1994年、荒川の環境を保全するための活動が荒川クリーンエイド・フォーラムの起源です。
自治体や企業などと協力し、「調べるごみ拾い」「大学対校!ゴミ拾い甲子園(豪田ヨシオ部by(株)クリエイティブPR)」など、ユニークな取り組みを実施しています。
今回は、同団体の活動やプラスチック問題の深刻さについて、オフィスマネージャの今村和志さんにお話を伺いました。
荒川クリーンエイド・フォーラム
今村 和志さん
荒川の環境を保全するため、1994年に発足
──まず、荒川クリーンエイドの成り立ち、沿革について教えてください。
今村さん 荒川クリーンエイドは、建設省の荒川下流工事事務所(当時)との協働プロジェクトとして1994年に誕生しました。
目的は、高度経済成長期に汚染された荒川の環境を改善することです。
クリーンエイドという名は、「クリーン」と「エイド」から成る造語です。現在私たちは、上流の秩父市から東京湾の葛西海浜公園の河川敷を中心に、ごみを拾いながら、豊かな自然を取り戻すための活動を展開しています。
自治体、企業、学校、市民団体などにも参加を募り、年間で150会場以上、1万人以上が活動しているんです。
──荒川は人工的に作られた川なんですよね。
今村さん 荒川は元々、東京湾に流れこんできた利根川の支川でした。
今の荒川は人工的に作られた川で、土地利用の効率化のために掘られた放水路なんです。2024年に通水100周年を迎えます。
川のごみは、生物の命をも脅かす
──川のごみは地球環境や社会にどんな影響を与えているんですか?
今村さん 川ごみの大半は川で発生していません。
大半は街から発生しているんです。街から出たごみが河川を伝って海洋ごみになり、生物が誤飲・誤食し、食物連鎖を通じて、人間の体内へ混入します。
そのため、環境問題解決はもちろん、人々の健康のためにも街や川のごみを減らすことが重要です。
荒川のごみは、PETボトルや食品トレイ、包装フィルムなどのプラスチック製品が大半を占めています。プラスチックは海に流れ込むと生物に絡まったり、生物が摂取したりするリスクがあります。
絡まったプラスチックによって、海洋生物は命を落としてしまうことも。実際に荒川に生息しているトビハゼ(環境省:準絶滅危惧、東京都:絶滅危惧IA類)も、レジ袋等のプラスチックが泥干潟に掘られた巣を覆ってしまうことで、泥干潟内に十分な酸素が行き渡らず、十分な酸素がない状態になってしまうケースもあるんです。
今村さん それ以外にも、プラスチックに含有されている有害化学物質(添加剤)が溶け出ることで、あらゆる生物に影響が及ぶ可能性があるのではないかと議論されています。
楽しみながら考える「調べるごみ拾い」
──荒川クリーンエイド・フォーラムの具体的な取り組みについて教えてください。
今村さん 国土交通省関東地方整備局荒川下流河川事務所や沿川の自治体は「荒川下流部ゴミ対策協議会」を設置しました。国と沿川自治体がこれほどまでに強固に連携している事例は珍しく、全国の一級河川の中でも誇れる仕組みです。
また、「調べるごみ拾い」という調査しながらのごみ拾いも特徴的と言えます。
5〜6人のグループに分かれ、ごみの数やその種類を記録します。ごみを減らすためにどうすべきかを考える、啓発と実践を兼ね備えたフィールドワークです。
チームで楽しみながらごみ拾いをするだけではなく、環境問題についてしっかり考えることができるため、さまざまな団体から好評を得ています。
そんな活動が評価され、日本財団と環境省の共同事業「海ごみゼロアワード2019」ではなんと最優秀賞を受賞。
そのほか、「大学対校!ゴミ拾い甲子園」といった地域を巻き込んだユニークなイベントも開催してきました。
──昨年は、ごみ拾いSNS「ピリカ」を運営する(株)ピリカさんが開発したマイクロプラ調査装置「アルバトロス」を使い、マイクロプラスチックの調査をされたとか。
今村さん はい。「アルバトロス」は、水中に漂っているマイクロプラスチックを集める装置です。
これまでマイクロプラスチックの調査は、プランクトンネットを船で引っ張ったり、川にネットを設置したりする方法が一般的でした。ですが、船が入れない場所や川の流れが緩やかな場所は調査が難しいという課題がありました。
そこでピリカさんは、動力により水流を発生させることで、水路のような狭い場所や流れの緩やかな場所でも調査できるマイクロプラ調査装置「アルバトロス」を開発されました。
──調査の結果は、いかがでしたか?
今村さん プラスチックと一言にいってもポリプロピレンやポリエチレンなど多様な種類があります。サンプルをとって分析することでその一端を知ることができました。また、皆さんの生活にも身近な「人工芝」の破片も見つかりました。
環境問題をもっと身近なものにしたい
──荒川クリーンエイド・フォーラムが大切にしていることを教えてください。
今村さん 現場での体験を大切にしています。私たちはごみ拾いを通し、皆さんに現場を知っていただくきっかけを提供したいんです。
また、世の中には多様な社会課題があります。中には非常に深刻な問題もあり、伝え方に注意をしなければならないこともあるでしょう。しかし、なるべく多くの皆さんに知ってもらうにはエンターテイメント性のある切り口もあるのではないかと思うのです。
荒川クリーンエイド・フォーラムでは、「荒川ブラックスーツ団」といってブラックスーツを身に纏いながらごみを拾うYouTubeチャンネルを開設しています。
また、公式キャラクターやゆるキャラを作るなど遊び心を意識した取り組みをしています。
──今後の展望について教えてください。
今村さん 今後はさらに多くの方に私たちの活動を知っていただき、現場活動に参加してもらいたいと考えています。そのために今は、YouTubeによる発信に力を入れています。
世の中ではもうYouTubeはオワコンといった話もありますが、いつも時代の波に少し乗り遅れるのが私たちです。笑
また、女性の関心をもっと増やすため、マイクロプラスチックを使ったアクセサリaid toをツールとした啓発にも注力しています。身近なことから川の清掃や環境問題に興味を持っていただけるよう、取り組んでいきたいですね。
──最後に、私たちが身近に行える取り組みがあれば教えてください。
今村さん 街ごみ清掃を始め、最寄りの川や海の清掃活動に積極的に参加いただくこと。台風が来そうな天気予報を見たら安全なうちに家のまわりのごみを拾って下さい。
自然界に出てしまうごみの削減につながります。些細なことでも行動することが大切です。使い捨て文化を少しでも変えられないか意識しながら生活してみてくださいね。
特定非営利活動法人
荒川クリーンエイド・フォーラム
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