日目はあわら湯のまち駅前のロータリーで、御輿にお湯をかけまくり、2日目はあわら市や福井県にゆかりのある民踊を輪になっておどる大盆踊り大会「民踊の夕べ」と、福井の風習である「饅頭(まんじゅう)まき」が行われます。

福井県の一地方では、結婚などお祝い事があるときには、「饅頭まき」という風習があります。祭りではやぐらの上から饅頭やお菓子を約1万個まきますが、この饅頭をめぐって争奪戦が始まりますので壮観です。

もともと饅頭は、お祝い物の引き出物ですので、お裾分けにという位置づけです。私の結婚式の時にも「饅頭まき」をしましたが、福井県では、結婚の際には屋外で家庭の屋根の上から饅頭をまき近所の人々がそれを拾う風習があります。

また結婚式にかかわらず、ハレの席では饅頭まきの風習は続いています。これが港町であれば、船の上から餅をまくという変化もあります。

※ハレ・・・ハレ(晴れ)は儀礼や祭、年中行事などの「非日常」を表わす言葉です。

福井県や石川県の一部では最近では活発ではありませんがこうした風習は行われてきました。祭りで「饅頭まき」を行うのも伝統を保存し、次世代に伝えていく側面もあります。

北陸新幹線芦原温泉駅開業は大きなチャンス

駅西口賑わい施設「アフレア」
(出典:あわら市リリース)

──最後に観光と周辺の地方創生については。

武田さん 2015年に北陸新幹線金沢駅が開業し、観光の持つ力や効果を体感しました。たくさんの観光客が金沢を訪れ、街は大きく潤いました。

100年に一度のビッグチャンスと言われる「北陸新幹線芦原温泉駅開業」のチャンスを活かし、あわら市のすみずみまでその効果を広げることが目下の課題です。

そのためには、街づくりをしっかりとやっていかなければなりませんし、ハードとソフトのバランスを整えることが大切です。

たとえば、ハード面では街の整備にとどまらず、各旅館では補助事業を活用し、高齢者の方にも心地よく宿泊できるよう、バリアフリーや改修事業を整えています。このほか他の観光地にスムーズに足を延ばせるよう交通の確保にもつとめているところです。

あわら市に1回だけではなく繰り返し来ていただくために、ソフト面では、地元の方には観光でいらした方に、おもてなしの心をもって接することも必要で、他地区との競合に負けないように頑張りたいです。

これまでメインのお客様は、関西・中京の方々です。北陸新幹線の延伸により、これに北関東の方々があわら市に足を延ばしていただけることを大いに期待しています。そこで関東・長野県でのPRを強化していきます。

一般社団法人 あわら市観光協会

〒910-4103 福井県あわら市二面33-1-5 えちぜん鉄道あわら湯のまち駅舎内
TEL:0776-78-6767 
FAX:0776-78-6760

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