新潟港からフェリーで2時間半。日本海最大級の離島である佐渡は、海、湖、そして美しい棚田など、水に囲まれた情緒ある風景が広がっています。また、佐渡金山をはじめ重要な文化遺産を有する観光地としても知られています。
非日常だけど、どこか懐かしさを覚える景色や食文化。そんな離島ならではの魅力に触れるため、毎年多くの方が佐渡を訪れます。
今回は、佐渡島の楽しみ方を掘り下げるため、佐渡観光交流機構の三條 侑威さんにインタビューを行いました。
佐渡観光交流機構
担当者 三條 侑威さん
私は佐渡の豊かな自然とのんびりと過ごせる空間が大好きです。海と山の大自然に囲まれた佐渡は何度来ても楽しめること間違いなし!
佐渡島ってどんなところ?
——佐渡島の特徴や魅力について教えていただけますか?
三條 侑威さん(以下、三條さん) 佐渡島は日本海最大の離島で、面積は東京23区のおよそ1.4倍あります。
北に金北山(きんぽくさん)をはじめとする大佐渡、南に小佐渡、そして中央部には国中(くになか)平野が広がっています。四季の変化に富んだ気候のもと、豊かな土壌を活かした農業や漁業が営まれている場所です。
また自然や食文化においては「日本の縮図」、つまり日本国内に点在する多くの魅力が島の中に詰まっていると思います。
独自の気候が育むフルーツ
——「日本の縮図」とは興味深いですね。佐渡の気候とその影響について詳しく教えてください。
三條さん 佐渡は暖流と寒流のぶつかり合う位置に存在し、本土に比べ夏は涼しく冬は暖かい。つまり、過ごしやすいんです。
また佐渡は暖流である対馬海流の影響を強く受けるため、雪国として知られる新潟県本土に比べると、積雪が少ない方です。
この特徴的な気候は農産物にも良い影響を与えます。あまり知られてはいませんが、実は佐渡は「フルーツ王国」としても魅力的な島です。
ブランド品種である「おけさ柿」や洋ナシの「ル・レクチェ」が代表的なフルーツです。あとは、希少性の高い黒いちじくの栽培も南部で行われています。
さらに気候の特徴を大きく受けているのが、りんごとみかんです。佐渡はりんごの南限、みかんの北限です。
厳しい基準をクリアしたブランド米
——佐渡で採れるお米は、どんな特長がありますか?
三條さん 佐渡特有の温暖な気候と清らかな水、ミネラルを含んだ潮風など大自然の恵まれた環境のもとで栽培されるお米は、新潟県で魚沼と並ぶトップブランドとして知られています。
また、国の天然記念物であるトキも関係しています。デリケートなトキが住みやすいよう、化学肥料や農薬の基準を半分以下に設定する「朱鷺と暮らす郷づくり」認証制度を設けました。
基準を設けることで、田んぼに生息する虫や小動物が活発になり、トキがそれらを食べて育つ。つまり「トキと暮らしながらお米を作っていく」という考えですね。
このような認証制度をクリアすることにより、佐渡米は安心安全な品種として知られています。
また、佐渡は日本初の世界農業遺産として登録されています。佐渡の中山間地・棚田地域の米作りが、今なお昔ながらの農法によって受け継がれていることが評価されました。
山の斜面に作られた棚田には、冷たく澄んだ湧き水が供給されるため、コシがあり、味が締まったものになります。生活用水が流れてくることもないので、この点も安全性の高いお米だといえるポイントです。
佐渡で採れたお米は、もちろん島内のホテルや飲食店でも食べることができます。訪れた方にはぜひ味わっていただきたいですね。
絶景の「二ツ亀海水浴場」
——島の北端に位置する「二ツ亀」とその周辺の海水浴場について教えてください。
三條さん その名の通り、二匹の亀がうずくまっているように見える島で、潮の満ち引きで景色が変わるのが特徴です。
二ツ亀海水浴場は、抜群の水の透明度と美しい景観を兼ね揃えており、「日本の快水浴場100選」にも選ばれました。また、『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』でも二つ星として掲載されています。
キャンプ場やホテルも隣接しているので、旅の拠点として使われる方も多いですね。
ただ、ここ以外でも佐渡の海水浴場は本当に綺麗です。本土から私の友人を招いた時も、あまりの美しさに驚いていました。海際に工場がないことも、水質が綺麗に保たれている要因でしょう。
殺菌効果と低刺激が人気の温泉
——佐渡の温泉の泉質や効能、また楽しみ方について教えてください。
三條さん 両津地区の温泉には、昔、トキが傷ついた羽を温泉の湯で癒したという伝説があります。
海が近いため、塩化物泉化の温泉が多く、切り傷の痛みを和らげる効能や、殺菌効果があります。他にも湯冷めしにくいという特徴もあります。
肌への刺激も少ないため、小さなお子様(乳幼児)も安心して入浴できます。
また、露天風呂がある施設では、海や山、湖などの景観を楽しみながらお入りいただけます。
——特に絶景を楽しめる湯どころや、おすすめのシーズンについて教えていただけますか?
三條さん 標高が最大1,172mの大佐渡山脈は、積雪が少ない佐渡でも冬場に雪が積もります。そのため雪化粧を施された山並みを眺めながらの露天風呂は非常に人気です。
また、加茂湖のほとりも個人的におすすめです。特に冬の加茂湖のしんとした景色を見ながら温泉に浸かると、なんともいえない情緒を感じることができます。
初めての方におすすめのスポット
——初めて佐渡島を訪れる方に行ってほしいスポットはどちらでしょう?
三條さん やはり佐渡の代表地ともいえる佐渡金山は、一度訪れていただきたいです。
かつて佐渡は、順徳上皇や世阿弥などが流刑された島でした。
しかし金山の存在が明らかになった後は、幕府直轄地として徳川の財政を支える要地になりました。その影響でさまざまな文化やまち並みが形成されてきました。
例えば、金を運ぶために作られたメインストリートである京町通りは、金鉱石をすりつぶすために使っていた石臼を石垣として利用しています。そういった景観のなかに佐渡の歴史が息づいているのです。
特に桜のシーズンは、金山のある相川(あいかわ)という地域が幻想的な景色に包まれます。
現在、佐渡金山は世界遺産の分野でも評価を受け、早くて2024年の夏頃には世界遺産に登録される予定です。
観光交流機構の活動と今後の展望
——佐渡観光交流機構では、どんな活動をされていますか?
三條さん 歴史や風土から生まれた文化を生かしつつ、佐渡全体を観光地として経営する視点をもって島のプラットフォームになる活動をしております。
そのなかでも、私は主に広報や情報発信を通して観光の誘致に努めています。佐渡の情報をまとめた「さど観光ナビ」の運営にも力を入れています。
——今後の展望を教えてください。
三條さん 佐渡には多くの観光コンテンツが存在します。魅力的なものばかりで、子どもからご高齢の方まで幅広い世代で楽しむことできます。
たくさんある観光資源の中で、佐渡に観光に来られるお客様のニーズに合ったコンテンツをご案内し、佐渡にまた来たい、佐渡が好きと感じていただけるような観光地を目指していきたいと思います。
まとめ
クリアな水と過ごしやすい気候が生んだ、食。離島だからこそ出会える絶景。金山の存在によって独自の発展を遂げた文化。この魅力的な3つのポイントについてお話を伺いました。
しかし佐渡には、他にもまだまだ伝えきれていない訪れるべきスポットやおいしい特産物はたくさんあります
佐渡島を実際に訪れることで、三條さんのいう「日本の縮図」が、よりリアルに実感できることでしょう。
佐渡観光交流機構
〒952-0011 新潟県佐渡市両津夷384-11 (あいぽーと佐渡内)
TEL:0259-23-5231
FAX:0259-23-5232
この記事の執筆者
Seiji Horiguchi
信州大学人文学部卒。新聞記者を志す学生時代を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として、関西を中心にアーティストインタビュー・イベントレポート・情報誌連載などの執筆を行う。 2020年には、身の回りの人やモノに耳を傾けるメディア「草ノ根」を立ち上げ、ZINEの制作も行う。